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2020-09-15

25.米国カジノにおける対コロナ三密対策

米国におけるカジノ事業者の業界組織であるAGA(全米ゲーミング協会)は全米の商業的カジノ施設・部族カジノ施設のコロナ禍の状況における施設再開の状況をリアルタイムでWebで公表している、2020年6月以降続々と施設は再開されているが、未だ慎重に、段階的に、少しずつという対応は変わってはいないし、完璧な再オープンとは言い難い状況が続いている。
東部諸州はピークを過ぎたとはいえ、他の南部地域や西部諸州では、いまだに危険な状態が続いている。
一部施設再オープンに伴い、ネバダ州等では規制当局が対策ガイドラインを設け、事業再開にあたっての詳細なとるべき対応措置を規定している。
勿論事業者サイドもかかるガイドラインを踏まえて独自の顧客と職員を守る様々な防御策を工夫し、実践し始めたようである。
例えば、施設入場に際し、マスク着用義務を顧客に要請する等をしている施設もある。
一方、面白いことに、カジノ産業を特別視せず、他の集客施設と同様に扱い、規制当局が何等かのガイドラインや対応策を指示していない州の方が多い。
連邦政府や州政府の保健衛生当局の指示に基づき、各施設が個別に対応策を考えるべきということなのであろう。
よって、対応は州ごとに、かつ施設ごとに異なるのが実態になるといってもよい。

既に様々な情報が入っている。
成程と感心する施策もあれば、何これ?という施策迄様々だ。
単純なのは規制当局が施設内に入場できる顧客総数を限定することだ。
通常の1/4から1/3程度に顧客数を限定することになるが、これでは施設がペイするとも思えない。
機材や器具の配置に着目し、三密を避ける工夫も施設毎に独自に試みられている。
スロットマシーンは通常並列的に、かつ密集して設置されている。
狭い限られたスペースに如何に賭け金単価の異なる多様な機械を効率的に設置できるかが、施設としての収益を高めることに繋がる側面があるからだ。
この場合、社会的距離を確保する方法とは、単純に一台おきに機械を停止する以外なさそうである。
これに加え、取り外し可能なプロクシグラスを機械の間に設ける等する。
リモートネスをより確実にするということだが、果たして、これで顧客が嫌がらないかどうか、本当に顧客が来るのかに関しては懸念が残る。
テーブルも3人以上はダメ、かつ顧客の左右にはやはり取り外し可能なプロクシグラスを設ける、テーブルがあまりにも密接に設置してある場合には、やはり一部テーブルを停止したり、テーブル同志の距離をとったりすること等が実践されているようである。
これらに加え、入場に際し、顧客にマスクを無料で提供したり、マスクをつけない顧客は入場を遠慮願う等したりしている。
入場に際し、非接触式の検温検査の実施とか、洗浄液をあらゆる場所に設置するとか、定期的に場内のあらゆる人がさわりそうな機材等の頻繁な洗浄等列挙したらきりがなさそうである。
類似的な行為は我が国のデパートやレストラン等でも行われており、コロナがまだ社会に存在し、終息していない状況においては、如何なる集客施設においても同じような事象が生じていると判断すべきなのだ。
感染症に対する防御策は、誰が考えても同じような対応になる。
即ち、個人としての防御を図ること、対人関係で社会的距離を保持すること、できる限り接触を避けることの三点である。

問題は、かかる短期的対処策は、顧客にとっての利便性や快適性を著しく損ねることにある。
本来カジノのリアルゲームとは、顧客同志の対人接触・デイーラーとの対話・駆け引き・戦略・多様な遊び方等が面白さの要素でもあり、これらが減殺されるとすると、ゲーム自体が面白くなくなってしまうからである。
例えばサイコロゲームのクラップスは米国人にとり最も人気の高いテーブルゲームになるが、顧客とデイーラーが大勢密集して、騒ぎながら楽しむゲームでもあり、どう考えても三密は避けられない。
よってこのゲームの再開は当面認めないとする規制当局が多い。
これでは施設自体の魅力も欠けてしまう。

入場やプレーに関し、どこまで規制当局が安全確保のために追加的な規制措置を設けるのか、あるいは施設側が独自にどこまで顧客の行動を強制できるのかということも今後問題になりそうだ。
マスク等は嫌いだ、絶対しないという御仁が大統領である国だ。
密集した選挙演説会でマスクをつけたものは殆どいないし、バカンスの到来と共に再開されたビーチや集客施設はもとの木阿弥、マスクをつけず、密集状態に戻ってしまっている。
カジノやエンターテイメント施設はそこにいって遊び、楽しみ、騒ぐことが本来の目的であって、何も耐え忍んで窮屈な状況になるならば、行く価値もないということになりかねない。
あるいはあらゆる制約等無視して、遊ぶという顧客が大勢でてきそうな雰囲気もある。
かかる国民性が米国人にはある。
勿論、冷静に考えれば、現状ではかなりのリスクを孕む行為であることは間違いない。
新たな感染クラスターがもしかかる現場から生じれば、あっという間に施設閉鎖に至るかもしれない。
あるいは逆に、時間の経過と共に、事態が終息に向かうとか、有効なワクチンが拡散する事態になれば、段階的にガイドラインも防御も守られなくなるし、事業者の規律も緩くなることが想定される。
集客施設が安全、安心と顧客が判断した場合、かつまた、顧客が自由に移動でき、旅行ができると判断した場合、顧客は元に戻ってくる。

何を何処まで非常時に際し、規制の対象にすべきなのか、またかかる規制は適切か、はたまた、かかる考えに実効性はあるのか等懸念は尽きない。

(美原 融)

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