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2022-09-19

175.スポーツブッキング ⑨ベッテイングエキスチェンジとは?

通常のスポーツブッキングとはブッキング事業者(胴元)と顧客が対峙する賭け事で、胴元が提示するオッズの組み合わせに顧客が賭ける形式を取る。
そうではなく、顧客がオッズを提示し、顧客同志でのマッチメーキングによるスポーツベットを認める仕組みをベッテイングエキスチェンジ(Betting ExchangeないしはBet Exchange)と呼んでいる。
欧州諸国では一般的だが、米国では未だポピュラーとは言い難い。
但し、市場の発展に伴い時間の問題でこれがはやるようになると想定されている。
これは一種のマッチメーキングのサイトの如きもので、例えばAチームが勝つと信じる人がオッズを提供し、負けると信じる人がこれを受けるという形になる。
ある結果が起こると信じる人をBackerといい、(Backとは購入するという意味)、起こらないと考える人をLayerという(Layとは売る、受けるという意味)。
この場合のBackerとは通常のスポーツブッキングの顧客と同じだ。
これに対しLayerとはオッズを設定する胴元の役割を担うことになる。
Layerが価格を決め、ベットを掲示すると、システムがこれを技術的に瞬時にBackerとマッチさせ、ベットが成立する。
胴元は勝った主体からコミッションを得る。
顧客はBackerにもなれるし、Layerにもなれる点が通常のスポーツブッキングとは異なる。
株式市場で株式の売買をするようなもので、Layerが価格を提示し、Backerがこれを受けるか拒否するかするわけだ。
この場合、市場メカニズムの力で価格が設定されることになる。

ベッテイングエキスチェンジはスポーツブッキングの一種の発展型として生まれたのだが、ベッテイングエキスチェンジの主催者はあくまでもマッチングの場を提供しているだけであり、個別の賭けで誰が勝とうが、負けようが関係ない。
通常勝者から一定の低いコミッション(2~5%)を徴収することが胴元の儲けになる。
オッズを提供し、賭け事に関与するわけではないために、伝統的なスポーツベッテイングに内在する利害相反の関係を排除できるというメリットがある。
かつマッチングサイトである以上、事業者のコミッションも低く、オッズを自ら設定する必要もないため、管理運営等の費用も低くなり、オッズ設定に係る特段のリスク管理をする必要もなくなる。
また、胴元として、顧客の勝ち分に何等かの制限をかける動機付けはないため、顧客自らが高い賭け金額を設定できることも可能だ。
勿論これでは賭けは成立しないかもしれない。
かつ怪しい取引としてモニタリングの対象になるかもしれない。
一方、顧客は通常のスポーツベッテイングと同じ様に提示されたオッズで賭けることもできれば、自分でオッズを設定し、他の顧客にこれで賭けさせるという風に双方向的に動けるという柔軟性がある。
ベッテイングエキスチェンジはゲームの進行途上で賭けるIn-Playの場合に活性化することが多い。
試合前に行った賭けが、試合の経過に伴い可能性が無くなる場合、逆に賭けることで損失をヘッジできるからである。
また中長期のリーグ戦のシーズンの結果への賭け(Futureという)等では通常のスポーツブック運営事業者は特定のチームが勝ことに人気が集中するオッズを提供することには躊躇してしまう。
リスクが大きすぎ、エキスポ―ジャーを軽減することを考えるからだ。
一方、ベッテイングエキスチェンジにおけるLayerはこのリスクを取ることがあり、結果的に伝統的なスポーツブッキングより、より良いオッズを提供しうる可能性がある。

もっとも良い点ばかりではなく、ベッテイングエキスチェンジには欠点があることも指摘されている。
賭けの両サイドに賭ける人がいて初めてマッチングが成立できる。
通常の賭け方なら問題ないかもしれないが、顧客の提案によるPlayer Props等はニッチな賭け方でゲームに参加する人が少ないとマッチングは成立しない。
相手が見つからないわけだ。
この状態は金が市場に動いていない状態になり、流動性が市場に無いという。
また顧客に対し、ボーナスやフリープレー等を提供するサービスはない。
胴元にとり費用は安く、マージンの低いビジネスになり、顧客に対するサービスの価値向上がインセンテイブにならないからではといわれている。
これでは一般顧客にとってはあまり面白くないが、高額のベットをする顧客にとっては自由度がある賭けの方が有利とみるのかもしれない。

米国でも一部の州ではベッテイングエキスチェンジは提供されているがその規模は大きくない。
これは市場が制度により州単位で分断されているからで顧客の層が薄く、マッチングが成立しにくい環境があるからと見られている(所謂流動性が無い)。
米国の連邦有線法は「州境を超える賭け事を支援する情報の供与」を禁止しており、この規定がまだ生きており、例えネットでサービスを提供しても、サイトへのアクセスはその州に居住しているか、滞在している人しかできない(Geolocation技術を用い、どこからアクセスしているかを判断し、不適切な場合にはアクセスを拒否する仕組みが採用されている)。
市場を支える大きな流動性がなければベッテイングエキスチェンジは成立できにくい。
だからこそ欧州では顧客が集まる巨大寡占企業のエキスチェンジサイトに人気がある。
もっとも欧州ではフランスの様に、ベッテイングエキスチェンジを制度的に禁止している国もあり、国毎にその事情は異なる。
リスクをどう判断するかは、国よっても事情は異なるということだ。

さてもし、日本でスポーツベッテイングが制度的に認められることになった場合、顧客間でのオッズの設定と賭け事は認められるであろうか。
顧客間での賭博行為はマネーロンダリング防止の観点から好ましくないとするのがIR整備法構築の段階ででてきた議論だ(例外はテキサス―ルデムポーカーで、これのみは認められている)。
ベッッテイングエキスチェンジは、通常に比し賭け金額の対象が高額になりうることもあり、これを認めるのか、認めないのか、認める場合、これをどう管理できるのか等も議論の対象になる側面がある。

(美原 融)

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