National Council on Gaming Legislation
コラム
  • HOME »
  • »
  • 26.デジタル化・リモート化とMICE/エンターテイメント

2020-09-15

26.デジタル化・リモート化とMICE/エンターテイメント

コロナ禍に伴う移動・交流の自粛、リモートワーク等は、これまで当たり前のように行ってきた働き方や生活の在り方を大きく変え得る一石を投じたことは間違いない。
当面移動・交流に関する国内的な制約は解除されたとはいえ、ビジネスや観光等海外への移動・交流は元に戻っているわけではない。
オーストラリアのように海外への渡航禁止・外国人観光客来訪禁止は2021年まで継続する可能性があると公言(6月18日観光大臣発言)する国もでてきている。
国民国家が国境を閉鎖し、ヒトの移動と交流を制限するという鎖国的政策をとることは異常だが、Pandemicsに対する施策としては、国が国民を守るため、移動、交流、接触を極力少なくするという施策が最も効果的であったという事情もある。
この結果、国内外で自宅にこもりネット環境で仕事をしたり、会議をしたりする、Webでのセミナーに参加する等が日常的になり、ICT技術の発展は、仕事自体と仕事の在り方、働き方並びに人々の生活の在り方を更に変えることになるとする意見も多い。

確かに、働き方に多様な選択肢が認められつつあると共に、ビジネスのやり方もネットを活用した様々な手法等も生まれつつあることも事実だ。
国際会議、奨励旅行、展示会やトレードショー、各種イベント等のMICE関連ビジネスも、ネットによる会議、ネットによる商品展示や商談会で代替できるとしてかかかるソフトや新しいビジネスの在り方を提案している企業もある。
但し、ネットは全てのリアルワールドの会議や展示会等を単純には代替できそうもない。
単純な事務連絡や会議等は問題ないのだが、双方向の中身のある対話となるとコミュニケーションの取り方はネットでは難しくなる。
相手の微妙な表情の変化を読み取れない。
間の取り方や、交渉もできにくいし、複数が参加するとどうしても参加意識が希薄になってしまう。
参入と退出が任意に、簡単にできるため、対話の緊張感がどうしてもかけてしまうのだ。
バーチャルな世界は、限りなく形式的に類似的な枠組みを提供できるのだが、リアルワールドがもたらす濃密な人と人との接触がもたらす関係性、緊張感、相手の表情の変化や間合いの取り方を見ながら議論や対話のテーマの切り替え等を実現することは難しい。
国際会議や展示会・トレードショー等も情報を把握したり、商談相手を探し、商談を進めたりするだけならば、他の手段でもリモートでも可能だ。
但し、わざわざ開催地へ行くのは、知っている人や知らない人、ビジネスのヒントになりそうな人の知己を得て何等かの人脈を作ったり、これにより効果的なネットワーキングを構築したりすることができやすいという期待感があるからである。
外国人による国際会議や学術会議の参加には、このネットワーキングに価値を置く参加者が多い。
異なる都市に行き、歴史・文化を体験すること、観光、食事等を楽しむこと等もこれら国際会議等に参加する大きなインセンテイブでもあるのだ。
だからこそ夫婦で参加する人も多い。
また、リモートだけでは、バーチャルな世界である以上、商品を手にとってみたりして感触を得ることも難しく、ヒトとヒトとの繋がりがもたらす関係性や人との対話からビジネスのヒントをつかんだりすることもなかなかできにくい。
直接面談・対話できる面白さはないし、会食等により個人的な関係性を深めることもネットでは無理だ。
利害関係のありそうな人々があちこちから集まり、時間や場所を共有することにより面白さが生まれ、ビジネスも生まれる。
リアルのMICE施設とはかかる機能と場所を提供するものなのだ。
人と人との交流・接触・対話こそがMICE施設の価値であり、機能でもある。

ライブイベントやエンターテイメント(劇場、カジノ等)もMICE施設と同様の集客装置になる。
またMICE施設にこれらが併設されている場合には、集客の相乗効果も生まれやすい。
そこへ行ってみたい、経験してみたい、遊びたいという目的志向性の強い施設群は、強い集客効果を発揮する。
勿論これは全てリアルワールドの世界であって、バーチャルでは得られない効果がある。
目で見る、音を聞く、触る、感じる、動く、仲間と参加する、叫ぶ、対話する等が面白さ(Fun),興奮(Excitement)等を構成し、その臨場感が楽しいからこそ、人々は集まるのであって、遠隔やリモートではこの感覚を得ることは難しいのが現実だろう。
それでは三密の典型ではないかという意見がでてきそうだが、リアルワールドとはヒトとヒトとの繋がり・交流が生み出すもので、これを極端に否定的に捉えると、それこそ経済そのものが停滞しかねない側面もある。

ネットはリアルワールドを代替できると考えることはおそらく非現実的だ。
但し、バーチャルな世界はリアルワールドを効果的に補完することができる。
恐らく、バーチャルはリアルワールドと共生して、初めてその価値が生まれるのだろう。
これはビジネスであっても、遊びであっても同じだ。
この意味ではリアルワールドは無くなることはない。
コロナ禍とはどこかで終息するはずで、時間の問題でリアルワールドが戻ってくる。

(美原 融)

Powered by WordPress & BizVektor Theme by Vektor,Inc. technology.
Top