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2024-04-16

257.米ドジャース・大谷選手・水原元通訳違法スポーツブック賭博疑惑(4)当面の結末

4月11日のIRS-CI/HSIも参加した連邦地区裁判所の共同記者会見のみが大きく報道されたのだが、同時に公表された供述宣誓書(Affidavit)の内容まで精査していない報道が多いようだ。
これは地区裁判所への逮捕状請求・刑事告訴の補足資料になり、何と37ページもある。
よくこの内容を読んでみると中々興味深い。
報道されていない点に焦点をあて、若干掘り下げてみよう。

水原元通訳はやはり3月21日に米国に帰国したのだが、当然この情報は当局に事前に察知され、LAX空港でHIS係官により別室で尋問、その場で携帯電話の押収、その内容精査に同意させられ、以後捜査の対象として任意で数回以上取り調べや家宅捜査等を受けている。
携帯電話を押収したのはブックメーカーとのやり取りや賭け行為、大谷銀行口座へのアクセスや振り込み指示等も携帯が主たる手段であったことが解っていたからだ。
一方大谷選手も3月25日には捜査当局に任意で携帯電話を供出、4月2日、3日の両日に亘り裁判所認定通訳の同席のもとで捜査当局との面談調査に協力している。
大谷選手による携帯電話の任意提出は過去数年間に亙る大谷選手・水原元通訳間の日本語のメール・メッセージ記録を全てチェックするためでもあった。
尚、捜査当局は昨年10月のブックメーカーの家宅捜査に基づき、関連する協力者から何と水原元通訳の全ての賭け行為の記録をExcel Sheetで押収している。
かつ大谷選手の口座がある銀行から銀行口座へのアクセスログデータ、口座入出金履歴、本人確認のための通話音声記録(英語がしゃべれないはずなのに英語ペラペラの偽装大谷選手?の音声)も押収された。
尚、水原元通訳が違法にアクセスし、金を動かしたのは大谷選手の球団からの給与個人口座で、大谷選手はこれ以外に広告雑収入等を受け入れるための銀行口座を保持し、これはスポーツエージェント経由、専門簿記記帳事務所、財務マネージャー、税理・会計事務所を起用していたが、給与個人口座は個人のものとして一切情報を開示せず、これを水原元通訳がマネージャーとして一人で管理していたものという。
これら関係者よりも聴取がなされ、管理状況の詳細は全てチェックされた模様だ。
押さえるべき所は全て押さえ、かつ物的証拠もしっかりそろっている。
これではグーのネもでないといったところだ。

興味深いのはこの違法ブックメーカーは如何なる賭博をどう提供していたかだ。
顧客に対し、アクセスID番号とパスワード、URLを与え、裏の組織が運営する2つのWebサイトにアクセスさせ、ここから賭けができるという仕組みを採用した。
勿論これはスマフォからアクセスでき、全てスマフォから賭けることになる。
くだんのブックメーカーはエージェントに過ぎないのだが、別のパートナーと共に、リスクを取り、水原元通訳に与信を付与する行為をしていたことが見て取れる。
即ち彼の仕事は優良顧客の捕捉、与信の付与、勝ち負け等の金銭の処理、貸付金の回収のみを行うわけだ。
この意味では廃れたマカオのジャンケットに近い機能ともいえる。
元々連邦当局(IRS-CI/FBI/HIS)は南カルフォルニアを舞台にラスベガスともリンクした犯罪組織による違法賭博を端緒とする金融犯罪・マネーロンダリング事案をフォローしている段階で、このエージェントが捕捉され、家宅捜査に至り、そこから得た情報から水原元通訳、大谷選手の名前が表れ、金融取引に関し、集中的な捜査を行った模様だ。
連邦政府の追求の目的は金融犯罪やマネーロンダリングであって、違法賭博ではない。
即ち本来連邦政府捜査の対象ではなかったのだが、ひょんなところから情報を入手し、大リーグトッププレーヤ-の名前がでてきたことにより、慎重に、かつかなり急いで事案の捜査を行ったのだろう。

面白いのは全ての賭け金記録(Betting Record)データを入手し、詳細に分析したことだ。
記録によると確かに野球賭博はやっていない。
一回の賭け金は$10から$16万㌦、毎日平均すると25回賭けており、時間があれば終日アクセスしていたということになる。
2年間の間に19000回、賭けによる勝ち金は142万㌦、負けは183万㌦、ネットでの損は$40,078,436(もっともこれは50万㌦程度のFree Playを含むと想定され、正確ではない)、賭け金は全て与信で処理、勝ち金は何と自分の銀行口座に振り込ませ、借金は大谷選手の口座から着服し、返済したということになる。
尚大谷選手の口座からの送金は単純ではなかったという証拠が残っている。
当初電子マネーで払おうとしたが高額では無理で、銀行も大口オンライン送金を拒否し、瞬間口座をブロックしたが、銀行も常に同じ担当者が対応しているわけではなく、事務手続きの隙を見つけ、メールや携帯等の連絡先や本人確認の情報等をかってに変更・偽造し、巨額のオンライン送金により、大谷選手の個人資金を着服したことは明らかに言い逃れのできない金融犯罪になる。

問題の底にあるのは巨額の預金額が目の前にあり、ここからの資金の支出に関し一定の裁量を与えられ、大谷選手個人の支出や自分自身の支出もここからある程度自由に使える立場にあったことだ。
境目が解らなくなり,あたかも自分の金の様に使ってしまった、あるいはちょっとここから金を借りて、後で返せばわからないと思ったのかもしれない。
この他大谷口座から電子マネー勘定に振り込み、巨額の野球カードの購入に充当し、水原元通訳の自宅から1000枚以上のカードがでてきたことも確認されている。
資金の使途は賭博だけでは無いのだ。
そもそも水原元通訳は仮想通貨で大損をして、その後スポーツブックにはまったという事実すら宣誓供述書に記載されているくらいだ。
単純に原因は「賭博依存症」、これは「病気」にすぎず、悪いのは「賭博」、水原元通訳は悪くはないという見方は完全に間違っている。
2年の間、勝ち負けがバランスし、何とか処理できた期間もあったのだろう。
問題が露呈したのは巨額の負債が貯まってしまい、ブックメーカーからその返済を迫られ、大谷選手の口座資金に手をつけてしまったことと共に、これを埋め合わせるために更に巨額の賭け行為へと繋がってしまい、雪だるま式に借金が増えてしまったということなのだ。

(美原 融)

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