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2023-02-27

197.スポーツブッキング ㉛スポーツ・アナリテイックス(1)

データーサイエンスは近年注目を浴びている学術分野だが、スポーツもその重要な一つの領域になりつつある。
スポーツに関わるあらゆるデータを収集し、これを分析・加工し、活用することをスポーツ・アナリテイックス(Sport Analytics)と呼称するが、データを収集する様々な技術の発展やこれを分析する手法の発展により、選手やチームのPerformanceを把握し、その強さや弱みを効果的に評価・判断できるツールが生まれることになったからだ。
今やWearable端末やGPS技術を活用し、選手の個人能力測定や、試合におけるPerformanceの測定、体調管理やフィットネスレベルをモニターし、選手やボールの正確な座標データやトラッキングデータを試合中も含めて把握することができる。
これら膨大なデータベースを活用し、様々な分析・加工技術により、有益な情報を把握し、チームや選手に効果的な情報を提供することができる。
スポーツの試合で相手チームにどう勝つかという戦略や戦術はチームや選手にとっては極めて重要だ。
過去の記録やデータ履歴から相手チームの選手、監督、コーチなどの強みや弱みと共に調子や行動パターンを分析することができる。
かつ自分のチームの強さ、弱さを正確に把握し、戦略、戦術を立案することは、試合を有利に運ぶことに繋がる。
スポーツにかかわるチームや選手の過去から現在に至る様々な情報を収集し、これらを分析、加工し、付加価値のある情報として、チームの戦術に活用することが勝敗を左右するという事実も再認識されている。
ITCやインターネットの発展、デジタル化の進展と共に、様々なスポーツ関連データや画像データの収集とこれらの分析、加工は欧米を中心とし、大きな産業として発展しつつあることが現実だ。

このスポーツ・アナリテイックスの実務とはOn-Fieldの分析とOff-Fieldの分析の二つに分かれる。
On-Fieldの分析とは主に選手やチームの試合におけるフィールドでの過去・現在・将来のPerformanceを分析することである。
これは試合前にも、試合中にも行われる。
この目的とは①Data Drivenのアプローチ・分析によりチームや選手個人の動きをトレースし、その強み、弱み、性向を把握し、選手を評価すること。
プレー毎のデータをもとに機械学習アルゴリズムにより、個別選手のPerformanceを予測すること、②選手の体調や調子を捕捉し、怪我・故障を予測したり、怪我のリスクの高い試合の行為を特定化したりして、故障を防ぐこと。
選手の体調管理やトレーニングメニューの開発等にもこれらデータを利用すること、③効率よくチームや選手のパーフォーマンスを改善できる要因を把握し、最適化を図ること。
自分のチームや相手のチームの試合におけるパーフォーマンスを分析し、データを基にした判断により、リスクを小さくしながら、より有利な試合運びの戦術を企画し、実践すること、④深層学習やAIの活用により試合の結果を予測する様々な(市販されている)シミュレーションモデルを活用し、試合の展開を予測すること等にある。
データの収集、分析、配布は試合の進行中も行われ、バックヤードから対戦相手の戦術を把握したり、高度な次の展開への戦術面での判断、戦略構築、リアルタイムでのチーム・監督・コーチのサポート、試合後の選手及びチームのPerformance評価等にも用いられたりしている。

一方Off-Fieldの分析とは、On-Field以外の様々なビジネスへの展開や収益拡大のためのデータ活用になる。
例えば①観戦客やファンの動向や意向を分析・把握し、観戦料の最適価格設定やファン増大を図ること。
②プロモーションや様々なマーケッテイング手法が顧客にどの程度のインパクトや効果を与えているかを評価し、より効果的な手法をデータから判断し、収益拡大を図る手法・戦略を把握すること。
④スポンサーやファンクラブの満足度向上施策等を把握し、より効果的な収益増手段につなげること等になる。
面白いのはプロ・アマの選手の能力評価やスカウトにデジタルデータを活用していることだ。
J-リーグの一部でも実践されているが、世界中の選手の膨大なデータ、過去の履歴、個人のパーフォーマンス等を日々チェックし、スカウトできる選手の選択に利用している。
今やプロのスカウトチームは、アナログではなく、自分のチームに必要な能力・経験等を数値化し、世界中の有望な選手のパーフォーマンスを常時モニターしながら、条件を満たす候補選手をデジタルシステムを利用して探すということを実際やっている。
スポーツデータは様々なデータが集積されればされるほど、これらデータを分析・加工することにより、新たな付加価値を生み出しているといえる。

市場におけるスポーツデータに対するニーズの高まりと発展は様々なスポーツ団体やチームと契約し、画像データやライブストリームデータを収集・取得し、これら画像データやゲームの進行・帰結を全てデータ化し、分析・加工し、顧客にとって役立つ情報として提供するというデーター・プロバイダーやデータ・アナリテイックスの専門会社を誕生させている。
スポーツチームに対しては、試合前後、試合中に拘わらず、ゲームの進行に関わる戦術の決断を支援するデータ等をAIやアルゴリズムを用いたシミュレーション等を用いて提供している。
尚、これらデータとその分析結果の活用主体はチーム・選手だけではない。
スポーツブッキング事業者はこれらデータ・アナリテイックスの専門会社からデータやその加工した成果、更にはオッズ迄提供を受ける様な協業体制を構築しており、この分野を商業的に支える重要な主体となっている。
欧米諸国では既にこのデータ・アナリテイックス分野で巨大な企業群が生まれているが、我が国においても様々な企業がこの分野で活躍しつつある。
プロ野球やJリーグでも先進的なスポーツア・ナリテイックス手法の採用や専門家の起用がおこりつつあるというのが現状の様だ。

(美原 融)

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