National Council on Gaming Legislation
コラム
  • HOME »
  • »
  • 205.スポーツブッキング ㊴なぜ不正は起こるのか?2)動機

2023-04-24

205.スポーツブッキング ㊴なぜ不正は起こるのか?2)動機

スポーツ行為そのものに関わる不正・いかさま・八百長行為やスポーツ行為の枠外で行われるスポーツブッキング(ベッテイング)に不正・いかさまが生じるにはそれなりの動機がある。
如何なる動機が考えられるのであろうか?

不正・いかさまの種類にはスポーツ行為そのものの推移や結果を意図的に操作するというスポーツ行為に内在する不正・いかさま・八百長等があるとともに、スポーツ行為の枠外でスポーツ試合に関連してなされるスポーツブッキング(ベッテイング)に絡む不正・いかさま行為がある。
前者は狭義の意味でのスポーツ試合の不正行為で、選手・チーム・スポーツ関係者等が様々な手法で直接的・間接的に関与し、意図的に試合の推移や帰結に何らかの影響力を行使することが特徴だ。
これは試合関係者のみが関与しうるリスクになり、スポーツブッキング事業者にとっては管理できえないリスク事象になる。
一方後者は、選手・チーム・スポーツ関係者等にとり、不正行為への直接の関係性は無く、スポーツ行為の周辺で第三者がスポーツの推移や帰結に関し、金銭を賭けの対象とするようなベッテイング行為が行われる際、これに絡んで様々な不正やいかさまが行われる行為になる。
スポーツ関係者からすれば、これは勝手に外部で行われている行為に過ぎず、管理もコントロールもできないリスクになる。
スポーツの公正性には何ら関係無い行為ということだろう。
勿論公正なゲームの提供を歪めているという意味では違法行為でもある。
尚、これら二つの類型が絡み合う行為もある。
スポーツ外で行われる賭け事(Betting/Booking)を有利に運ぶため、スポーツ試合の帰趨そのものを変えてしまうように、第三者がスポーツ関係者に金品を餌にして不正・八百長等を働きかける行為等だ。

動機という観点から考えると、不正行為をもたらす誘引の大きな分類としては、①金銭的誘引(排他的に金銭的便益を確保したいということが動機となる場合)と、②非金銭的誘引(金銭的便益外の何らかの便益を確保したいということが動機となる場合)の二つがある。
金銭的誘引とは、金品を対価として得られることでスポーツ関係者を不正行為に巻き込むこと、あるいはスポーツブッキングにおいて顧客やスポーツブッキング事業者をだますことで不正に預託金や勝ち金を取得すること等の行為になる。
これに対し、非金銭的誘引とは何らかの理由により第三者からの圧力、強要等によりスポーツ試合関係者が不正行為をせざるを得ないような状況に追い込まれ行う行為、あるいは純粋個人・チームの固有の事情により、何らかの不正行為をせざるを得ないような状況に置かれ、自らの意思で行う行為の二つに分けられる。
金銭的誘引はスポーツ関連当事者の場合には贈収賄であったり、借金苦による金銭取得であったりして、その動機は極めてわかりやすい。
一方、スポーツブッキング事業者の場合は、システムやルール、内部情報等を悪用し、内部の職員あるいは彼らとつるんだ第三者が不正手段で得た情報をもとに預託金や勝ち金を窃盗・横領するという図式に近く、これも解りやすい。
これに対し、非金銭的誘引は解りにくい。
動機との因果関係が目に見えにくいからだ。
これには、例えば、スポーツ試合の仕組みやルール等を悪用し、優位な地位を確保したいとする動機等がこれにあたる。
閉鎖的な個人対決試合で、一定のシーズン毎に前回の成績に基づき順位が変わる場合のスポーツで一年の間に数回同じような競争試合が行われるスポーツ種を考えて欲しい。
例えば大相撲等だ。
この場合、選手間で各シーズンをまたいで金銭の授受を伴わない勝ち負けの貸し借りをしたり、金銭により勝ち負けを売買したりすること等がおこりうる。
これは単純な八百長にすぎないのだが、あくまでも内規違反の不正行為にすぎない。
顧客に被害者がでるわけでもなく、外部から見ても単純には解りづらい構図になる。
この他、スポーツ試合の仕組みやルールを悪用し、組織として意図的に試合に負けるという不正行為等もある。
米国のMLBではシーズン最下位のチームは時期シーズンに際し、ドラフト上位権を取得することができる。
シーズン後半で確実に最下位に近いポジションにいる場合、以後の試合を意図的に負け、確実に最下位のポジションを確保し、有望な選手をドラフトで確保し、次のリーグ試合に備えるというような行為になる。
金銭の授受等は存在しないのだが、明らかにリーグのルール違反、不正行為であるといえる。
勿論かかる内部情報を利用し、スポーツブッキングで不正行為が行われるとすれば、これは犯罪となりかねない。

尚、非金銭的誘引を引き起こす要因として、金銭的誘引が背景にあることもある。
逆に金銭的誘引の背景として、非金銭的誘引があるという事情もありうる。
不正・いかさま・八百長は基本的には金銭的誘引・経済的動機がその根本にあることが多いのだが、現実には様々な要因や背景が絡み合っているということなのだろう。
かつ、スポーツ試合に関係する当事者に関わる要因と、スポーツ試合とは直接関係のない第三者が関わる要因とがあるため、これも関係性を複雑にする。
スポーツ界はガバナンスが弱く、法規制も、効果的なスポーツ関連賭博の規制や法の執行も脆弱なケースが多いとみなされており、国際化した暴力団組織やテロ組織にとって格好のターゲットになりうる可能性が高い。
犯罪組織による金銭的誘引によりスポーツ試合やスポーツブッキングは標的にされやすいのだ。
巨額の資金が行き来する業は、関連する組織のガバナンスの体制や関係者の脇が甘いと組織悪の餌食になりやすいことは間違いない。

(美原 融)

Powered by WordPress & BizVektor Theme by Vektor,Inc. technology.
Top