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2022-09-26

176.スポーツブッキング ⑩フォーマットの選択(1)

スポーツブッキングにはOn-Site/In-Person(固定施設・対面方式)とOn-Line/Mobile(オンライン・モバイル方式)という二つのフォーマットがある。
スポーツブッキングを制度として考え、実践しようとする場合、どちらをどのように選び、誰に、どのように認めるか次第では制度も規制も異なってくるし、そもそもこれを支えるビジネスモデル自体も変わってきてしまう。

On-Site/In-Personとは、固定的な特定施設の中で、顧客と胴元が対面で行うスポーツブッキングのことだ。
例えばラスベガスのカジノ施設内にあるスポーツブッキング施設とはカジノ場内の一定区画を区切りラウンジ化したものになり、巨大なスクリーンで複数のスポーツ試合や競馬の実況中継を流し、かつ巨大な電子オッズボードにオッヅが掲示されている。
バーもソファーもあるが、デスクにコンピュータ端末がおかれ、ここで自分の好きな試合やオッズの詳細を見ることもできれば、様々な情報やデータを検索でき、賭けの戦略を練ることができる。
プリントアウトもあるのだが、データを分析しながら賭けを予想することに高揚感が生まれるのだろう。
実際の賭け行為はカウンターで、選択したオッヅへの賭け金を支払いその証票をもらう。
もっとも最近は電子化が進み、セルフサービスマシーン等を設置し、オッズのチェックも支払いも全て一つのマシーンでできるようになっている場所も多い。
この様に、その場所に実際にでかけ、対面で賭け事をする施設をOn-Site/In-Personと呼称するのだが、カジノにある大型施設から街中に設置されるセルフサービス KIOSKなる小規模施設まで様々なものがある(これをRetailともいうが、端末が設置された場外馬券売り場みたいなものだ)。
意外と人気があるのは実際のスポーツスタジアム等の試合場に設置される施設だ。
試合の前、試合の途中でもベッテイングに参加でき、スタジアムを活性化できる。
カジノ施設でもスーパーボール等の人気ゲームが行われる季節になると毎週金には数千人が押し寄せ、ビールを飲みながら得点が入るごとに大騒ぎになるのがアメリカだ。
かなりの人寄せ効果はある。
これら施設は、確かに提供場所は固定施設で、カウンターで証票を購入するのだが、内情はオッズの設定や調整、管理やモニタリングはシステム的に構成され、当該施設の外からオンラインで全ての情報を提供するという風に変わりつつある。
内部的には全てがシステム化、デジタル化され、製品・サービスを固定施設で提供しているにすぎないわけだ。

一方、このような電子化、システム化が進行すると、固定施設からのサービス提供ではなく、インターネットやモバイル手段(スマホやアイパッド等)を用いて、顧客に直接サービスを提供するフォーマットも認めても良いではないかとする考えがでてくるのは当然かもしれない。
本人確認をした個人に勘定を設けさせることにより、アクセスを限定させ、あくまでも限定的に、スポーツブッキングを提供する手段をオンライン化(On-Line)、モバイル化(Mobile)するという考えになる。
これがOn-Line/Mobileフォーマットだ。
モニターにオッズだけではなく、映像や様々な競技データ・情報を提示することはOn-Site/In-Personの施設でもやっていたのだが、膨大な情報を顧客が自宅のコンピュータからオンラインで自由にアクセスでき、画面を通じて賭け金行為ができれば自宅がRetail施設になる様なものだ。
これがMobileでもできるとすれば、勘定さえ設けておけば、何時でもどこでもスマホでアクセスできるようになり、例えば実際の野球場で野球を見ながらIn-Gameの賭けに参加し、次のイニングで大谷がホームランを打つか否か等試合開始後の彼の調子を判断した上で、スマホで賭けることができるようになる。
確かに顧客の利便性は高まり、スポーツの試合と賭け金行動をより接近させ、遊びとしての選択肢が増え、スポーツブッキングの人気が高まることは間違いない。
但し、これはオンラインで賭博行為を提供することでもあり、制度としても、規制の在り方としても、全く異なるアプローチが必要になる。
我が国では、ただでさえ賭博行為に否定的な国民感情がある以上、問題がありすぎるとして、オンラインによるスポーツブッキング等もってのほかと拒絶反応を示す国民も多い。

但し、何らの規制もなく、スポーツブッキングが認められるわけがなく、当然のことながら一定の制限行為が設けられると共に、提供に関与する様々な関係者やスポーツブッキングの行為自体が規制の対象となる。
これは如何なる先進国でも同様で、厳格な規制と制度があり、初めてスポーツブッキングが認められるのが通例である。
もっともオンライン・モバイルもフォーマットを前提とする場合には、通常の固定カジノ施設とは異なるオンラインやモバイルの特性や提供の仕組みをうまく活用し、効果的な規制の仕組みを考えるという工夫がなされていることが多い。
例えば、

  1. 提供に関与しうるあらゆる法人・個人は免許の対象で規制当局による連結性背面調査の対象になる。
    システムのコアとなるサーバー等ハードウエア、ソフトウエアは全て認可の対象、サーバー等は指定場所への設置義務、(国によっては)規制当局によるサーバーやシステム、更には顧客データへのアクセス権付与等もありうる。
    システム化やデジタル化は、施行を限りなく透明化する。
    全てのソフトウエアとデータを規制当局と民間事業者が共有する場合、施行自体に不正や違法行為が生じる可能性は限りなく減少する。
  2. 顧客の参加に関しては、厳格な本人確認の手続きが制度化され、未成年や不適格者はここではじかれる。
    かつアクセスの都度、顔認証等厳格な本人確認手順が実施されることもある。
    個別の顧客の全ての賭け金行動(賭け金及び勝ち負けの結果等)は全てデータが記録され、必要な場合、規制当局はこれらデータにもアクセスでき、全ての履歴をトレースできる等である。

要はスポーツブッキング自体のデジタル化、システム化の進行は、これを規制する側にとってもこれらデータやシステムを利用できることになり、この結果、限りなく施行が透明化する結果をもたらしていることを意味している。

(美原 融)

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