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2023-06-19

213.スポーツブッキング ㊼八百長・いかさま・不正への対策?(7)我が国の事情

公営競技関連諸法では、競技に直接・間接的に係る主体による不正・いかさま・八百長等の行為がその対価として利益供与を伴う場合には違法行為(例えば競馬法第31条、32条で懲役・罰金刑の対象)になる。
考えてみれば当たり前の話で、賭け事の対象となる競技の帰結が何等かの意図的な操作により歪められたとすれば、賭け行為そのものが無効になると共に、ファンの離反を招き、公営賭博自体が存続できなくなるからだ。
公営競技は、賭博行為のためだけになされるスポーツ試合という直接的なリンケージが存在するため、これは当然だろう。
一方、スポーツ振興投票法の対象となるプロサッカーやプロバスケットボールの場合は、賭け行為はスポーツ試合とは関係無く外部でなされる行為になるが、同様に違法行為が規定され、懲役・罰金刑の対象になる(スポーツ振興法第32条)。
尚IR整備法におけるカジノに関しても、カジノ免許事業者、運営関係者、顧客双方に対し、公平、公正であるべきカジノ行為を損ねる行為に際しては広範囲な規制・禁止行為とこれを遵守せしめる監視・監督の仕組みがあり、単純な形では不正行為は実現できない仕組みになっている。
かつ賭博行為に関わる当事者・関係者は賭け金行為への参加は禁止されている。
これもカジノ行為自体が賭博行為であるため当然といえば当然だ。

では、賭博行為の対象となっていないアマチュア・プロスポーツにおける国内試合や国際試合等において、試合の推移や結果を歪めかねない不正行為や、予め一定の不正行為を仕組む八百長等の行為等が生じた場合にはどうなるのであろうか。
現状我が国において、これらを犯罪行為として処罰の対象とする法律は存在しない。
我が国ではスポーツ庁が音頭をとり、国内の各種スポーツ団体・組織(全国的組織、地方組織、大学、高校等のアマチュア、プロスポーツを含む)が個別にガバナンスコード(遵守すべき倫理規定、スポーツインテグリテイの確保)等を設ける政策的指導をしており、この枠組みの中で一種の自主規制としてスポーツにおける不正行為等を禁止し、これを根絶する規範を設けている。
企業組織のガバナンスと同様に、自主規制により健全なスポーツ活動を維持していくという試みでもある。
この内部規律に基づき、選手やスポーツ関係者等がこの規範に逸脱する行為をした場合には、出場停止、当該団体・組織からの追放等という厳しい制裁を課すことが通例だ。
アマチュアスポーツは本来強制されない、自主的な活動でもあり、自主規制が適切という考え方なのだろう。
プロスポーツもプロ選手のプライドとして類似的な倫理的行動規範を自主的に設けているというのが実態になる。
尚、不正の中でも(アマチュア選手により多く散見される)ドーピングに関しては、欧米先進諸国では長年の防止のための議論や国際条約、国際的な防止の枠組みやこれに伴う各国の制度規範等が存在し、わが国においてもこれを準拠する形でスポーツ庁のスポーツ審議会等で問題が議論され、平成30年10月に「スポーツにおけるドーピングの防止活動の推進に関する法律」が成立し、施行されている。
この法律によりドーピングは禁止行為として法律違反事項となったが、刑事罰の導入は見送られた。
出場停止や資格停止、追放等の個別のスポーツ団体・組織による規律や処分が既に存在しているという理由による。
スポーツに関わる不正行為に関しては、刑事罰はそぐわず、あくまでも自主規制に留めたいとする関係者の思いがあったと推察できる。

さて全てではないにせよ、もし一部のプロスポーツ、アマチュアスポーツが、スポーツ行為の外側で、追加的にスポーツブッキング(賭博行為)の対象になった場合で、スポーツ試合の遂行・結果を人為的に操作する何等かの行為が関係者により行われるとしたならば、どう対処すべきなのであろうか。
スポーツ振興法の前例に倣うとするならば、個別許諾法の枠組みの中で認められると、当該法に規定された罰則規定が対象となるスポーツ種に自動的に適用されるということになる。
スポーツ試合は選手のスキルのより優劣が競われる試合であることが全ての前提であり、選手等の関係者が不正や八百長等に関与していたり、直接これらの行為に関与していなくとも命的な影響を与えたりする行為(内部情報の遺漏、外部圧力による作為・不作為等)等の場合には、刑罰の対象になるとともに、当該スポーツ組織からの制裁は免れない。
もっとも不正行為がなされているか否かのチェックやモニタリング、あるいは法の執行をどう担保するかの考え方は法令には記載が無く、各スポーツ団体の自主規制と自己監視に委ねているというのが実態なのだろう。
これは性善説に基づき、不正や八百長はまず起こらないという発想からの制度構築になる。
認可主務官庁は存在するが規制機関は存在しない。
果たしてかかる仕組みで十分か否かに関しては議論が必要だ。

如何なる方向で我が国の制度を考えるかは、スポーツ関連団体やスポーツ庁の意向もあるのだろう。
今のままの仕組みで将来に亘り、整合性のある仕組みとなるのか、あるいは新たな仕組みを志向すべきかが論点になる。
バラバラなスポーツ団体毎の自主的な規制ではなく、あらゆるスポーツ種に跨る共通的な規範を設け、その遵守・監視を担う国の機関を設けている国もある。
もしスポーツブッキングを認めるという政策的意思が生じた場合、そもそもスポーツ界として、この問題にどう対処すべきなのかという問題が浮上してくる。
スポーツブッキングは特異な存在として、関連するスポーツ団体と個別で協力連携の関係を構築し、その枠組みで問題解決の方向性を志向すべきなのか、あるいは他国と同様に国とスポーツ界全体の在り方を新しく構築していくべきなのであろうか。
但し、日本のアマチュアスポーツ団体・組織は中央組織や地方組織等に分かれ、スポーツ庁が全体を束ねているとはいえかなり複雑だ。
プロスポーツ界も一丸ではないし、日本野球機構(プロの団体)等は日本プロスポーツ協会がガバナンスやコンプライアンス上問題があるとして、脱退している。
これでは上部組織に纏めさせること等不可能に近い。
要は、単純にスポーツ界は纏まらないかもしれない事情が我が国にはありそうだ。
この現実を前提とし、スポーツブッキングの制度を考えるというのは結構複雑な思考を必要とする。

(美原 融)

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