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2024-01-22

244.スポーツブッキング 顧客誘引施策と規制①対顧客誘引施策とは?

商品としてのカジノやスポーツブック等のサービスは、異なる事業者が競争し、提供しあっても、商品自体を差別化して競うということはまず難しい。
サービスに関わるルールも提供の在り方も規制の下にあり、全く同一だからだ。
勿論スポーツブックの場合には、胴元が提供するオッズや提供される情報等に若干の差異はでてくるが、これとて類似的な近似値になってしまう。
よって競争は顧客をどう自分の施設やオンラインサイトに引き込むか、顧客に対し如何なる動機付けや満足度を与え、魅力あるサイトとして、どう再来を促すか等がマーケッテイング(顧客誘引施策)の基本になる。

これには様々な手法がある。
例えば、
• → Broadcast Advertising(新聞雑誌等の印刷媒体、TV,ラジオ、ネット等を利用した宣伝・広告、ウエッブサイトでのポップアップ広告):
不特定多数の潜在的顧客に賭博行為への参画を呼び掛ける広告になり、対象となるスポーツ試合の直前あるいは試合中に実施すれば効果は高くなる。
ネット空間で様々な情報サイトから自らのサイトへ誘導したりする手法等も使われる。
• → Celebrity Brand Ambassadors(著名アスリートやインフルエンサー等の影響力の活用):
著名スポーツ選手や有名人、若者に人気のインフルエンサー等を起用し、オンラインサイトへと促す広告を打つ手法になる。
若い世代に訴えかける著名人の活用は顧客に安心感や共感を与え、効果が極めて高いことが知られている。
• → Sponsorship & Promotion(プロスポーツチーム/選手やスタジアム施設等とのスポンサーシップと対顧客販売促進策):
対象となるプロスポーツチームやクラブあるいはホームグラウンドとなるスタジアム施設等とスポンサーシップ契約を締結し、著名選手の広告への起用、選手ユニフォームの前面への大きなロゴや袖口へのロゴをつけさせる、スタジアムのサイドピッチや場内の様々な場所に広告やロゴをちりばめるなどで、いやがおうでも目につき、記憶に残させる意図になる。
施設内に対面での販売所等を設けることもある。
• → Incentive & Inducement(対顧客ボーナスやFree Play等のインセンテイブの付与):
新たな顧客獲得や既存の顧客を引き留め、更に賭博行為への参加を勧誘するため、一定条件下で賭け金が不要なFree Playや一定の条件を満たす賭け行為をするとボーナスを付与したりして、顧客を賭け行為に誘導する。
Odds BoostsとかProfit Boostsとは、一定の条件を満たす場合、オッズを増やす誘引施策になる。
より多くの金額を賭けさせる誘引で、前者は勝った場合には現金、後者はFree Playが与えられるという差がある。
• → Direct & Indirect E-Mail & Message(直接的あるいは間接的に第三者を介したEメールやSNSメッセージ等による販売促進):
顧客を特定できる場合、顧客本人同意の下にEメールあるいはSNS等の手段を用いて直接的あるいは間接的に販売促進のためのボーナスをオッファーし、顧客の参画を促す行為になる。
• → Loyalty Program(顧客ローヤルテイープログラムと対顧客還元):
顧客をローヤルテイープログラムの会員にさせ、顧客の支出額を把握、支出額に応じて何らかの商品やサービス等の便益を得られるプログラムを提供し、顧客を継続的に惹きつける施策になる。
• → Affiliate Marketing(アフィリエートと呼称する第三者を活用したマーケテイング):
ネット情報を用いて、顧客を連れてくるサービスを提供する主体(アフィーリエート)を賭け金の一定率の報酬を支払う契約で起用し、マーケッテイングをアウトソースする施策になる。

等である。

上記は、スポーツブッキングに経験の無い顧客を新たに誘い込む施策とともに、一旦取り込んだ顧客を継続的に顧客として引きとどめる施策の二つがあることを示唆している。
前者の施策の内、スポーツブッキング等やったことのない潜在的顧客を誘う最も効果的な手法は具体のスポーツ試合におけるライブ中継の際のTVやラジオ、ライブストリーミングにおいて、集中的に広告宣伝を流し、顧客の潜在的意識に働きかけることだ。
これが過剰すぎるとして様々な社会的反発をもたらしたことが欧州諸国やオーストラリア等での実態になる。
ここから何らかの規制をすべきではないかという議論の流れが生まれることになった。
この規制には様々な考え、手法が存在する。

例えば、
• → 人気があり顧客の関心が集中しかねない賭け事の手法を制度で規制したり、禁止したりする(例えば試合中に試合の推移を賭けるIn Playや選手の次のPerformanceを賭けるProps Bet等を禁止する。
禁止することで事業者による過剰な販売促進行為を抑止するわけだ)。
あるいは試合中の過剰な広告・宣伝・販売促進行為を禁止したり、時間帯によりこれを規制し、未成年や弱者等の目に触れないようにしたりする規制を敷く等の手法もある。
• → ボーナスやFree Bet等顧客の射幸心をくすぐる販売促進活動を金額、頻度、提供の手法等で規制することで、勧誘ではなく顧客自身の判断で賭け行為ができる環境を作る。
• → 特定個人を対象としたEメールやSNSを用いたDirect Marketingに関しては、あくまでも本人の事前同意を取得しない限りできない様に規制する。

等である。

(美原 融)

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