National Council on Gaming Legislation
コラム
  • HOME »
  • »
  • 232.違法オンラインサイト:排除の仕組み

2023-10-30

232.違法オンラインサイト:排除の仕組み

欧州主要国ではカジノ等のゲーミングやスポーツブックをオンラインやモバイル手段を用いて提供する枠組みは、固定陸上施設においてこれらを認める枠組みとは別の制度を設けることが主流になりつつある。
勿論その基本は、当該国の規制当局により認知され、免許を受けた主体のみが、一定国内においてその国民にサービスを提供できることが全ての前提になる(賭博行為はEU法の例外で統一的制度は存在しない。
尚、一部の国、例えば英国、マルタ等は、当該国以外の国・地域に対しサイバー空間を通じサービスを提供することを認めている)。
制度の基本は厳格な規制と免許を受けた事業者をしっかりと管理・監視することにより、不正・違法行為等を排除し、国民を保護し、健全な娯楽としての賭博行為を担保することにある。
オンラインやモバイルはサイバー空間から自由に国民にアクセスを図り、サービスを提供することになるため、免許を取得していない違法な海外の事業者が自国民にオンラインでサービスを提供することはありうるし、国民からすればどの事業者が免許を取得した合法的な事業者なのか、誰が違法な事業者なのかを理解することは難しい。
誰もそこまでチェックした上で遊んでいるわけではないからだ。

さてこれら欧州諸国では、違法インターネットサイトを摘発し、これを排除することは当初は混沌としてなされていなかったが、ここ4~5年の間に様々な制度改定が行われ、厳格な規制が実践されつつある。
これは試行錯誤的に始まった実務的な手法や実践の在り方に効果があると認識され始めたことがその背景にあり、各国とも類似的な手法を採用し、制度的枠組みを構築している。
これら枠組みの基本とは、①規制当局による違法なインターネットサイトの特定とブラックリスト化、その公表とアップデート、違法サイトに関するリスクの周知徹底、②規制当局が認知したブラックリストの対象となるサイトを提供するISP(インターネットサービスプロバイダー)に対しサイトのブロックを要請、必要な場合には行政処分としての排除命令、かかるサイトのプロモーションを図るエージェント、アフィリエイト等に対しても同様の排除命令、③上記で効果がない場合、あるいは上記に付け加えて、関連する仲介資金決済事業者、金融機関等に対する支払差し止め命令、④上記全てを可能にする権限を法令により規制監督機関に付与するという諸施策のパッケージとなる。
国によっては微妙な制度的範囲の差異はあるが、殆どの国がカジノサイトを提供するISP、これを誘導するサーチエンジン、並びにこれをプロモートするアフィリエイトやエージェント等のサイトに注目し、当該賭博サイトの閉鎖命令や当該サイトを支援したり、当該サイトとへのリンクを図ったりするサイト等に対する禁止命令を基本的な政策ツールとしている。
応じない場合には行政罰としての罰金刑が課されることになる。
果たしてISPに対するサイトブロック命令が効果的といえるのかということだが、サイバー世界への入り口でアクセスさせないことには一定の効果がある。
年1000件以上のブロック命令事案が確認されている国もあるほどだ。
軽課税国等から発出される悪意のあるオフショア事業者は、ブラックリスト化されると、即刻ドメイン名を変えたりして、規制機関といたちごっこになるケースもあるという(規制機関にISPサイトブロック命令権限を付与した国はイタリア、ベルギー、スイス等)。
一方、サイトを強制的にブロックし、かつブラックリスト事業者に関わる賭博決済に関与してきた金融機関、資金決済会社等に対し、規制機関が支払停止命令を出せることを規定した国もある(スエーデン、フィンランド等。
デンマークは規制機関が裁判所に申し立て、サイトブロックと支払ブロックを実施するという建付けになる)。
このほかオランダの様に免許を取得する合法サイトの適格要件として、ログイン後はオランダ語の使用(英語等の他言語は不可)、ドメインのエクステンションは.nlのみとし、オランダ人を想定顧客とみなすあらゆる海外からのプロモーションサイト、SNS等も禁止の対象にする等違法事業者の活動を限りなく抑止する手段を併用している国もある。
フランスの場合、当初の制度的手続きは、①あらゆる手段を用い、違法サイト情報を把握し、特定した場合、調書(Proces-Verbal)を作成、②ISPに対し規制機関による催告(Mise en Demeure)の発出、③5日以内に対応が無い場合、規制機関によりパリ司法裁判所への提訴、④裁判所裁判官によるISPに対する当該サイトブロック命令の発出という法的手順であった。
この枠組みは2022年「スポーツ民主化を目的とした2022年3月2日付法」により、裁判所ではなく、規制機関により強い権限を付与し、手順を簡素化し、規制機関が直接ISP等に対しサイトブロック命令を発出し、より効率的、迅速に手順を進められるように改訂された。
この結果4~6ケ月かかったものが1ケ月で処理できるようになったとのことである。

この様に、より効果的なサイトブロックを図るためには、やはり規制機関自体に強い権限を与え、摘発から閉鎖命令まで集中的に規制機関がこれを行うことが理にかなっている。
サイバー空間における違法インターネットサイトをブロックしたり、ブラックリスト化された主体への決済を停止させたりして、顧客を守るという手法は様々な国において実践され、定着しつつある。
規制機関によるかかる行動は、サイバー世界における言論の自由に抵触するのではないかという反対意見もある。
但し、オンライン・モバイル手法による賭博行為を一部でも認める場合には、やはり違法サイトに対する厳格な法の執行がなされなければ意味がない。
米国ではこの問題がなおざりにされ、国としての対応は全くできていない。
我が国では違法なサイトが違法なまま放置され、治外法権的にすきかってな行為をする事業者が存在し、これらが実質的に見逃されているのが実態だ。
2022年以降、違法行為の周知徹底を図る警察庁・消費者庁の動きはあるが、法の執行の在り方に関しては議論すら煮詰まっていないのが現実になる。
これでは世界の趨勢から取り残されることになってしまう可能性が高い。

(美原 融)

Powered by WordPress & BizVektor Theme by Vektor,Inc. technology.
Top