National Council on Gaming Legislation
コラム
  • HOME »
  • »
  • 206.スポーツブッキング ㊵リスクのあるスポーツや賭博行為とは?

2023-05-01

206.スポーツブッキング ㊵リスクのあるスポーツや賭博行為とは?

一般論として、不正やいかさま・八百長が成立しやすいスポーツ種やスポーツ関連賭博の賭け方は存在する。
例えば個人同士の試合となるテニス等のスポーツ試合や、審判の評価により得点が決まる体操やフィギュアスケート等のスポーツ競技等だ。
選手個人の不正行為はまずばれにくい。
審判員の評価が絡む試合で、審判員による裁量的な評価がなされたとしても、これを不正として特定することもかなり難しい。
勿論最近は技術の難易度等を点数評価で個別採点し、集計することで透明化したり、複数審判制を採用したりして、おかしな評価がなされない工夫が凝らされてはいる。

賭け事の種類によっても不正やいかさまが成立しやすいものがある。
試合の勝ち負けに関係の無い賭け事の在り方をSide Bet(サイドベット)と呼称するが、これは不正やいかさまが起こりやすい賭け方になると考えられている。
例えば次のゴールはどちらのチームが入れるかとか、コーナーキックやペナルティの数を当てるとか、キックオフするのはどのチームか等の賭けになる。
個人がその行為の帰結を操作しやすいし、やったところで誰もその悪意を証明できない。
試合の勝敗には殆んど関係ない故、例えやったところで選手にとっても罪悪感は少ない。
こうなると、不正が起こるリスクは高いということになる。

その他試合がなされている間の短時間の間にリアルタイムで提供される賭博行為も不正が起こるリスクは高いとされている。
Live Betting(ライブベッテイング)とかIn-PlayあるいはIn the Run Betting等と呼称される賭け方だ。
これには勝敗の推移や帰結が賭けの対象になることもあれば勝敗の帰結には関係のないSide Betがその対象になることもある。
試合の推移は状況に応じてころころ変わるため、通常オッズが提供されている時間は極めて短時間になることがその特徴だ。
よって不正やいかさまが行われても露見しにくかったり、因果関係を特定できなかったりする場合が多いといわれている。

また外部組織による不正行為の対象・標的になりやすいスポーツ種も存在する。
例えば二部(二次)リーグ等、あまり注目を集めないスポーツ試合、アマチュアによるスポーツ試合、未成年を試合参加者に含むスポーツ試合等だ。
注目を集めず、賭け事としてもあまりポピュラーでない場合、試合の推移や結果はどうなるかわかりにくい場合が多く、操作がしやすいという特徴がある。
これに目をつけ、組織悪等の外部組織が不正行為の標的にするということが起こりやすいとされている。

あらゆるスポーツ種をスポーツブッキングの対象としてしまう場合、リスクの高いスポーツ種や賭け方がその中に入ってしまい、スポーツやスポーツブッキングに廉潔性の課題を生じかねさせない。
よってこれらは賭博行為の対象として禁止すべきという意見は欧州の国際機関や国際スポーツ組織には根強く存在する。
例えば、欧州議会は、Side Betting, Live Betting,未成年参加スポーツを対象とする賭博のすべてを禁止対象とすることを加盟各国に勧告している(2013年3月13日議決)。
また、スポーツ競技の不正に関する欧州評議会は試合の不正行為を防止するために対象となるスポーツブッキングの種類と供給を制限することを推奨している(2014年7月9日)。
要はリスクのあるスポーツ試合や賭け方は悪を誘引する。
よってこれらを禁止するか制限すべきという考え方になる。
この推奨に沿った行動をとった国もあれば、必ずしも規制の対象にしていない国等も存在し、状況はEU各国毎に異なるのが実態である。

一方これら見解に対し、業界団体やスポーツアナリテイックス企業は膨大な実際の賭け金行動のデータと露見された不正行為との関係を検証し、異なる見解を提示している。
確かに一般論としては不正や違法行為を生じさせかねない潜在的リスクがあることは事実なのだが、実際に外部の犯罪組織や組織悪がスポーツ試合に介在するか否かに関しては別の課題とする考えだ。
スポーツ試合に関するいかさま、不正、八百長に関しては必ず巨額の資金が動くことが前提で、少額でちまちまやるようでは犯罪組織にとり全くペイしない行為になってしまう。
通常想定される犯罪組織による賭け金行動とは逆の行動を巨額の金額ではってみたり、同じ取引の反復を短時間で繰り返したりすることになる。
問題は目立たないように悪事をする場合には、賭け金総額が巨額になる市場や賭け方のセグメントを選ぶ必要があるということだ。
目立ってしまうと悪事がばれる可能性が高いからである。
人気のない目立たない試合や、賭け金総額(Liquidityともいう)が左程でもない試合等はたとえ不正やいかさまがしやすくとも、悪事が露見してしまう可能性が高いのだ。
賭け金総額が左程でもない賭けの場合には、大きな金額で賭けると、胴元がオッズを変えてしまう行為を誘引し、胴元がおかしな取引かもしれないと判断する可能性は高い。
ところが賭け金総額が巨額な場合の賭け行為は、かなりの大金を動かしても全く目立たず胴元がオッズを変えることもない。
要は確実にばれにくいことになり、組織悪の不正対象は確実に限定されるという結論になる。
勿論国によっては市場や顧客の行動は違うのであろうが、EU諸国では、顧客による賭け行為の過半はチームの勝ち負けや総得点数、得点差に集中し、Side BetやLive Betの賭け金総額はかなり小さい。
よって悪事が露見する可能性が高く、潜在的リスクは確かにあるのだが、顕在化するリスクとは言えず、このセグメントでは不正・いかさま・八百長は殆ど無いというのが欧州諸国の現状の様だ。
では米国市場ではどうなのかが気になるところだが、現在に至るまでデータに基づいた実証的な研究は見たことが無い。

(美原 融)

Powered by WordPress & BizVektor Theme by Vektor,Inc. technology.
Top