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2023-12-25

240.スポーツブッキング 公租公課⑤課税手法(Point of Consumption課税POCT)

通常賭博行為に対する課税行為は、物理的な賭博サービスを提供する施設があることを前提に、サービスが提供される地点(Place of Supply Base)に着目し、制度、規制、課税体系を考える。
ところがこれではインターネットを用い、サイバー空間から提供される賭博行為がなされる時代には通用できなくなる。
当該事業者が免許を取得した自国内に存在する主体であるなら問題ないが、免許も持っていない主体が管轄外、あるいは外国からサイバー空間を通じて賭博サービスを国内居住者に提供した場合、Place of Supply Baseでは課税できなくなる。
状況次第では、この考え方では税収の遺漏が顕著になってしまうことになる。
外国から提供する事業者は単なる違法事業者なのだが、連邦制度の国で州毎の制度となる場合には、制度の在り方次第では法のループホールができてしまう。
そこで出てきた新しい考え方が、サービスが提供される地点(Place of Supply Base)ではなくサービスの消費地点(Point of Consumption Base)に着目して課税するという考え方だ。
ネット社会に対応できる新たな課税手法の考えで、英国(2014年以降)、オーストラリア(州毎に2017年~19年)、ニュージーランド(2021年以降)等が賭博関連税徴収にこの考え方を採用している。

英国では2005年賭博法(Gambling Act)に基づき、一定国(White Label Countries)のオフショアオンライン事業者は免許も取得せずに、かつ課税もされず、オンラインで英国市場に参入できるという事情があった。
2012年にこの制度は改正され、2014年以降オンライン賭博に関してはPlace of SupplyベースからPoint of Consumptionベースに課税手法を転換、オフショア事業者が英国居住民に対しオンラインで賭け事をサービスとして提供する場合、サービスを提供している消費地点は英国であることを理由に、英国で国内事業者と同等にオンライン賭博税(Remote Gambling Duty)を課税する(総粗収益から控除可能費用を差し引いたNet Gaming Revenueに対し税率21%)内容になる。
競合する英国内企業との公平性を担保することもその目的の一つであった。
実際の手法としては、オフショアオンライン事業者を英国の規制機関(賭博委員会、UKGC)に登録させ、顧客によるサイト利用の際、顧客情報・顧客の消費地点の把握と顧客から英国に居住していることの確認を取り付け、全て記録する義務を課す。
これにより英国居住人がもたらすGGRを全体のGGRから峻別して捕捉させ、課税対象GGRを当該オフショア事業者に確定申告させ、納税させるという仕組みになる。
英国居住者に賭博サービスを提供しようとする者は、世界中何処に存在しようが課税対象になり、申告・納税義務がある。

オーストラリアでは所謂オンライン賭博(カジノ等)は2001年Interactive Gambling Actにより禁止されているが、オンラインのスポーツブック、オンラインの競馬、オンラインによるロッテリーくじの販売の3つは例外として政府免許取得により認められている。
豪州では連邦政府が事業者にGST(付加価値税、事業者勝ち分GGRの10%)を賦課し、一方州政府は別途事業者に賭博税(Gaming Tax)を課す仕組みであり、後者の税率は各州が独自に取り決めている。
但し、基本的にはいずれの州もPlace of Supplyベースでの課税(自らの州内で事業者が州民に対し賭博サービスを提供することに課税する)を基本としていた。
ところがデジタル化した世の中では、これでは各州の税収が遺漏するような事態が生じてしまった。
Northern Territory州はオンライン事業者にとり有利な税制(納税額の上限規定がある)を設定し、事業者誘致を図る施策をとったため、オーストラリアに拠点を持つオンライン事業者はほぼその全てがNorthern Territory州で免許を取得し、ここを拠点としたからである。
彼らが提供するサービスはこの州だけではなく、豪州全体を、サイバー世界を通じてカバーでき、同州もPlace of Supplyベースでの課税を前提としていたため、他州の顧客の賭け金とこれがもたらすGGRにも同州では課税対象の一部になってしまう。
逆に他の州では税収遺漏ということになる。
これでは不公平として、制度をPoint of Consumption(顧客消費地)ベースの課税とし、自州の住民が他州のオンライン事業者に賭けた場合の賭け金に対し、これを峻別させ、当該事業者に申告させ、消費地点で課税するという考え方が導入され始めた。
各州がバラバラに制度を設けたが現状では税率はGGRの15%として統一されている。

尚、国境を越えてネット配信されるデジタルコンテンツにかかる付加価値税(消費税)については経済協力機構(OECD)が「顧客の居住地(消費地)」で税を課すルールを定めているが、基本的には上述のPoint of Consumption Taxはこの考え方と同一であろう。
デジタル時代における課税の一つの方向性でもあるのだ。
因みに日本でも平成15年度の税制改正においてかかる取引を国内取引とみなし、消費税の課税対象とすることとしている。
当面の国税の対象はスマフォ、パソコン、ゲーム機で遊べるオンラインゲームの海外からのデジタルコンテンツで日本に子会社がある場合、これに対し課税する模様だ。
もっとも企業が純粋に海外に存在する場合、どう課税できるのかは制度的な課題になる。
決済の仲介に入るプラットフォーマーや資金決済代行事業者を対象に海外デジタルコンテンツプロバイダーとの取引に関する報告義務を設け、決済時にこれら本邦にいる主体に消費税を課すことができればこれは可能だ。
勿論これには制度改定が必要になるし、これに反対する意見もありうるかもしれない。
我が国ではオンライン賭博は未だ違法故、かかる考え方が賭博分野に適用されることはありえないが、アミューズメントゲームで採用されうるということは、将来的には賭博ゲームにも適用できうる可能性があることを示唆している。

(美原 融)

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