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2024-01-29

245.スポーツブッキング 顧客誘引施策と規制②Free Betとは?

米国系スポーツブッキング事業者のオンラインサイトを覗くと、「今始めれば$1000のリスク・フリー・ベッド(Risk Free Bet)をプレゼント!」等何とも過激かつ気前のよさそうな広告をあちこちで見かける。
一種のプロモーション、広告・宣伝ともいえるのだが、新規顧客にインセンテイブを与えるマーケッテイング手段であるとともに、一旦サイトを訪れ、賭け行為に参加した顧客で一定期間離れていた顧客を再度呼び戻すための動機付けであったり、恒常的にサイトを訪問する良質な顧客に定期的に付与するインセンテイブであったりする。
それにしても一般大衆にとり賭け金単価が割と低いスポーツブッキングで$1000のリスク・フリー・ベットというのは、単純に表現だけみると気前のいい話だ。
こうなるのは事業者自身が顧客争奪競争の環境にあるからで、少しでも多くの顧客を自分のサイトに惹きつけ、顧客を囲いこもうという競争が行われているためでもある。
このフリー・ベットを課税対象にする州もあるが、課税対象とせず、広告宣伝費(Promotional Expense)として税前控除が可能という州もある。
これに関し特段の制約が無く、実質的に無制限の税前控除が可能な場合、かなり強烈なセールスプロモーションが行われているのが実態になってしまった。
税負担の一部を宣伝広告費に回しているようなものだから、事業者から見ればメリットは大きい。
逆に公的主体の立場からすれば、これは事業者を支援することにより、課税対象額が減り、税収が減ることを意味する。

もっともフリー・ベットといっても単純に現金(Real Money)をもらえるわけではなく、事業者サイトに掲示している条件等をよく読まないと、正確にその仕組みを理解できない。
かつ必ずしもリスクのない資金をタダでもらえると考えるのは甘すぎる。
フリー・ベットにはいくつかの分類の仕分けがあるが、主なものは下記等になる。

  • No Deposit Bonus(預託金不要ボーナス):
    顧客が勘定を開設し、サイトに登録すると、預託金を支払っていないのに、直ちにクレジットが与えられるもの。
    通常$10~$25で少額なクレジットであることが特徴になる。
    賭けられるオッズに上限制約がつくこともある。
    勝ち分は顧客勘定にクレジットされるが元金は支払われない(これをStake not reward, SNRという)。
  • Sign Up Bonus(サインアップ時ボーナス):
    フリー・ベットを現実のものにするためには、まず勘定を作り、少額でも現金で賭け行為をすることが要求されるもの。
    これに伴いクレジットが付与される。
    例えば”Bet$10, Get $20”($10賭けて$20もらおう)等の標語だ。
    賭けられるオッズには制約があり、勝ち分はクレジットされるが元金は支払われないのは上記と同じ。
  • Deposit Bonus(預託金ボーナス):
    預託金を勘定に入れた場合、”Up to…”という形でクレジットが与えられる。
    通常預託金と同額であることが多い(これをMatch Creditという。例えば$100預託すれば、$100のボーナスが付く)。
    新規顧客にとり、預託現金の倍額を使えるというメリットになるが、既存の顧客にもセールスの目的で使われる。
    オッズ制限や利用できるタイムリミット等が条件づけられ、勝っても勝ち分のみがクレジットされ、元金はクレジットされない。
  • Risk Free Bet(リスク・フリー・ベット):
    First Offer, No Sweat Bet, New Player Bonus等ともいう。
    新規顧客が最初の賭け行為でもし負けた場合、最初の賭け金と同額ないしはその一部金額をボーナス・クレジットとして戻してもらえる。
    負けた金額と同等の金額でもう一回賭けるチャンスをもらえるわけで保険みたいなものだ。
    通常これは$200から$1000迄で、高額になるのは顧客が現金で賭ける行為(Real Money Bet)が先行するからである。
    尚、勝っても勝ち分のみがクレジットされ、元金はクレジットされない。
    その他様々な条件が課せられるのは他と同様である。

これらフリー・ベットはカジノにおけるコンプの一種でもあるフリー・プレイと考え方は同じである。
通常、譲渡不能、払い戻し不能、償還不能が原則で、現金と同様(Cash equivalent)なものを顧客に提供するということではない。
また通常賭け方の種類や最低賭け金、最高賭け金、クレジットの使用期限や一定回数のロールオーバー規制(勝った場合、当初の賭け金のx倍迄総額で賭けたのちに、初めて現金化できる。
例えば30xという条件で$20のフリー・ベットをした場合、勝ち金を現金化するためには何と$20 x 30=$600分を賭ける必要がある。
通常20xから50xの賭け金要請条件が付される)等の条件が付される。
顧客にクレジットは与えても、単純に現金化できない仕組みが全ての前提だ。
オンライン・モバイルを前提とするスポーツブッキングの場合には、予め勘定を設け、現金を預託することで初めて賭けに参加できる。
かつ辞めたい場合には、残金を現金化して、退出することも容易なことが前提となるため、フリー・ベットに基づく勝ち分も単純にそれが現金化されないように手順や制約を複雑にしていることが特徴的な事象になる。
現金化するためには、ある程度時間をかけ、何回も賭ける必要があるのだ。
この場合、顧客にとってのメリットはやればやるほど少なくなってしまう可能性が高い。
$1000フリーという宣伝広告は、顧客の視点からすれば表面的には魅力的に映るが、必ずしもフリーとはいえないし、単純には現金化できず、顧客にとってのリスクもある。
但し、この広告宣伝で、少しはやってみようという新たな顧客がでてくるのが世の中の現実なのかもしれない。

(美原 融)

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