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2023-10-09

229.合法サイトと違法サイトとの奇妙な共存(3)

米国ゲーミング協会(AGA)の公開情報によると米国で違法な海外スポーツブッキングサイトを利用する米国民の支出した額は、これら違法事業者にとってのハンドルとして638.8億㌦、GGRベースで38億㌦に達するという。
これが事実とすればまともな規制市場以上に大きい闇市場(非規制市場)が存在していることを意味する。
これら違法事業者は中南米の軽課税国等からオンラインで米国民にスポーツブックを提供しているのが過半で、かかる行為は米国連邦法上(UIGEA連邦違法インターネットゲーミング執行法)は違法行為になる。
米国ではスポーツブッキングは各州毎に制度を設け、規制の対象とすることが基本だが、これら州法に定められたライセンスを取得せずに、その枠外でスポーツブッキングを州民に提供することは州法上も違法である。
一方連邦法は悪迄も事業者を対象とし、罰則行為を規定しているのみで実際にスポーツブックに参加する消費者(国民)を処罰対象としているわけではない。
州法においても、州内に居住する州民ないしは州内に物理的に滞在する来訪者のみオンラインでの賭博への参加を認めるとあるのが普通で、州民が海外違法サイトにアクセスし、遊興することが違法とは記載していないのが通例である。
この事実から海外オフショアサイトにおけるスポーツブックは違法ではない、安全で州民がこれらに参加しても刑罰の対象になることはないという趣旨の説明が堂々とインターネットの情報サイトには掲載されている。
かかるサイトは何と州政府のサイトからリンクされている場合もあり、これでは通常の州民は州政府も認知したに違いないと錯覚してしまうかもしれない。
実際海外オフショアスポーツブッキングに参加する米国人はほとんどの場合、これらが違法サイトであるという認識はない模様だ。
一方一部の州では、オフショアも含めて州法で認められた以外の手法で消費者がスポーツに賭けることを禁止する規定を設けた州もあれば、消費者は法的に規制されたスポーツブックのみを用いることを規定した州も存在する。
もっともこの程度の一般的法規定では、確かに政策的意図は明確であっても、違法行為を摘発できないというグレーな状況になってしまう。
グレーなマーケットである以上、法の執行も適わないということなのだろう。
どう法の執行ができるかの規定がなければ、現実的には何もできない。
外国からサイバー世界を通じて提供されるスポーツブックを摘発し、外国事業者を起訴した事例は米国の州にはないし、効果的な法執行の手法もないというのが実態だろう。
州法でサイバー世界の主体を規制し、摘発すること等そもそも不可能なのだ。

では連邦政府はどうであろうか。
過去20年を見てみるとオンラインカジノ関連で、FBIが違法行為を摘発していないわけでもないが確実にその動きは鈍いし、案件は限られる。
2000年にAntiguaのWorld Sports Exchangeのオーナーを連邦有線法違反で摘発、2016年にはNYのCosa Nostraマフィアを一網打尽にしたが、ゆすり、たかり、マネロン等が摘発の理由でオンラインによる違法スポーツブッキングにも絡んでいたとのことだ。
もっとも2009年には海外違法オンライン事業者による違法な活動の宣伝・広告に加担したとして、Microsoft, Google, 並びにYahooが訴追され、$31.5 millionの罰金支払いで司法省と和解した。
また、スポーツ関連ニュース社のSporting Newsは, やはりオフショアの違法事業者からの広告を実施したとして、起訴され、$7.2 millionの罰金支払いで司法省と和解している。
摘発の対象は事業者に留まらず、その支援者・支援行為に及んでいることになる。
但し、極めて散発的な法の執行しかなされていないように見えるのは、関連連邦法規が旧態依然のままで整合性がとれておらず、犯罪行為として摘発できる要件具備が単純ではないということに尽きる。
だからこそ摘発に何年もかかっており、訴因も複雑で、そもそも摘発された事例があまりにも少ない。
外部から見た場合、必ずしも効果的な法の執行がなされているとは、到底思われないのが現実だろう。
これではオフショアからのスポーツブッキングに何ら違法性はないと米国市民が思い込んでしまうのもここにその背景があるのかもしれない。

実際のプラットフォームは例えばBovada, Bet Online, My Bookie等は今やネット上では著名な大企業になってしまっているが、勿論彼らは米国から見た場合、海外に居住する違法オンライン事業者である。
何と一部は日本語のサイトで日本の顧客も募っているため、知っている人も多いかもしれない。
顧客から見た場合、彼らのサイトは合法的な許諾事業者のプラットフォームと類似的で大差はない。
一方、規制外の彼らは米国では税も払わず、システムの健全性や公平性、清廉潔癖性は不明、マネーロンダリング対応措置を実施しているとも思えず、年齢チェック・本人確認手順も真面目に行っているかも不明、個人情報保護の厳格さも、依存症対応施策もやっているのか否かもよくわからない。
税を支払っていない以上、当たり前だが、ボーナスやプロモーションも積極的で、かつオッズも顧客に取り若干魅力的であることも多い。
顧客が魅かれるわけである。
もっとも正当な免許を取得している合法事業者からすればとんでもない話であって、かかるグレーな事業者が市場に共存している場合、当然ライセンスの価値が損なわれることになり、税収遺漏、消費者にとっての不利益等の否定的側面が生じており、より厳格な法の執行を強く求めることは当然のことになる。

サイバー世界への対応は明らかに州境を超える。
連邦法として国が統一的な基準のもとに、厳格な法の執行への体制と制度を設けることが本来あるべき姿なのだが、動きはあれども中々現実化できないでいる。
現在の州毎の制度を尊重しつつ、連邦法として何らかの共通的な規制を設けるというハードルは極めて高い。

(美原 融)

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