2024-03-25
254.米ドジャース・大谷選手・水原元通訳違法スポーツブック賭博疑惑(1)
米MLBの野球選手や関係者による違法賭博疑惑は過去にも数多く存在するのだが、この水原元通訳の事案も元MLB選手グループが関与した闇賭博行為が端緒情報となった模様だ。
そもそも米国のMLBでは過去の八百長事案の反省から、選手、監督、コーチ等チーム・球団構成員は野球賭博への参加は禁止、野球以外の賭博行為への参画は禁止されてはいないが、違法賭博への参加は禁止というルールは野球関係者ならば当然熟知している。
これを知らなかったということ等あり得ない(MLBルール21 Misconduct‐不正行為‐d) Gambling‐賭博‐。
全文は下記になる。
クラブハウスでこれを掲示することは球団にとっての義務で、いやがおうにも毎日目につくし、選手・職員等を対象とした研修も随時ある)。
『(1) 選手、審判、クラブないしはリーグの責任者・職員が、自らが参加しない野球試合に関し、金銭の多寡に拘わらず、賭け行為をした場合には、1年間の出場停止処分とする。
(2) 選手、審判、クラブないしはリーグの責任者・職員が、自らが参加する野球試合に関し、金銭の多寡に拘わらず、賭け行為をした場合には、永久追放処分とする。
(3)選手、審判ないしはクラブ・リーグの責任者・職員が違法ブックメーカーないしはそのエージェントに賭けをした場合には、かかる行為の事実及び状況に鑑み、コミッショナーが適切と判断する罰則処分の対象となる。
選手、審判ないしはクラブ・リーグの責任者・職員が違法ブックメーキング業を運営したり、これに従事したりした場合、コミッショナーにより最低1年間の出場停止処分となる。
この規定にある違法ブックメーカーとは、賭けがなされる州では違法となるゲーミング行為の一部として、スポーツ試合に関し、公衆から賭け金を受領し、賭け、これを扱う個人となる。』
いうまでもなく、大谷選手・水原元通訳の場合には両名共に上記ルール21、d)(3)項が適用される疑惑になる。
違法賭博への参加は問題外でアウトとなり、この損金を補填するために第三者が自己名義の銀行口座から送金していたとしても、違法賭博の集金行為への加担とみなされかねず、限りなく問題となる。
既にMLBの調査部門(DOI)が調査手続きに入っているという報道があるが、このMLBの関心事は大谷選手の関与の実態とその度合い、この事情をコミッショナーがどう斟酌するかということになりそうだ。
もっとも連邦政府(IRS犯罪調査部ロサンゼルス事務所、FBI、司法省カリフォルニア中央区)が当該闇ブックメーカーの事務所を捜査、証拠を押収し、摘発したのは昨年10月で、犯罪証拠の中から大谷名義の送金が確認され、1月以降内偵調査がなされていた模様である。
既に摘発された犯罪との絡みで連邦政府が関与していると、MLBの調査等は後回しになる。
もっとも当局の関心はブックメーカーで、顧客は水原元通訳で、大谷選手は連邦政府の関心からは遠い位置にある。
但し、重大な窃盗として大谷選手代理人が関連当局に告発したとなると州警察も絡み事は複雑化する(勿論事実でなければ事は単純だ)。
尚、どういう相手と賭けをしていたのかという点に関しては、若干の混乱する報道もあるようだ。
カリフォルニア州ではない他の州にある合法事業者は自州の領域外の顧客には賭博行為を提供できないようGeolocation機能によりオンラインでもアクセスできないようにしている(例えば日本人が日本からアクセスしようとしても拒否される)。
要は米国における各州の合法事業者とこの事案を比較することは適切ではない。
もっともカリフォルニア州内にいても米国外の軽課税国からサイバー空間を通じて提供される違法オンラインスポーツブックには誰でもアクセスできる(効果的な規制はなされていないが違法である)。
個人としてスポーツブックをやろうとすれば、この違法オンラインスポーツブックにネットを介して参加し、仮想通貨で支払えばまずばれない。
かつ全てのオンラインスポーツブックは勘定を設けて、まず払い込むのが基本で後払いや貸付等はしないし、できない仕組みとなっている。
依存症であろうが、自分の資金の範囲内で、ネットで遊んでいる限り、余程のことが無い限り、摘発されること等ありえない。
水原元通訳が起用したのはこんなまともな(?)世界ではなく、昔ながらのブローカーを通じた闇スポーツブックだ(IRSの押収物情報では個人の様だが裏に闇犯罪組織があるかは不明である)。
おそらく電話やSNSを利用し、オッズを提供したのであろうが、今やコンピュータを用い、in-playのオッズをあらゆる補足データと共にスマフォで提供している時代に、ブローカー・エージェントを経由する等、余程特殊な事情が無い限り、まずまともな人間は関与等しない(アナログ的でリアルタイムで賭け行為ができにくい場合、面白くない)。
おそらくこの事案は著名人や富裕層、スポーツ関係者等匿名で賭け事をしたい特定の顧客層に狙いを定め、あの手この手で食い込む闇ブローカーにひっかかったということだろう。
旧知のMLB選手も絡んでいれば信用してしまうかもしれない。
賭け金は無制限、全て元手無しで負けても後払い、情報はばれないような手法でやりとりするという前提で巨額の資金を突っ込んだと思われる。
但し、450万㌦という負け金総額はスポーツブックとしての資金の動きとしては巨大すぎるし、一介の通訳に対する与信としてもちょっと常識を超える。
こういう状況になると累積損を一挙に取り戻すために、最も内部情報を持っている野球賭博に手を染めてしまうというのがこの手の犯罪の常道なのだが「野球賭博は絶対していない」という発言は本当かという懸念は既に米国では識者が指摘している。
また数回にわたる巨額の送金を口座保持者の本人確認手続きなしに行える程甘いコンプライアンス体制をとっている銀行は米国には存在しない。
もっとも凡人と異なり、大金持ち・著名人なら不可能ではないかもという声もある。
勿論実態がどうなのか次第で展開は異なるし、予測もつきにくい。
おそらく直接の関係者は沈黙を続け、問題の収拾を図ろうとするのであろうが、時間の問題で関係者による説明責任が求められることになることは間違いない。
(美原 融)