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2023-12-04

237.スポーツブッキング 公租公課②申請料・免許料

スポーツブッキング事業は(陸上設置型)対面施設としてこれを担う場合には、既存施設内(例えばカジノ施設、野球場等ボールバーク内の施設や既存競馬場等)に当該施設を設けたり、野球場や競技施設の直近に別途施設を設けたりするが、左程大きな施設整備費用がかかるわけではない。
モバイル・オンラインを前提にこの事業を行う場合は、他の地域で実績のある事業者はソフトウエアを含め既存の枠組みを新たな地域にオーバーラップさせればいいだけで、設備費用は更にかからない。
事業への参入費用は安いのだ。
これは事業からの退出費用も安いことを意味する。
かかる事情により、民間事業者にその施行を委ねる場合には、免許期間は1年から長くても5年程度と短くすることが多い。
免許期間を長く設定し、減価償却期間を十分に長くとるという配慮が不要なためである。
かつ長期の利権を与えるよりは、短期間で免許期間を区切ることにより、事業者の適格性を不断に検証することができる。

民間事業者に一定期間の免許を与え、法的なスポーツブックの施行者とする場合には、民間事業者の申請行為により、当該事業者の廉潔性や財務状況の健全性等を評価した上で、免許を付与して施行を認めている。
市場の大きさを配慮し、免許を付与する事業者の数を制限することが通例となるが、市場の需給に委ね、全く制限しない場合もある。
数を制限する場合には規制機関が事業者の提案・経験・能力・事業実績等を審査し、選定する。
尚免許審査に際し、事業者その株主等の廉潔性の審査が要求されることはカジノ等の場合と同様である。
このため免許申請に際し、一定の申請料を徴収し、かつ廉潔性審査に関しては実費を徴収されることもカジノの場合と変わりない。
この場合、規制機関や監督官庁が申請書類受領に際し、申請料(Application Fee)を徴収することがある。
申請料は本来事業者に対する廉潔性調査等の費用に充当されることが筋であろうが、免許料の内数として処理したり、単純に追加税の性格のものであったりする場合もあれば、全く徴収しない国や地域も多い。

審査後、免許を付与する場合には、免許料(License Fee)を徴収することになる。
申請料は大した金額ではないが、免許料は相当の高い金額をアップフロントで要求されることが通例だ。
かつ免許有効期間終了前に更新を申請できるが、更新料(Renewal Fee)を徴収される。
更新は1年毎、毎年更新料を徴収されるということもある。
米国では州毎に免許料の考え方がバラバラで市場の想定規模や事業者の想定収益レベルの評価や、施行数を限定し、寡占的状況を前提にする場合等の制度的事情等で大きく異なる。
大規模市場とみなされる州や政府の考え方次第では高額の免許料となる。
例えばニューヨーク州は一回払いのオンラインの免許料は期間10年で2500万㌦とべらぼうに高い(一方対面施設の場合には免許料は不要)。
ペンシルベニア州は初期免許料が1000万㌦とこれも極めて高額で、5年有効で更新料は25万㌦になる。
マサチュセッツ州は5年有効の免許料が520万㌦。
ニュージャージー州は初期免許料が10万㌦、年毎の更新が必要で翌年以降年12.5万㌦の更新費用になる。
コネチカット州は、部族は非課税だが、この下で協力する民間運営事業者に対しては、初期免許料は25万㌦、以後毎年10万㌦が課せられる。
ミシガン州は、初期免許料は15万㌦だがこの内の5万㌦は申請料で、毎年免許更新義務があり年5万㌦の負担になる。
この他免許の種類を細分化し、異なる免許料を課す場合もある。
例えばルイジアナ州では運営事業者は申請料を含む初期免許料として75万㌦、5年毎の更新料は50万㌦、この運営事業者と協力するプラットフォーム提供事業者も免許制とし、初期免許料は35万㌦、5年毎の更新料は25万㌦である。
これは既存の賭博事業者(例えば競馬場)と専門的なオンライン事業者との組み合わせを前提とした制度だからという背景があるようだ。
同様にアリゾナ州等も(競馬場やOTB施設等の)Event Waging Operatorは申請料10万㌦、初期免許料75万㌦、年毎更新で年15万㌦となり、(部族やスポーツ施設、チーム等の) Limited Event Waging Operatorは申請料1千㌦、初期免許料1万㌦、年毎更新料5千㌦としている。
その他の事例としてはバージニア州では申請料を主要株主から個別に各5万㌦を徴収し、初期免許料25万㌦、更新は3年毎で20万㌦、西バージニア州では初期免許料10万㌦、5年毎更新で10万㌦等がある。
尚、免許料徴収自体を大きな税収として期待しない米国州もある。
例えばミシシッピ州の免許料は5000㌦、ネバダ州に至っては僅か500㌦に過ぎない。
興味深いのはニューハンプシャー州、ロードアイランド州、デラウエア州等でこれらの州は公的エージェンシーの独占市場であるため、免許料の概念は制度的に存在しない。
民間事業者は公的エージェンシーの協力企業(下請け)として存在するが、これは業務委託契約の対象で、彼らが特権的な免許を保持しているわけではない。

この様にゼロから2500万㌦と大きな差があるのだが、免許料は公的主体にとり、アップフロントでリスク無く確実に徴収できる利権付与に対する対価のようなものだ。
この意味ではこの税収に大きく期待する州と税収はあくまでも粗収益(GGR)に対する課税を主体とし、免許料はあまり徴収する必要はないと判断する州が存在する。
確実に大きな市場で、事業者としてもオンラインであればペイすると判断する場合、想定参加希望企業も多くなり、競争状態が成立し、極めて高い免許料でも事業者の許容範囲に入ってしまうのであろう。
一方相対的に市場規模が限定される国・地域の場合には、アップフロントの高額免許料負担は民間事業者から忌避される可能性が高い。
規模の小さい事業者や新たに市場参入を図る事業者にとり、初期の高額な負担となる免許料を回収するリスクは極めて大きいからである。
よって熾烈な競争環境となる場合、中小企業は財務力のある大企業についていけない環境にあるといえる。

(美原 融)

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