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2022-08-29

172.スポーツブッキング ⑥プロとアマ(2)プロスポーツ団体・リーグ・チームとの関係

プロスポーツを全くの外側からその帰結や推移を賭博行為の対象にしようとする場合、誰が事業者であれ、かつまた如何なる仕組みを構築するにせよ、賭博の主催者が関連スポーツ団体・リーグ・チームの了承を得ることはごく自然な行動でもある。
スポーツ試合を対象とし、外部で付加価値を向上させ、その価値を商品化しているとも考えられるため、かってに賭博行為の対象とすることは当該スポーツ団体・リーグ・チーム等の権利の侵害と見なされないこともないからである。
これはかかる権利が法的に保護されているか否かに拘わらず、スポーツブッキングの主催者と対象となるプロスポーツ種の団体・リーグ・チーム等との間で何等かの関係を構築する必要があることを示唆している。
これには様々なアプローチがある。

一つのアプローチとしては、原則あらゆるスポーツ種をスポーツブッキングの対象にできるという前提を制度としてとりながら、関連するスポーツ団体・組織から規制機関に対し、当該スポーツ種やスポーツ試合を賭博行為の対象から外したり、賭け行為に一定の制限をかけたり、条件を付けたりすることを要請できる権利を認める手法である(例:マサチュセッツ州)。
一種のオプトアウト(Opt-out)の権利となり、自分達が主催するスポーツ種やスポーツ試合が賭博行為の対象とされた場合、その行為が①公共政策や公益に反する場合、②消費者に不公平をもたらす場合、③スポーツ行為の清廉潔癖性を損ねうる場合、④スポーツを担う組織や選手の清廉潔癖性に問題を生じかねない場合等を理由とし、規制機関に対し、全てないしは一部の禁止ないしは賭博行為自体に制限を付す要請ができる。
規制機関はスポーツブッキング主催者の意向を聴取し、この要請を認めることができるわけだ。
対象となることに反対する場合には、当該スポーツ団体・組織の意図を尊重することになるが、そもそも要請が無い場合には、賭博行為の対象となることを認めたということになる。

別のアプローチとしては、対象となるスポーツ団体・リーグ・チームからチームや選手の正式なデータ履歴等を使用する権利を合意を交渉により取得することを制度としてスポーツブッキング事業者に義務づける方法になる。
試合に関する勝ち負けの帰結を試合の前に賭ける賭け行為をTier 1の賭け事と呼称し、試合開催後に賭け事が始まる賭け行為をTier 2の賭け事(In-Playともいう)と呼称するが、前者の賭け事に関しては公知の事実となる情報をベースとするため特段の規定を設けないが、後者を賭け事の対象とする場合、オッズ設定のためには事前にチームや選手の詳細なPerformance履歴データ等の分析が必要となり、当該スポーツ団体・組織から正式なデータ履歴等を使用する合意を交渉により取得することを制度として義務づけるわけだ。
賭け事としてはTier 1よりもTier 2の方が人気も高く、売り上げも伸びる。
事業者としては制度的に認められる限り、Tier1/2両方の実施を志向するはずで、この場合、予め当該スポーツ団体・組織と交渉し、データ履歴等の使用につき、対価を含めて合意することが実施する要件になってしまう。
データの使用権とその付与という形でスポーツ団体・組織とスポーツブッキング主催者の関係を制度的に構築していることになる。
米国では制度の枠組みとしてこれを規定している州が今のところ19州存在する。
それ以外の州ではわざわざ制度として規定していないだけで、関係構築は市場に委ね、実務的に市場においてかかる関係が発生している。
そのほか特段Tier 2に拘らず、Tier1/Tier2のリーグデータ履歴使用やチームや選手の画像データの加工・分析の付加価値を加えたデータをスポーツブッキング主催者が利用すると共に、スポーツ団体や組織に同じ情報を提し、共有することでお互いがメリットを取るという関係も存在する。
データの分析・加工とその二次データの共有に関しては、両者のニーズがマッチするという事象が生じているわけだ。

一方、スポーツを主催する団体・組織が自らのスポーツ種を賭博の対象に付す権利を知的所有権と同類の権利として、制度的に認める国もある(例:フランス、オーストラリア)。
この場合には、スポーツブッキングの主催者は、どういう条件で賭博の対象にすることができるかを各スポーツ団体・組織と交渉し、予め合意を取得する必要があることになる。
対象はあくまでも国内におけるスポーツ種・スポーツ試合となるが、外国で開催される国際試合の場合には関連団体と類似的な取り決めを約定することが慣行としてなされている様だ。
権利としての対抗要件が制度的に具備されている考えでもあるが、関連するスポーツ団体・組織が賭け事の対象となることを拒否すれば、スポーツブッキングの対象になることはありえないわけで、この意味では公平な仕組みであるともいえる。

尚、制度により細かい規制をすることなく、逆にスポーツブッキングの主催者とスポーツ団体・組織との自由な商業的取引を制度的に認める国・地域もでててきている(例:マサチュセッツ州、バージニア州等)。
この場合、例えばスポーツブッキング事業者とスポーツ団体・リーグ・チームとがスポーツブッキングの主催・運営に関し、利益分担契約をも締結できるとされている。
こうなるとスポーツ団体・リーグ・組織が自らスポーツブッキングを主催することになってしまうが、制度上はスポーツ団体・リーグ等は免許取得は不要とされている。
同様に最近バージニア州ではスポーツブッキング事業者と州内フットボールチームとがパートナーシップを組成、連名で規制当局に免許を申請しており、近日中に共同でスポーツブッキングを主催することが現実になりそうである。
スポーツ団体・組織がブッキングの結果に影響力を行使することはない仕組みになっているということが前提の様だ。
確かに一理はあるのだが、これが全ての国・地域において認められる考えとなるかに関しては異論もある。
果たしてオッズの設定に関し、本当に公平性が保持され、消費者のインタレストは守られるのかどうか、利害関係者間で情報隔壁がしっかりなされ、スポーツブッキングの独立性と公正さが担保できるのか等心配種もあると邪推する。

(美原 融)

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