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2023-02-20

196.スポーツブッキング ㉚大学スポーツ選手への報酬?

スポーツブッキングとは直接関係は無いのだが、大きなイベントで巨額の資金が動く我が国の大学スポーツ試合で、大学も学生も一銭ももらっていないのに一体誰が儲けているのかということがSNSで話題になった。
正月の大学箱根駅伝のことである。
主催者は任意団体の関東学生陸上連盟、共催は読売新聞社になる。
特別後援は日本テレビ、後援は報知新聞と、読売グループで抑え、広告代理店は、読売広告社と、その親会社の博報堂DYメディアパートナーズで、主要な協賛企業は名だたる上場企業のみ(札幌ホールデイング、ミズノ、トヨタ、セコム、NTTドコモ等)になる。
大学スポーツ試合といってもこの場合には広告費等を含めると巨額の金が動くことは間違いないのだが、情報開示義務もないため、実体は解らない。
恩恵を受けられない内部関係者から不信感が湧き出ているということなのだろうが、確かに一般的には解りにくい仕組みになる。

もっとも大学スポーツ試合といっても、主催者からすれば、これは入場料、観戦料を徴収できないがコンサートや演劇等と同様単なる興行でしかすぎず、実体は単純な仕組みだ。
主催者と出資するスポンサー等が協定を結び、興行に関わるリスク、費用の分担、収益の配分等を関係者間で予め取り決めた上で興行となるスポーツ試合を実施することになる。
主催者にとっての主たる収益は協賛企業を募り、かかる企業が拠出する巨額の広告料、TVラジオ等の放映権対価等になる。
逆に主催者のリスクとは、人気がなくなり、スポンサーも協力企業も集まらず、費用を満たす収益が得られなくなることにある。
結果的に開催直接費用等を差し引きネットの収益を当初合意した割合により主催者間で配分することになる。
一方、試合に参加する大学のチームや学生はほとんどが無償、ボランテイア故、開催費用はできる限り抑えることができる。
関東学生陸上連盟のような任意団体はかかるスポーツ試合興行のリスクを担える財務的体力はない。
よって名目的な収益分担になることは、間違いなく、漏れ聞こえるところでは数億円の利益分担はもらえる仕組みの様だ。
残りは全て興行のリスクを担ったスポンサーの懐に入る。
これとは別に、広告代理店は結構な金額となる仲介料と広告料を手にできる。
新聞社やTV会社も巨額な広告料を懐にすることになる。
公表されていないが関東学生陸上連盟から個別の参加大学に収益の配分があるとは到底思えず、全て陸連が独り占めするのだろう。
大学とスポーツチーム、選手は参加できることの名誉は与えられるが、金銭的報酬等は一切与えないという建前になるのではと想定する。
もっとも世界陸連の内規変更に連動した日本陸連の内規変更に基づき2021年以降、大学スポーツチームは民間企業とスポンサー契約を締結し、ウエア等に企業の宣伝ロゴを入れることで物品や報酬等を(陸連等を通さずに)直接収受できるようになった。
但し、所詮数百万円から1000万円単位の少額の模様で、かつ強い人気のある大学チームには一流企業がスポンサードとしてついたのだが、下位グループとなる大学チームにはスポンサーが全くつかないということが現実に生じている。

スポーツ興行試合に際し、昔は費用を回収できない時代があったのかもしれない。
この場合、リスクをとれる主体とは財政力のある民間企業になり、彼らが協賛企業やスポンサーとして名を連ね、リスクと費用を負担する仕組みが志向されることになる。
但し実際の箱根駅伝は年々人気を博し、TVやラジオで主催者が独占中継する正月の国民的な人気スポーツ試合となっている。
今や、リスクはまずなくなり、逆に巨額の資金が動く一大イベントでもある。
費用増を埋め合わせても、新聞社やTV会社、広告代理店にとってみれば巨額の利益を生み出すビジネスツールと化した事は間違いない。
なんのことはない、マスコミと広告代理店にとり、リスクもなく、巨額の収益を生みだす一つのツールとなったことが実態だろう。
かかる事情を知られたくないために情報を開示しないのであろうが、マスコミ大手が主催者である場合、誰も何も文句も不平も言わないし、お互いに言わないという異常さがここにはある。
箱根駅伝も、春夏の高校野球も実態は全く同じだろう。
アマチュアスポーツの美しさや清廉潔癖性の裏では、単純なビジネス目的をもって誰にも知られず巨額の収益を得るマスコミの実態がここにはありそうだ。
勿論大学スポーツの枠組みがビジネス化していくことは、時代の流れでもあり、特段非難されるべき問題ではない。

我が国における問題の根源は、スポーツ界とビジネスとのかかわり方が未熟であることに尽きる。
学生スポーツは商業的利益行為とは無縁という前提は、一見正しそうでも、アマチュアスポーツ自体が教育機関や学生の負担、OB等による寄付金だけでは財務的に持ちこたえられそうもないことが実態だろう。
合宿や遠征試合等選手強化策にもかなり資金がかかってしまう。
スポーツ試合の興行主催者が巨額の利益を上げているならば、実際のスポーツ試合を担う団体・組織・チームにも、何らかの財政的メリットを取得することができれば、学生スポーツ活動が活性化することは間違いなく、当該スポーツの振興にもつながる。
金がスポーツ選手の廉潔性や健全な意思や意図を歪めうるとする考え方は既に時代にそぐわない。
かかる仕組みを活用し、大学、スポーツ部・組織に対し、様々な財政的支援の在り方や民間企業による自由な支援の在り方が柔軟に認められて叱るべきではないかとも考える。
大学スポーツ選手が最大限の能力を発揮できる環境、物的・金銭的・精神的支援を与えることが本来大学スポーツ振興のあるべき姿なのかもしれない。
これは公費や自費だけではできない。
ビジネスとのかかわりもより透明な仕組みを構築することで健全化を保持しながら、学生スポーツに対する財政支援を実現する枠組みを志向すべきともいえる。

(美原 融) 

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