National Council on Gaming Legislation
コラム

2020-10-06

32.技術の進展と規制の在り方

ゲームとしての賭博行為は、技術の進展と共に常に進化している。
人間(顧客)対人間(デイーラ―)だけの賭け事であったのが、人間(顧客)対機械(スロット・ビデオマシーン)に変わり、人間(顧客)対システム(ICT技術・システム)に変わろうとしている。
これは使用する用具(チップ、カード、テーブル、シャッフルマシーン等)も同様で、かつゲームの記録、管理、監視システム迄及ぶ。
ゲームの経緯を記録することは、電子システムであるスロットマシーンやビデオマシーンでは簡単にできる。
一方人(顧客)と人(デイーラー)との行為の記録は、過去の手段としては監視カメラやデイーラー等の人による観察のみで、これでは顧客が多い場合、完璧かつ正確な記録とすることは不可能に近い。

但し、そうではない時代が到来しつつある。
カジノのチップにRFID(Radio Frequency Identifier)を埋め込み個体認識を可能にし、デイーラーと顧客とのやり取りも全てテーブルの上下から把握、チップや金銭のやり取りは全てシステムとしてサーバーがテーブルの動きを把握し、管理し、記録することにすれば、全ての遊びのログを記録でき、かつ一切改ざんもいかさまもできず、顧客側に不正は絶対できないシステムを構築できる。
あるいはチップ自体をテーブルでのみ使える名目的な電子ツールとし、勝ち負け、配当は全てテーブルに組み込まれたシステムが電子的に把握し、管理することも不可能ではない。
この場合、チップは単なる遊びの名目的なツールになり、これをもって金銭交換をする必要もないし、そもそも金銭交換ができなくなってしまう。
事実このようなプロトタイプのシステムを構築した我が国事業者も既に複数存在し、時間の問題で実践に応用できそうな雰囲気がある。

金銭の勝ち負けは全てシステムで把握し、記録するということは、勝ちも負けも一定金額を預託したシステム上の電子アカウントで把握し、最後に顧客がここから任意の時点で現金を引き落とすことを意味する。
顧客とデイーラーが賭け事を遊ぶという行為自体が電子化されているわけではない。
テーブルやチップ等の器具や用具、金銭やチップのやりとり、勝ち負けの記録と確認・支払いの方法等周辺が電子化・IT化されるという構図になる。
この場合、全ての遊びのログを記録でき、かつ再現できることになるため、あらゆるテーブルにおける不正行為は根絶できる。
またデイーラーの計算ミスもなくなり、システムがデイーラーを支援するため、彼らの訓練や技術も不要になる公算が高い。
依存症等に繋がるのめりこみ行為もビックデータやAIを活用することで要注意行動や要注意人物を早めに特定できるようにもなる。
従来不可能と思われていた行為がICTの活用により可能になるわけだ。
ゲームや遊びの透明化と公正さが更に向上することにも繋がる。

ゲーム自体のICT化、技術の進展は、明らかに規制の在り方も、制度の在り方も柔軟に変更せざるを得ない時代が到来することを示唆している。
制度や規制の枠組みは制定時の実態を反映するが、ICTの発展は極めて広範囲で、かつ変化のスピードも速い。
よって制度と規制は固定的ではなく、柔軟であるべきで、市場の要請や技術の変化に対応できるように、都度改定するなり、柔軟に対応するなりすることが肝要である。

IR整備法もまだIRすら実現化していないのだが、既に、果たして。
現在のままの法規定でよいのか、修正が必要ではないかとする項目が既に存在する。
IR整備法第73条6項はチップを「金銭の額に相当する価額を有するものとして交付又は付与される商標、電子機器その他の物又は番号、記号その他の符号であって、カジノ行為を行うために提示、交付その他の方法により使用することができるもの」と定義し、カジノ行為にはこれを使用することが義務となる。
定義としては、解釈次第なのだが、電子チップの概念は含まれていると考えるべきであろう。
一方第104条はチップの譲渡等の防止のための措置を規定し、「顧客がチップをカジノ行為区画の外に持ち出すことを防止するために必要な措置を講じること」を事業者の義務としている。
電子的チップの場合、持ち出し禁止を電子的、物理的に考慮することは、例えば出口にゲート等を設け、電子的にチェックするなどにより不可能ではないだろう。
但し、具体のシステムやチップの在り方次第では今の規定の儘で機能するか否かは不明な側面も多い。
もっともチップをテーブルのみで用いられる電子ツールにしてしまえば、テーブルを離れれば金銭交換価値がなくなるため、持ち出し禁止を規定する意味もなくなってしまう。
また伝統的な通常のチップであった場合、逆にチップの場外持ち出しをどう管理できるのかに関しては、技術的・実務的な課題もある(顧客がチップを一枚記念に持ち帰るという行動を効果的に防御できるか等細かい問題が存在するからである)。
チップの場外持ち出し禁止とは、諸外国ではかなり高い一定金額以上とすることが常識的で、より現実的な法規制になっている。
一定滞在時に複数回カジノ場に出入りする顧客がいる場合、都度場外への持ち出しを禁止する等全く意味がない。
わが国では「全て持ち出し禁止」という摩訶不思議な法規定になっている。
既に立法過程で、誰も現実をチェックせず、単純に厳格化した規定を設ければ事足りるという考えが存在したということと推察する。

将来の技術の進展をにらんで法規定を作ることはできない。
規制も制度も現実の進展に合わせて柔軟に変えていくことを基本とすべきであろう。

(美原 融)

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