2022-06-20
162.そもそもオンライン賭博とは?
インターネットというツールを介して賭博行為を提供することがオンライン賭博(あるいはネット賭博)になるのであろうが、定まった定義があるわけではない。
欧米ではオンライン等という言葉は用いず、iGaming (internet gaming)や iLottery (internet lottery)という呼称が定着しつつある。
もっとも賭博を顧客に提供する行為のどの部分にどうインターネットを利用しているのか次第では、状況や考えるべきリスクは全く異なるのだが、なんでもかんでもネットを使っていれさえすればオンライン賭博という形でくくってしまう専門家もいる。
こうなると我が国でも一部は合法でやっているではないかとかなり混乱した議論が横行してしまう。
公営競技や富くじはパリミュチュエル賭博と呼ばれる賭け金の一定率を主催者が控除し、費用や収益にあて、残額を勝者に分配する賭博の一手法でもあり、場内外や特定の販売所でオッズ等の情報を提供し、馬券、車券、舟券、証票券等を販売する。
要は、胴元は競技を提供し、顧客に予想させ、顧客同志が賭けていることになる(くじに至っては予想すらない)。
競技や抽選会を主催し、この投票券を顧客に販売し、代金を受け取り、払い戻しをする行為は賭博行為そのものではなく、賭博行為に付随する事務とみなされ、従前から第三者への業務委託ができる対象でもあった。
この部分に関してはデジタル化、オンライン化への親和性が高く、関連する制度を改正し、スマホやコンピューターを通じ、顧客が直接投票券を購入できる仕組みが創設され、定着しつつある。
決済はクレジットカード、払い戻しは銀行口座になり、予めネットを使い、会員登録をして自分のアカウントを設けるわけだ。
一端アカウントができると、何処でも、何時でもスマホやコンピューターからこれら投票券を購入できる。
わざわざ場内外の投票券売り場や駅前の宝くじ販売所やコンビニ等に出向かずとも、スマホさえあれば自宅からでも購入可能になる。
こうなると賭け事に参加しているという意識は限りなく希薄になってしまうといっても良い。
施行者からすれば、ネットを通じ、全国民を対象に24時間営業可能なセールスアウトレットをスマホ設けたに等しく、費用縮減、収益増、新たな顧客の取り込みに極めて高い経済効果を発揮できる。
やってみると解るが、顧客の会員登録に係る本人確認は全く甘く、実質的に無きに等しい。
クレジットカードを保持し、払い戻しの為の個人の銀行口座がある限り、成人に違いなく、顧客は誰であっても構わないということなのだろう。
但し、これらはあくまでも公営賭博業務の事務行為のデジタル化、合理化、簡素化、効率化にすぎず、賭博行為自体をオンラインで提供しているわけではない。
よって公営賭博もオンライン賭博と断言するのは如何なものかと思う。
公営競技はリアルの競技だし、富くじの抽選会もリアルだ。
周辺行為のデジタル化と本質行為のデジタル化とは全く意味が異なる。
周辺行為のデジタル化は費用もかけず、リスクを限定する形で顧客にとっての利便性を飛躍的に高めることができる。
一方、狭義の意味での正確なオンライン賭博とは、賭博行為の本質行為のデジタル化とでもいうべきものになる。
賭博行為を提供するソフトウエアを、サイバー空間でウエッブサイトを通じ提供し、顧客がこれに双方向的に参加したり(Gaming)、胴元がAIやデーターベース、アルゴリズムを駆使してオッズをネットで提供し、顧客の判断で賭けたりする(Betting)行為のことだろう。
ソフトウエアとしてのゲームの勝ち負けはあくまでもランダムにシステム的に設定されていることが基本だ。
胴元がオッズを提供する賭け事の場合でも、オッズメーキングには一部AIを導入し、リスクを管理しながらオッズを提供する仕組みが定着している。
オンライン賭博の遊び方としては、特定のオンラインゲーム提供WEBサイトやスポーツブックのサイトに会員登録し、このサイトから提供される多種多様のソフトプログラムで構成されるゲームやスポーツの賭け事に顧客が参加し、負ければ(外れれば)賭け金は没収、勝てば(当たれば)払い戻しを受けるという仕組みになる。
支払いはクレジットカードや電子マネー、仮想通貨で一定額をまず支払い、これをアカウントに預託し、この中から資金を都度引き落とし、勝った場合には後刻纏めて払い戻しを受けられるというのはいずれも共通だ。
これを実施するために特定地点にサーバーを設置し、プラットフォームをサイバー世界に設け、ここから様々なゲームソフトプログラムやスポーツの賭け事を顧客に提供すると共に、このサーバーで顧客データーや、入出金管理、顧客の賭け金行動のモニターや記録管理等も行うことになる。
この様に一般的に賭け事のコアの部分がデジタル化されている場合、顧客はその仕組みを知ることができない(情報の非対称性)。
こうなるとブラックボックス化し、ソフトをちょっと操作すれば、いかさま、インチキ、払い戻し金未払い等が起こりかねない。
何でもできてしまうわけだ。
外国からサイバー世界に提供されている場合には、これらリスクはかなり高くなり、顧客が大勝ちした場合には、サイトを締めて、新たに別サイトを立ち上げる等という悪徳業者も過去存在したことがある。
賭博行為のコアの部分がデジタル化される場合には、顧客にとっての安全性や健全性、ゲームの公平性を担保するために、このための固有の規制や制度的枠組みが必要になってくる。
少なくとも公営賭博法制度の枠組みの中でオンライン賭博を行うのは極めて難しいということだろう。
尚、インターネットカフェと呼ばれる場所で、顧客にコンピューターを使わせ、特定のサイトに誘導し、外国に存在するデイーラーのリアル画像をネット経由顧客にコンピューター画面に提供し、金を賭けてゲームを遊ばせる仕組みが存在する。
勿論こんな行為は違法、犯罪で、ゲームはリアルだがその他全てをデジタル化し、オンラインで提供し、臨場感を際立たせているだけで、この場合にはオンライン・コンピューターはあくまでもツールにすぎず、単純賭博を提供しているにすぎない。
(美原 融)