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2023-04-10

203.スポーツブッキング ㊲不正の在り方3)Court SidingとData Scouting

制度上の違法行為とはいえないまでもスポーツ試合会場内での不適切行為や知的所有権の侵害等とされる行為がスポーツブッキングでは生じることがある。
それがコートサイデイングとかデータスカウテイングと呼ばれる行為だ。
SNSによる試合のストリーミングに人気が生じてきたために付随的に生じるようになった行為と言えるかもしれない。

コートサイデイング(Court Siding)とは例えばテニス等のリアルプレーに際し、コート際の観客席に陣取り、試合の推移や進捗(特に得点情報)をスマフォやコンピューター等の通信手段を通じ、外部にいる特定のスポーツブッキングの顧客(ギャンブラー)にリアルタイムで伝えるという役割を担っている。
対象となる賭け事はIn-playで例えばあと一回勝てばセットで勝つという風な状況にあったとき、勝ち負けを瞬時に外部の顧客に伝えるわけだ。
胴元(スポーツブック事業者)も同時にこの試合の推移に関わる情報をリアルタイムでデータ供給会社経由把握しているのだが、状況や採用するシステム次第では胴元がオッズを変える迄に数秒単位の時間がかかることもありうる。
この時間差を悪用し、胴元がオッズを変える、あるいはストップする直前に、旧状態のオッズを買うことができる。
僅か数秒でも胴元より早い時点で有利な情報を把握することができれば、胴元が動き出す前にオッズをオンラインで購入し、確実に有利な情報をメリットに変えることができる。
これはあくまでもスポーツブッキング事業者とその顧客との関係になるため、一見何が問題となるのか解かりにくいが、スポーツ会場内で電子的手段等を用いて、試合の状況を実況で外部者に報告・連絡することはチケット販売に関するスポーツ試合主催者が取り決めた約款規定に違反する。
かつスポーツブッキング事業者が取得するデータ等はスポーツリーグ等がスポーツデータ収集・供給会社に対し、契約に基づき提供する正式なものしかないのだが、これをプライベートな形でかってに情報を取得し、外部者に販売しているということになるのだろう。
観戦チケット販売約款に対する違反行為であるとはいえ、この事実のみで犯罪を構成しうるのかという点に関しては微妙である。
2015年オーストラリアのテニス国際試合で英国在住の顧客グループ に対し、試合会場から電子端末を駆使し、ゲーム情報を逐一提供していた英国人が試合後に逮捕されるという事案があった。
但し、同国でも犯罪となる要件を満たすことはできず、後刻無罪放免となっている。

データスカウテイング(Data Scouting)とは例えばサッカー等のリアルプレーに際し、やはり、場内に入り、リアルタイムでゲームの推移を場外、特に海外にいるスポーツブッキング事業者に対し、コンピューター入力や音声データにおいて実況中継をするが如くにゲームの推移を連絡する行為になる。
対象相手はスポーツブック事業者で顧客ではない。
要は組織的にリアルタイムでの試合情報をかってに取得し、自分のスポーツブッキングビジネスにこの情報を使用しているわけだ。
海外にいるスポーツブッキング事業者はこの情報をもってIn-Playのオッズの判断をする。
TVやSNS等でも類似的情報は取得できるがここに時間差が生じ、数秒単位でも情報把握が遅れれば全く意味がないため、リアルタイムでの情報を重要視するわけだ。
問題は海外にいるスポーツブッキング事業者は、何らの許諾・免許も許可もないままに、かってに外国におけるスポーツ試合の情報をリアルタイムで取得し、これをもとにIn-Playでのスポーツブッキングを違法に提供していることにある。
かつ本来であるならばリーグやスポーツ団体が、データ収集・供給会社経由、有償でスポーツブッキング事業者に公式データを提供できる所、この枠組みの外で、かってに情報をとっているという構図でもある。
勿論これも、上記のコートサイデイングと同様に、主催者による入場チケットの販売約款に試合場内からの無線・インターネット等を通じた外部への試合推移情報の提供は禁止すると規定しさえすれば、約款違反行為ということになり、退去を要請できる。
約款を無視して、場内に入りかかる行為を行った場合には、不法家屋侵入罪として告発することも不可能ではあるまいということになる。
実際のネット社会では一部の外国大手スポーツブック事業者は、Jリーグの公式試合をIn-Playの賭けの対象とし、ライブ試合の状況をSNS上で情報発信している。
勿論映像は不可能で、文字と簡易画像で若干のタイムラグはあるが、これでも顧客は試合の推移と結果を把握でき、その場で賭けの判断をしやすくなることは間違いない。
かつ最近では試合の情報を簡素なデバイスでデジタル化できる仕組みも登場しており、第三者が解らないように様々な情報をとることはかなり頻繁に行われている模様だ。

上記はいずれも、もし試合場内でかかる不審な行為をしている事実を発見した場合には、当然主催者ないしは球場は当該主体に試合場からの退去を要求することができる。
但し、問題はいずれも簡単には発見できないことにある。
ラップトップを用い状況をインプットしたり、スマフォや隠しマイクで見つけにくい形で情報を外に出したりすることは不可能ではないからだ。
いずれも犯罪、不法行為と判断するには極めてマイナーな事象になるが、これら不正行為を放置することは、スポーツブッキングの廉潔性にも悪影響を与えかねない事象になってしまう。
入場約款で厳格に禁止すること、かつ場内を適時チェック・モニターし、不審者を摘発することが必要なのだろう。
データスカウテイングに対してはスポーツ主催者自体がこれを禁止することを内外に告知すると共に、もしかかる行為がなされていることを確認できた場合、外国のスポーツブッキング事業者を特定し、彼らに対し何らかの民事的な法的措置を外国でとることをも考慮することが必要になるのかもしれない。
積極的な防止策を講じない限り、必ず類似的な事象が生じかねないからである。

(美原 融)

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