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2023-08-07

220.スポーツブッキング・NCAA賭博関連内規改訂

米国において大学スポーツを統括する全米大学体育協会(NCAA)は定期的に傘下大学の学生を対象に大がかりなアンケート調査を実施している。
大学スポーツの振興、認知度向上、学生意識・動向調査等を実施することにより大学とスポーツの在り方を調査研究しているのだ。
2023年春に行われたアンケート調査はスポーツ賭博行為に関する学生の意識・行動調査(Sports Betting Activities Survey April 2023)になる。
18歳から22歳までの一般大学生のランドム調査だ。
その結果として対象学生の58%が年に一回はスポーツベッテイングをすると回答、内数回となると37%、3回以上が24%、4回以上は11%になる。
賭け金額は79%が$1から$50迄で高額ではなく、単なる遊びの類に近い。
その動機は金を儲けるためが59.2%、チームや選手のファンだから賭けるが40.8%となる。
賭ける種類はプロ・大学スポーツ各種、手法として経験ありとしたのはLive-inが60.6%、Money-Lineが44.3%、Over/Underが40.4%である。
この報告は様々な観点からアンケートをとり分析しているのだが、最近の米国大学生の意識や行動を垣間見ることができる。
今やスマフォやコンピュータを持っていない学生等皆無であろうし、メールやチャット、メッセージ等でコミュニケーションを図ることも、スマフォを勉学や調査、遊び、買い物に使うことも極めて日常的な姿になりつつある。
スポーツベッテイングも上記アンケート調査を見る限り、普通の学生が、普通の行動として、少額の賭け金で、スポーツを楽しみながら、その推移や結果にで賭けるという姿が浮かび上がってくる。
今や普通の大学生にとって、時間があるときに、あるいはライブでスポーツを観戦しながら、そのスポーツに少額の金を賭けるということは極めて日常的な普通の姿であることが解る。
尚、頻度や賭け金額からみると所謂依存症的な症状を呈する賭け方をする学生はこの意識調査からは浮かび上がってこない。

州によっても異なるが、スポーツブッキングへの参加は21歳以上と規定する州が多い。
この前提からすると、制度上一部の高学年生はOKだが、低学年生はダメとなるはずだが、上記意識調査は対象者の年齢や遵法意識まで突っ込んで聞いているわけではない。
学生も銀行口座からスマフォ決済することは日常的で、電子マネーを使ったり、親から供与されたりした(家族用)クレジットカード等をも所持している場合も多い。
かつ全ての合法サイト(スポーツブッキングのプラットフォーム)で確実に本人確認により年齢確認をしているのか怪しい部分もある。
違法海外サイトに至っては、年齢確認等は自己申告で殆ど何もやっていないのが実態だ。
これら現実を見ると、何とか未成年・学生でも遊べてしまうのだろう。
今やネットやストリーミングでスポーツ試合を観戦しようとするとあらゆるスポーツベッテイングへの勧誘や広告が表示される。
みんながやっているならば、では少額でも試しにやってみるかという大学生がでてくるのは避けられない事象なのかもしれない。

さて賭け事の対象になる試合に参加する大学スポーツ選手は、NCAAの規則により厳格に賭博行為への参加が禁止されている。
従前からのルールは自分が参加する試合に影響を与える情報を第三者に提供する選手は試合への参加適格性をはく奪(永久喪失もある)、また自分が参加する試合や同じ大学のその他のスポーツ試合やプロの試合に単純に賭けただけ等の規則違反が露見した場合は1年間フルシーズンの参加適格性はく奪・出場停止処分というものであった。
これら対象は選手、コーチ、監督、大学の関連スポーツ従事者も同様の処分になる。
要は賭博への参加等絶対ダメ、参加資格を喪失し、スポーツ試合に出られなくなるということで、学生に対してはNCAA資格取得時点から様々な教育活動がNCAA/各大学組織により不断に行われている。

このNCAA規則だが上記規則はスポーツブッキングが解禁となる2019年以前のものである。
ところが、本年春に初めてこれが改訂され、5月3日以降実施されている。
八百長・不正・内部情報提供等は適格性の永久はく奪に繋がりうることは同一である。
一方、自分がやっている同じスポーツ種の他の大学チームに賭けた選手はシーズン中の参加適格性の50%をはく奪。
罰則は賭け金に比例して決めることとし、賭け金$200以下は参加適格性は不問、$200から$500迄はシーズン中の10%の参加適格性をはく奪、$500から$800迄はシーズンの30%の参加適格性をはく奪になる。
尚金額の如何に拘わらず、これら全ての場合につき再教育プログラムへの参加義務が課される。
$800以上の場合は、罰則等はNCAAが判断することになり、最悪永久的な参加適格性はく奪もありうる。
要は違反行為のメッシュをより細かく定義し、若干寛大な規則内容としたことになる。
自分が参加する試合や自分のチーム、自分の大学の他のスポーツ試合等は厳格なルールとするが、例えばプロスポーツ試合の賭け事や他の大学の同じ種類のスポーツ試合、別の種類のスポーツ試合等になると、賭け事に参加してもかなり寛大な措置としたわけだ。
少なくとも$200以下の賭けならば、叱責と再教育プログラムを受けるにすぎない。
規制改訂に至る説明としては、「既に全米各地でプロ・アマのスポーツ試合に関する賭け事が制度化され、認められており、かつ賭け事のプラットフォームへの学生によるアクセスが容易になっている現実を踏まえた近代化。
学生による悪意の無い単純な規則違反はより寛容にし、若者にチャンスを与える」ということらしい。
大学生スポーツ選手も普通の大学生も、同じ大学生で同じような行動をとるため、スポーツ選手であっても、ちょっとした時間がある時に(ばれやしないと)興味あるプロスポーツや大学スポーツに賭けてしまうという事案が確実に増えているということなのだろう。
大学当局に露見して、規則違反となるのは一部かもしれないし、より現実的・寛容的な罰則とし、教育を徹底するというのが現NCAAの方針と想定されている。
ミクロのレベルではおそらく賭博参加は学生の中で蔓延しているのだ。
但し、低額、頻度も多くない、自分や自分の大学が関係していなければ単なる暇つぶしで、不正等していないのに、なぜ学生スポーツ選手だけがやってはいけないのかという声が聞こえてきそうである。

(美原 融)

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