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2023-11-06

233.違法オンラインサイト:日本の事情①

我が国ではオンライン・カジノもオンライン・スポーツブックも認められておらず、これを提供することも、顧客としてこれらに参加することも違法行為になる。
法的には明らかに違法なのだが、現実的にはサイバー空間には日本語による海外からのオンライン・カジノやオンライン・スポーツブックのサイトが幾多も存在し、違法性はないと主張するサイトすら存在する。
違法とはいえ、海外におりサイバー世界で賭博行為を提供する事業者を摘発し、立件できる効果的な手法や制度的枠組みが存在しない以上、不法行為がまかり通っているというのが実態だろう。
この意味では違法だが、奇妙なことに厳格な取り締まりもなされず、社会の中に共生しているということになる。
社会に対するインパクトが左程大きくなければ、これでもいいのだという見解はある。
もっとも世間の耳目を集める不法行為等が表れたり、潜在的危害が表出したりすると批判の声や規制の厳格化を求める声が強くなるのはこの世の仕組みだ。
この非合法市場はかなり拡大し、潜在的危害も大きくなりつつあるというのが現実でもある。
昨年以降警視庁・消費者庁はSNSやネット等を用い「オンライン・カジノは犯罪です」というポスター的な情報宣伝を積極的にやり始めたが、国民に対し、違法行為に手を染めるなという対外的広報と戒告でもあるのだろう。
事実違法行為に対する取り締まりは強化されつつあるともいえる。

違法賭博の内、有店舗違法賭博とは、店舗を構え、顧客を募り、賭博をさせる行為だ。
テーブルや機械を設置し、営業する行為はほぼ間違いなく暴力団組織が関与していることが多く、厳格に摘発の対象になっている。
通常タレコミなどの情報から内偵捜査をしたうえで一斉検挙・現行犯逮捕・証拠押収に至るわけだ。
これは情報があれば立件しやすく、胴元は賭博開帳図利罪、顧客は単純賭博罪になる。
近年暴力団組織はかかる伝統的なやり方を忌避し、パソコンとネット環境を整え、インターネットカフェを装う店舗にて海外オンラインサイトのゲームを提供し、海外事業者とポイントを介して店舗が顧客に賭博を提供する手法が増えている(インカジという)。
投資コストは安く、移動しやすいからだ。
「ハコ替え」という拠点移動により、定期的に場所を変え、雑居ビルの一室を店舗とし、摘発を逃れる様々な仕組みを採用している。
警察当局とはいたちごっこみたいなもので摘発の効率は悪い。
尚、ネットを介在した賭博提供の場合、賭博開帳図利罪では立件が難しく、この場合は、胴元は常習賭博罪として立件する。
最終的な量刑は変わらないため、立証が用意な方法で立件するわけだ。
このインカジは海外オンライン事業者とつるんで、顧客にオンライン賭博をさせるわけで、有店舗でありながら、オンライン賭博という中間的な立ち位置になる。

これに対し、無店舗違法賭博とは、胴元は海外にいるオンライン事業者で、顧客は普通の日本人でパソコンやスマフォから海外サイトにアクセスして賭博行為をする行為になる。
この場合は、摘発をしようにも証拠を集めにくいし、立件が極端に難しくなる。
海外事業者から情報を得られるわけもなく、本邦の顧客にしらを切られればそれまでだ。
そこで注目を浴び、検挙の対象になりつつあるのが、決済代行事業者やアフィリエートと呼ばれる海外事業者と顧客の中間に存在し、決済を代行したり、マーケッテイングを担ったりしている中間的な支援主体だ。
顧客ないしは胴元に対し、違法な賭博行為を幇助しているという犯罪が成立しうるためである。
これもややこしいのは両者が本邦にいれば対処できうるが、外国に存在する場合は対処手法が限られてしまうことにある。
大手オンライン決済事業者は外国に本拠を置き、免許を取得し、オンラインで決済代行を担っている場合が多く、E-Commerce全般に手を広げていることが通例となる。
彼らは大手オンライン事業者と連携し、オンラインの賭博サイトから支払いの選択肢を選べるが、ここからリンクが張られ、決済代行事業者のサイトに誘導され、クレジットカード等で手軽に決済できる仕組みとなっている。
外国にある資金決済代行業者が資金移動業者としての登録なしに、本邦の顧客をとることは資金決済法違反(62条の2)なのだが、摘発の手法も無く、証拠も集まらなければ、対処手法が無い。
本年9月に決済代行会社が常習賭博幇助の疑いで検挙・逮捕される事案が生じたが、極めて特殊なケースだ(Sumo Pay事案)。
この会社は外資系を装ってはいるが、実態の運営主体は日本の会社である。
複数の海外オンライン賭博企業と提携し、支払い手段として同社を選ぶと、個人情報開示も登録も必要なしに、国内の銀行勘定へ振り込む振り込みコードが画面に表示される。
これに基づき顧客自身がオンラインバンキングを用い自分の銀行口座から特定の勘定に国内送金をすれば支払いは完結する。
決済代行会社は別途暗号資産を用いて裏で海外オンライン賭博企業と清算をするという仕組みだ。
顧客に対する出金も同じルートで逆方向に進むことになる。
顧客に対しては国内銀行だけの送金決済で、手数料なし、個人情報開示も不要ということで売り込んだわけで、確かにこれだと顧客は机の上から全てを処理できる。
但し、明らかに為替行為を伴う行為で資金決済法からも違法行為であることは間違いない。
どう立件したのかは不明だが、何らかの手法で顧客による賭博行為参加の事実と証拠をつかみ、顧客21名をまず単純賭博容疑で逮捕(もっとも単なる書類送検でしかない)、同時に決済代行企業の運営責任者とソフト開発者の2名を捕捉し、常習賭博幇助容疑で逮捕したわけである。
賭博行為幇助の対象を(海外オンライン事業者ではなく)国内顧客としたことに新鮮味があるが、顧客は微罪で本来の摘発対象は決済代行事業者であったことは間違いない。
海外のオンライン事業者と決済代行事業者との共犯性の立証が難しく、誰が主宰しているのかも判断できにくいことより、顧客の違法行為を幇助したという理屈で、顧客と決済代行事業者に焦点をあて、証拠固めをしたということなのだろう。
これは決済代行企業の実態が日本企業であったからこそ立件できたのであろうし、資金決済法上も明らかに目に余る違法行為であったという事情もありそうだ。
この様に、摘発の対象は顧客や中間介在者に広がり始めているというのが現実になる。
但し、やはり特殊な事案でもあり、どこまでこの動きが功を奏するのかはまだ明らかではない。

(美原 融)

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