2023-03-06
198.スポーツブッキング ㉜スポーツ・アナリテイックス(2)
選手や試合、試合の環境に関する様々な過去、現在のデータを集めることができれば、これらを分析、加工し、様々な試みが可能になる。
取得するデータはセンサーやGPSデータを活用した選手個人に関わるBiological Dataや試合の遂行に関わるデータ、選手やボールに関わる正確な座標データやトラッキングデータ、あるいは統計的な過去の試合に関するEvent Data等でアルゴリズムに基づく過去のPerformanceや特定のシチュエーションにおける過去の試合のデータ等にも跨る。
これら膨大なビックデータを集積、分析、加工すると様々な活用手法が生まれる。
典型的なのは選手のPerformanceを基に、人口知能(AI)や深層学習手法を駆使した統計的なモデルで過去の試合を再現したり、これからの試合の数学的予測モデルを作り、可変値等も考慮したりした上で試合がどうなるかという結果を予想することだ。
機械学習やAIを駆使して、一定条件の場合の選手やチームのPerformanceを設定し、どう試合が展開するのかを予測することになる。
勿論現実のスポーツ試合がどう展開するか、如何なる不測の事態が生じるかは何人も解らず、予測モデルは一つの合理的な仮説でしかない。
但し、一定の前提の下で可能性を合理的に高めることができるツールであることは間違いない。
興味深いのはこれらデータや予測モデルを活用する主体はプロ、アマを問わないスポーツ団体やチームであるとともに、スポーツの推移や帰結を賭け事の対象とするスポーツブッキング事業者でもあることだ。
今やスポーツブッキング事業者は極めて重要なスポーツアナリテイックスの活用主体になっており、スポーツアナリテイックス専門事業者とスポーツブッキング事業者の連携・協働は、スポーツブッキング分野の市場拡大に大きな貢献を果たしている。
これら専門的なスポーツ関連データを収集・分析・加工し、一定のシミュレーションを提供できる主体は、スポーツブッキング事業者にとり、システム的にオッズ・メーキングの業務を代替できる能力と機能を兼ね備えているのだ。
即ち、膨大な過去の試合歴や選手の情報をデータ化し、様々なインプット情報や可変情報を一定のアルゴリズムで分析し、どちらのチームが有利になるかを判断し、合理的なオッズのラインを設定するシステムを提供することになる。
かつ顧客の賭け金行動次第では、事業者のリスクを軽減するオッヅ調整の一部迄システム的に対応することも可能である。
即ち、従来少数の専門家の経験に頼っていたことをシステムが一定の合理性をもってできることを意味する。
勿論、スポーツブッキング事業者も一つの予測モデルではなく、複数の予測モデルを平行して使用し、処理し、専門家がオッズのバランスを図る施策をとっている模様だ。
よって全てをシステムに任せているわけではなく、状況の変化や新たな情報等により、人間が判断し、調整するという側面は未だ残されてはいる。
但し、データのデジタル化とその加工・分析は、スポーツブッキングの世界の根本を変えることに繋がったといってもよい。
特にIn-GameのEventに関わる様々な賭け事に関わるオッズの評価は、リアルタイムでベッテイングのアルゴリズムをシステム的に処理しない限り、オッズを短期間にコントロールし、調整できなくなる可能性が高い。
複数のIn-Game Bettingを前提とする試合が同時平行的に走っている状況下では、数百から1000程度の選択肢を抱えることになり、こうなるとシステムによる対応しか手法はないという現実もある。
この様に、スポーツブッキング事業者の背後には、彼らを支えるデーター・プロバイダーやデータ・アナリテイックの専門会社が存在し、スポーツブッキング事業者に対し、情報収集、情報分析・加工と共に、オッズの基本的枠組みを提供しており、彼らの存在価値は益々重要になりつつある。
スポーツブッキング事業者とデーター・プロバイダーとの協業とは、業務を分担した方がお互いに効率的だし、合理的でもあるからだ。
これらデーター・プロバイダー等はスポーツ関連リーグ、チームからデータの使用権をも得ているわけで、スポーツブッキング事業者と連携・協力し、オッズのみならず、対象となる試合のライブストリーミング映像や関連するスタッツ(スポーツデータ)を一般顧客にリアルタイムで提供しながら、その後の試合の展開・推移の賭けをスマフォベースで自らのプラットフォームから提供すること等も実践されている。
様々なスポーツデータ・統計、その分析・加工情報は、一般顧客やスポーツファン、スポーツブッキングの愛好者等にとっても、有益な情報になる。
情報の精度は異なるとはいえ、一般顧客に対し、個別選手の過去のパーフォーマンスや過去の試合履歴等の分析データをウエッブ上のプラットフォームから提供する事業者も存在し、一般顧客もデジタル情報を十分に活用しながらスポーツブッキングを楽しめる状況が成立している。
シミュレーションモデルを活用した試合予想結果をサイトやプラットフォームを開設し、一般顧客にかかる情報を販売する事業者も生まれている。
スポーツファンの中にはこれらサイトを巧みに利用し、自らの賭け事に利用している顧客もいる。
勿論これが正しい情報か、常に正解か等は解らないが、例えて言えばデータを駆使する競馬の予想屋みたいな存在がAIを用いてWeb世界にも登場していると考えた方が解りやすいのかもしれない。
勿論かかる付加価値のある情報を提供することは、スポーツをより楽しみ、遊興としてスポーツブッキングに参加するファンや一般顧客を増やすことに繋がっていることも事実のようである。
(美原 融)