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2023-11-13

234.違法オンラインサイト:日本の事情②

匿名通報制度とは2007年に設けられた制度で、暴力団、組織犯罪、詐欺等に関わる情報提供を24時間電話やWebを通じて市民より受付け、有効な情報提供者にはその貢献度に応じ情報料を支払うという警察庁の制度である。
もっとも実際に窓口を運営しているのは受託民間企業で彼らでは情報は判断できず、通報情報は警察庁が受け、有効と判断する情報を適宜都道府県警察に流し、都道府県警察がフォローする仕組みである。
実際のフォローとなる内偵捜査や摘発を担う実務的な主体はあくまでも都道府県警察になるのが日本の制度になる。
2023年10月には社会問題となっている闇バイトや違法オンライン賭博等も追加的に通報の対象になり、当初は10万円であった情報料も、摘発への貢献度次第で最高100万円迄引き上げられた。
オンライン賭博に関しては、警察庁が公表した説明書によると「オンラインカジノの運営に関与している国内グループのリーダー、中核メンバーに関する情報」、「オンラインカジノの勝ち金の入出金に関与している国内グループのリーダー、中核メンバーに関する情報」等の情報提供を期待している模様である。
警察当局の考え方が垣間見られて、興味深いところだ。
オンライン賭博行為に参加する市民を検挙しようというのではなく、元締めの胴元に関わる主体や決済処理に関わる主体を集中的に摘発・検挙しようという考えになる。
元を押さえれば、末端は自ら消えるからだ。
もっとも「運営に関与している国内グループ」といっても、胴元の海外事業者は国外にいるため、検挙等は不可能で、何らかの形で運営に関与している国内グループとなると、海外運営者と連携・協力し、運営行為に関与している主体ということなのだろう。
オンラインを利用して海外事業者と連携し、パソコン経由で賭博行為を提供する有店舗のインカジは、これも海外オンライン事業者とつるんでいるわけで、運営に関与している主体となる。
このインカジの場合は、口コミで顧客を募ることが多く、情報を得た関係者や損をした顧客等から有効なタレコミ情報を得られることは十分ありうる。
その意味では匿名通報制度はこの分野では有効に機能すると思われる。
その他海外事業者の代理人としてサポート業務を担っている主体やアフィリエートと呼ばれる顧客を募るマーケッテイングを担う主体も(海外からこれらを行う場合には大丈夫かもしれないが)国内でこれを行った場合、何らかの情報提供者が表れてもおかしくないし、状況次第では摘発の対象になりうる。
もっとも今やIP電話とかSNS等ネットを通じて顧客と繋がり、日本語でのサービスを提供している場合も多く、この場合当該主体は日本にいるとは限らず、どこからサービスを提供しているのか解らない場合も多い。
勿論SNS主宰企業やISPに対し、情報開示請求を行い、彼らの協力が得られれば、捜査当局が個人を特定することはいとも簡単にでき、摘発に繋げることは可能だ。

一方、「オンラインの賭け金・勝ち金の入出金に関与しているグループ」となると、一見単純そうだが、そんなに簡単に捕捉できない側面もある。
誰が、どのように勝ち金の入出金に絡んでくるのか、どういう仕組みなのかは傍から見ていても極めて解り難いからだ。
かつ電子決済はE-Commerceの進展に伴い、様々な日常生活に浸透しており、政府に登録した本邦企業もいれば、外国企業もいる。
おまけに決済の手法には、銀行送金、クレジットカード、プリペイドカード、電子財布、電子決済代行、仮想通貨等様々な手法があり、これらを組み合わせる決済手法も存在し、極めて複雑である(例えばクレジットカードを用い、仮想通貨交換所で仮想通貨を購入、これを賭博の決済に用いる等の手法で、こうなると途中からトレースできなくなる)。
かつ、この中には正当な認可や登録を得た事業者といえるのかも不明な企業も存在する。
しっかりとした事業者と素性の解り難い事業者が混在し、まともなE-Commerceの決済と(日本では認められていない)賭博関連決済が混在しているのが現実といえる。

実際の決済は、まず海外オンラインカジノやスポーツブックのサイトにアクセスし、口座登録することから始まる。
様々な決済の選択肢が提示され、その中から例えばクレジットカード、銀行送金、電子財布・電子決済、プリペイドカード等を選び、当該サイトから預託金の支払や決済を行うとともに、賭けでかった場合には、何らかの手法を選択し、預託金を支払ったり、決済したり、現金化(送金)してもらうことになる。
電子財布や電子決済の口座開設のためには、個人情報と居住証明をアップロードさせ、審査を要求するサイトも多い。
クレジットカードは便利な決済手段となるが、クレジットカード会社の中には賭博サイトへ支払うことは問題視しないが、勝ち金を受け取ることは拒否する会社もおり、使いかっての悪いカードもある。
銀行も同様で口座から出金し、支払うことは無頓着だが、(賭博サイトからの)送金・入金に関しては、嫌がる銀行もいる。
マネロンや違法行為の幇助とみなされかねないという危惧があるからなのだろう。
電子ウオレットや決済代行事業者も利用されているが、海外に設立された企業が海外から運営していることも多く、本邦にその支援主体がいるのか否かは利用者から見れば全く解り難い。
要はオンラインカジノの勝ち金の入出金に関与している国内グループのリーダー、中核メンバーに関する情報等と言われても、内部にいる関係者以外は理解できないということに尽きる。
勿論何らかの事案に絡み、警察当局が情報の端緒をつかんだり、タレコミを得たりしたりすることはあるのかもしれない。
但し、かかる事象は滅多に生じるものではない。
この意味では、この分野で匿名通報制度が効果的に機能するか否かはよく見えない。

一方、警察当局が厳格な取り締まりを実施する方向に舵を切ったことは事実の様だ。
違法行為に関与している主体にとっても、またこれに参加しうる市民にとっても警告になり、不法行為を抑止する効果があることは間違いない。

(美原 融)

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