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2024-07-08

268.違法オンライン賭博 ネット時代の対応策

違法であるオンラインのカジノやスポーツブックに若い世代がのめりこむ事象が多くなり、若者が賭博依存症になる症例が多発しているという。
正確な統計数値があるわけではないので実態は解り難いが、マスコミも識者も大きな問題として危機感を煽っている。
この兆候は確かに存在するのだろうが、では何をどうすべきなのか、何ができるのかという前向きの見解はこれらマスコミや識者からは聞こえてこない。
殆どの若者がスマフォやタブレットを駆使する時代で、四六時中暇があれば携帯画面を見て、携帯を様々な道具として利用しているのが現代社会だ。
インターネットを通じサイバー空間から違法な賭博サービスや賭博に近いゲーム等は国境を越えて国民に対し常時提供されている。
相手は外国在住の外国企業であって、これを我が国の既存の制度的枠組みでコントロールすることはできない。
違法と叫んだ所で、相手を委縮させることもできない。
一方違法賭博行為に参加する国民もスマフォやコンピューターからアクセスする場合、把握もできないし、個人の意思でなされる場合、これもコントロールすることはできない。

サイバー空間で違法賭博を提供する主体やその顧客を規制できない以上、サイバー空間における受け手である国民を保護し、国民を守る手段を国内法で措置するしか方法はない。
国民が違法な賭博サイトにアクセスできないように回りを固めてしまうわけだ。
これには下記手法等があり、通常これらを組み合わせ、国民を守る体制をとる。
かかる制度的措置が欧州諸国や豪州、一部のアジア諸国等で実践され始めてきたことが最近の動向になる。

  1. アクセス規制:国民が違法賭博サイトにアクセスできないようにする
    サイトにアクセスできない環境を作りだすことができれば、問題は消滅する。
    そこでISP(インターネットサービスプロバイダー)に対し、違法賭博サイトを見つけ次第強制的排除・サイト閉鎖義務を課す、あるいは排除協力義務を課すことになる。
    ISPではなく、国ないしは民間の第三者機関が違法サイトを監視し、ISPに排除勧告する場合もあれば、かかる機関が規制当局ないしは裁判所に対し違法行為を申し立て、一定の審査を経た上で特定サイトの閉鎖命令を出すこともある。
    同様にSocial Media運営者やプラットフォーマー(X, Meta等)に対し、Web上のこれら海外違法サイトに関わる広告、マーケッテイング、誘導サイト、サーチエンジン等による検索等も全て禁止・排除の対象とし、上記と同様の措置を取ること等も行われている。
    SNS等を利用した賭博誘導協力者(アフィリエート)等も勿論禁止、排除の対象となる。
    尚、制度ではなく、代替的に業界等が自主規制機関を設け、監視・摘発・排除勧告等を効率的に措置できるように図るアプローチもあるのだが、法的義務が無い限り、その効果は限定的になる模様だ。
  2. 決済手段規制:国民が賭博関連の決済手法にアクセスできないようにする
    違法サイトにアクセスできても賭ける資金の決済ができなければオンライン違法賭博は現実にはできない。
    そこで金融機関、クレジットカード会社、決済代行業者(電子財布や仮想通貨取引所等の中間主体を含む)等の全ての関連決済機関に対し、違法賭博関連主体への送金行為や送金受領行為を拒否する義務ないしは協力要請等により、支払い行為が行われる前にこれを抑止する規制になる。
    国民に対する注意喚起と共に、決済機関による合理的な監視、問題を発見した場合の規制当局への通報、支払い差し止め義務を取り決めるが、国によっては違法サイトにおける顧客勘定を特定し、残額の没収(1ケ月間は抗弁可能)という手段を取る場合もある。

これら規制措置は明らかにネット社会における自由な取引の阻害要因になってしまう。
単純な違法賭博の規制だけではなく、ネットビジネスへの介入行為でもあり、かかるアプローチに反対する識者も諸外国には存在する。
但し、規制を合法化するにたる潜在的危害が既に大きくなっていることが、規制強化に繋がっている。
では誰がどうこの規制の執行を担っているのだろうか。
諸外国では専門の国の規制機関やこのために設立された機関がその任を果たすというケースが多い。
では我が国ではどうなるのであろうか。
我が国では賭博行為を専任とする国の規制機関はなく、賭博種毎に別々の主務省庁が規制するという制度が前提となっている。
ネット関連規制となると総務省だが法の執行迄許認可官庁が法の執行迄できるとも思えない。
カジノ管理委員会はカジノ業のみの権限しかない。
では警察当局にこの権限を委ねるのかに関しては、地方警察が主体の警察組織では一元的な対応は難しい。
ややこしいのは、既存の許諾賭博種で既にネットによる販売やマーケッテイングが認められているものがあることだ。
一部の賭博種のみを差別的に規制することが得策といえるか否か、これら既存の事業者より反発等がありうるか否かなどは懸念材料になる。
個別のセグメント(賭博種)毎に異なる制度、規制、主務官庁で個別に、かつ自主的に規制するというだけでは現状と変わらず、効果は薄くなる。
全ての賭博行為(オンライン、陸上施設)に共通に適用される制度的枠組みがなければ効果的な対応策は取りにくいのが実態でもあろう。

尚、自国内においてオンライン賭博やオンラインスポーツブックを制度的に認めている国の場合には、サイバー世界における違法事業者を積極的に排除するという措置を取りやすい。
主要欧州各国やオーストラリア等はかかる状況にあり、様々なオンライン違法賭博を締め出す制度的枠組みを創出し、法の執行を実践している。
オンライン賭博やオンラインスポーツブックを認めていない我が国のような国で積極的なオンライン賭博規制の制度を設けた国は未だ少ない。
問題として認知されにくいからだ。
但し、現実的にオンライン賭博が社会に存在し、違法行為が否定的な危害をもたらすまで肥大化している場合には、やはりオンライン賭博規制としての何らかの立法措置を図るべきとする声が強くなるのかもしれない。

(美原 融)

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