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2023-12-11

238.スポーツブッキング 公租公課③課税手法(GGR課税)

スポーツブッキングングに関わる事業者の施行収益に対する課税対象額に関しては粗収益(GGR Gross Gaming RevenueあるいはGWR Gross Wagering Revenueということもある)とすることが通常の考え方になる。
これは顧客賭け金総額から対顧客払い戻し額(顧客勝ち分)を差し引き、更に認められる場合には一定の控除額(対顧客Promotionのためのボーナスやフリープレーの対顧客供与額等)を差し引いた金額である。
この控除額は無い場合もある。
この基本的な考えはカジノ等の他の賭博行為と同じであり、一種の特権課税として、事業者にとっての粗利(顧客勝ち分を差し引いた実質的な売り上げ)を課税対象にするということになる。
勿論運営費用等控除後の金額に対し、通常の所得課税が課せられることも他の賭博種と同じである。
スポーツブックも各国・地域毎に市場が分断されるため、税率は、バラバラでここに何らかの共通的な考えを見出すことはできない。
欧州諸国では、英国は21%(当初は15%、2014年に改訂)、スエーデンは15%、イタリアでは対面施設が20%、オンラインスポーツブックは22%、フランスでは7.5%、オランダ25%、フィンランド12%、スペイン20%等とかなりばらつきがある。
豪州も州毎の制度となるが、当初は8%から15%までばらつきがあったが、近年はほぼ全州で15%に統一されつつある。

米国の事情は更に混沌としている。最低税率の州はネバダ州とアイオワ州でいずれも対面施設もモバイル・オンラインも同一でGGRの6.75%となる。
その他の賭博種と差別化せず、同一税率にするという考え方だ。
全米でもっとも税率が高いのはニューヨーク州で対面施設は10%だが、モバイル・オンラインは何と51%と極めて高い税率になっている。
人口も多く全米一の巨大市場であるために、極めて挑戦的な税率を期待値として市場に提示し、民間提案を下に許容できうるはずとして高い税率を決めたという経緯がある。
この税率を前提とし、事業者選定の段階で数多くの応札者が参加したのだが、その後許諾事業者は大きなGGRを実現している以上、政策としてはこの高税率は成功したのだろう(2023年10月単月で8社のモバイル事業者でHandle20億㌦を達成した。
これは全米過去最高値になる。
尚、これに対面4施設のHandle約100万㌦~150万㌦が更に追加される)。
ロードアイランド州も51%、デラウエア州は50%、ニューハンプシャー州は、対面施設は50%。
オンラインは51%といずれも極めて高いのだが、これら州はいずれも単一公的エージェンシーによる独占市場になり、税というよりも収益分担方式で公的主体の取り分を規定しているに過ぎない。
これら州では事業収益と税収を公的主体が独占するという構図に近い。
民間事業者はこの単一公的エージェンシーの下で業務請負方式により運営に参加しているのだが、制度上の免許主体ではない。
この他、モバイル・オンラインのみが認められている州としてはテネシー州(28%)がある。
逆に対面施設しか認めていない州もあり、ネブラスカ州(28%)、サウスダコダ州(9%)等になる。
その他の州は基本的にオンライン、対面施設いずれも認めるがこれら2つの類型に異なる税率を適用した州としては、ルイジアナ州(オンライン15%、対面施設10%)、アリゾナ州(オンライン10%、対面施設8%)ニュージャージー州(オンライン14.25%、対面施設9.75%)ミシガン州(オンライン9.65%、対面施設8.48%)、マサチュセッツ州(オンライン20%、対面施設15%)等がある。
オンラインは州全域を対象とし、24時間運営できるため、営業ベースもGGRも当然大きくなると推定されるため、より高い税率を課していることになる。
これに対し、オンライン、対面施設いずれも認めるが、単一税率を適用した州は数としては一番多いのだがコロラド州(10%)、コネチカット州(13.75%)イリノイ州(15%)、インデイアナ州(9.5%)、メリーランド州(15%)、オハイオ州(20%)、ペンシルべニア州(36%、内34%が州で2%は郡)、バージニア州(15%)、ウエストバージニア州(10%)等がある。

いやはや何らかのルールなり考え方のベースがあってもよさそうなものだが、全くのバラバラである。
これらの州の課税の在り方に何らかの法則性や共通性を見出すことは難しい。
中には隣接州との競合を前提に税率を設定したり、類似的な市場規模の州を参考にして税率を取り決めたり、政治的な妥協で取り決めた等という背景を持つ州もあるようだ。
かつ競合する既存の賭博施設(競馬場、既存のカジノ施設、部族カジノ施設)等との共存を図るために、彼らにもスポーツブックの運営許諾権を与えたりするなどの施策も取られたため、州毎に様々な背景や理由のもとに税制の仕組みが考慮された節がある。
あるいはコンサルタントを起用し、許容課税レべルをチェックしたり、潜在的事業者に対し意見公募を発出し、その解答を参考とし、税率を取り決めたりした等という州もある(前述のニューヨーク州)。

尚、対顧客Promotionのためのボーナスやフリープレーの対顧客供与額等を課税対象収入額(Taxable Income)から控除する施策は、顧客をスポーツブックに誘引する効果があるとともに、(州政府の税収を犠牲にして)事業者に市場拡大の誘引を与えるという効果がある。
かつ状況次第ではこれでは州政府による実効税率は下がってしまう。
これを認める州は州法の中で、明示的にこれを記載しているが、必ずしも全ての州で採用されている施策ではない。

(美原 融)

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