2024-03-11
251.スポーツブッキング 広告規制②規制の手法
広告に関する規制の手法には様々な考え方がある。
事業者や広告媒体による自主的な規範に基づく自粛となるのか、あるいは規制機関等が定める規則等による制度的な規制となるかかという分類がある。
またこれが如何なる内容となるかは国、地域によっても事情が異なってくる。
この手法には、例えば下記等が存在する。
①→欺瞞に近い内容や正確さに欠ける広告、適切さの無い広告表現等を禁止・規制する:
消費者に誤解を与えかねない表現や内容(例えば無料、リスクのない賭け、確実に儲かる等)を広告に用いたりすることを禁止したり、規制したりする考えになる。
消費者を保護する観点から公正さを欠くと判断されるからである。
業界自主規範にも、制度の中にもかかる規制を取り入れている事例が多い。
②→過剰な広告や過熱した賭博行為の対象になりやすい賭け手法自体を禁止・規制する:
例えば試合開催中(In-Play)の賭けやピンポイントの個別の選手のPerformanceや試合の次の展開を賭けの対象とするProps Bet等は過剰な広告の対象になりやすい性向がある。
試合が過熱してきている段階で今すぐ、この賭けをスマフォで等という広告を入れることは、確実に射幸心を煽ることに繋がってしまう。
過剰な賭博行為を醸成しかねないタイミングでの広告手法や賭けの手法自体を禁止するか、規制する考えになる。
一部の米国州ではかかる規制を設けている。
③→事業者が実施する広告内容を規制機関が事前にレビューし、認可する:
概念的な規制は設けているが、スポーツブック事業者ないしはその代理店が広告を打つ場合、事前にその内容を規制機関に報告する義務を課し、規制機関がその適切さを審査し、認可する考えである。
好ましくないと規制機関が判断する場合、規制機関は広告の掲載・実施に対し、拒否権を持つことになる。
但し、これでは事業者の数が多く、広告の量もかなりの数になると実務的に機能しなくなる可能性が高い。
米国アリゾナ州、ニューヨーク州では広告はライブで提供する前に規制機関がレビューする仕組みを採用している。
一方ニュージャージー州でも2013年以降当初は規制機関が全ての広告を事前レビューしていたが、あまりにも量が多すぎたため、2年後規制機関はこれを放棄したという経緯もある。
④→特定の媒体手法による広告を特定的に規制する:
広告媒体の手法によっても影響力の在り方が異なる。
広告媒体には、TV,ラジオ、インターネットやSNSのライブストリーミング、新聞雑誌等の出版物、屋外広告等が存在するが、生の試合を放映する際の広告媒体の手法の方が影響度は遥かに大きくなるため、対象をTV、ラジオ、インターネットに限定して、放映の内容や手法に関して、より強く規制を設けることが多い。
例えばSNS/ライブストリーミング等はスマフォでも個人的に閲覧でき、未成年への露出リスクが高いとしてこの媒体手法での広告放映を禁止する場合等がある。
⑤→媒体による広告の放映時間を規制する:
試合中のTV,インターネット, SNS等の媒体を利用した広告を禁止する考え方になる。
例えばWhistle to Whistle規制と呼称するが、試合開始時から試合終了迄、あるいは試合開始5分前から試合終了5分後迄の間の広告放映を一切禁止する措置になる。
この他、未成年がTVやラジオにアクセスしやすい時間帯やスポーツ中継等が実施される時間帯を広告放映禁止時間とする考え(時間帯規制)もあるが同様の考え方に基づく。
影響度が大きいと想定される時間帯の広告を遮断するわけである。
⑥→注目を浴びたり、影響度が強かったりする広告等を規制する:
試合が行われるサッカースタジアムのピッチサイドボード等はTVやLive Streamingでは常に目にする広告でもあり、スポーツブック事業者によるロゴ広告等を禁止する考え等になる。
同様にスポーツブック事業者によるサッカーチームのスポンサーシップに基づき、選手のユニフォームの正面に大きな事業者のロゴを入れることも、自粛の対象や規制の対象になりつつある。
目につきやすく、印象的で、露出の度合いが長い場合、悪影響が大きいという理由からだ。
同様に著名アスリートや若者に人気のあるアーテイスト、あるいはその他のインフルエンサーを起用した広告も、未成年が影響を受けやすいことより広告規制の対象となりつつある。
若年層や弱者を特定の対象としかねない賭博関連広告も同様の理由から禁止の対象になることが通例となる。
2023年10月以降、ニューヨーク州では、教育機関施設の内部・近隣地区においてスポーツブックに関する屋外広告物掲載を禁止する措置を取った。
これも学生に対し、好ましくない影響を与えるべきではないとする規制の考え方になる。
賭博への誘引の広告宣伝内容を控えたり、広告による過度の露出度を低くしたりすることが、果たして未成年や社会的弱者への悪影響を防止することに効果的となるか否かの明確な証拠は無い。
但し、社会的弱者や未成年に悪影響を与えかねない広告は責任ある広告(Responsible Advertising)という観点から自粛すべき、あるいは規制の対象にすべきとする考え方が支配的になりつつあるのが欧米諸国の現実となる。
(美原 融)