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2023-01-23

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192.スポーツブッキング ㉖Product FeeないしはIntegrity Fee(3)

米国ではスポーツブッキングは州毎の法制度になるため、2018年以降の制度創出に際し、制度の中でスポーツブッキング事業者と対象となるスポーツを主催する団体・組織との関係をどう構築するかに関し、州毎に喧々諤々の議論が生じた。
プロスポーツリーグはTVの放映権等と同様に、当該スポーツ試合をスポーツブッキングの対象にするならば、収益の一部をロイヤリテイ―みたいな形でスポーツ団体・組織に支払うべきとする主張を始めたからである。
米国のプロスポーツリーグは、賭博行為を認めれば、不正・いかさま・八百長等のリスクが高まること、かかる不祥事が生じないように団体・組織としても支出が必要となる様々な措置や支出が必要で、これへの対価をインテグリテイ・フィー(Integrity Fee)と呼称して要求した。
制度の中にかかる規定を設けることができれば、自動的に関連スポーツ団体にもそのメリットが配分されることになる。
各州政府による制度構築に際し、制度の中にこのインテグリテイ―フィーを盛り込むことを強硬にロビーイングしたのはほぼ全てのプロスポーツ団体(全米フットボールリーグNFL, メイジャー野球リーグMBL、全米バスケット・ボール協会NBA、全米ホッケーリーグNHL等)である。

ロビーイングが功を奏し、最初にインテグリテイー・フィーを法案に明記したのはインデイアナ州である(2018年法案HB1315 )。
リーグはハンドル(顧客勝ち分を差し引く前の顧客による総賭け金)の1%をスポーツ団体にというロビーイングを展開した。
おそらく欧州での実際の慣行を見た上での判断なのであろう。
1%というとたいした金額ではないという錯覚に陥るが、事業者の収益ベース(GGR)に引き直すと収益の20%程度になり、かなりの高額になる。
逆にこの考えに反対するロビーイング活動を積極的にかつ強硬に展開したのはスポーツブッキング事業者や業界団体AGA(米国ゲーミング協会)等である。
スポーツブッキングはもともと利幅の低いビジネスで、高額な税負担に加え、スポーツ団体に対しても高額なフィーを支払うことを前提にした場合、ビジネスとしてペイしなくなるという理屈になる。
そもそもネバダ州では長年スポーツブッキングが認められ、実践されてきたが、かかるフィー等は支払う制度も慣行も一切存在しない。
スポーツの結果等は情報としては社会の共有財・公共財みたいなもので、スポーツ団体のみに帰属するものではない等という主張がその論拠となる。
インデイアナ州の法案はその後2019年にはインテグリテイー・フィーからローヤルテイーへと名称が変更され、フィーも0.25%へと減額提案されたが、結局このフィー規定は最終的に法案から消え去ることになった。
ミゾウリ州では、インテグリテイー・フィー0.25%+Entry & Infrastructure Fee0.6%等という案が提案されたが、後者は関連スポーツ施設の建設費用や維持管理費相当分を州政府経由リーグやチームに支給しようとする変化球で、リーグの直接的なメリットにならないことから、この案も潰されている。
このほか、現実に州議会に提出された議案の中にインテグリテイ―フィーやロイヤリテイとして、リーグへの対価支払の考え方を法案に取り入れた州は6つあったが、議論の過程でこの規定は全て法案からは消え去り、全ての州で否定されるという事態となってしまった。
この意味ではプロスポーツ団体・組織の全敗に近い。
唯一様々な州の法案で認められた規定は、Tier2の賭博種に関わるスポーツデータは、リーグから提供される公式データを使用することをブッキング事業者に義務づける規定になる。
もっとも利用を義務としたのみで、対価をどう設定するかの記載はなく、全て交渉により取り決めろという内容になる。
勿論かかる規定を設けたのは全ての州ではなく、一部の州でしかない。

州政府や州議会にとり、新たなスポーツブッキング法を定め、これを実践することは新たな税収財源の確保に繋がることがその重要な政策目的になる。
スポーツ団体・組織にとっても、状況次第では、これは新たな収益確保の手段になる。
かかる状況にある場合、どうしても利害関係者によるメリットの取り合い競争が生じ、うまく立ち回らなければ、自分たちの取り分が少なくなってしまうという状況に陥る。
米国のプロスポーツリーグは、制度の枠組みへインテグリテイー・フィーの取り込みがうまくいきそうもないと悟った段階での態度の変身は早い。
州政府や州議会への働きかけではなく、スポーツブッキングのビジネスストラクチャーに着目し、関係しうるステークホルダー(スポーツブッキング事業者、スポーツデータプロバイダー、スポーツブックメーカーとしての機能を果たす分析会社やデータ集積会社、システムソフトウエア会社やスマホアプリ会社、映像配信のストリーミング会社等)を個別に取り込んで、公式データの使用権購入、当該スポーツを賭博の対象とすることのロイヤリテイ―支払い等様々な名目で商業的な契約行為によりメリットを受ける方針に転換した。
これら関係はうまく実現し、現状ではスポーツ団体や地域のスポーツチーム自身が個別の巨大スポーツブッキング事業者とパートナーシップ契約を締結し、データ供出のみならず、ブランデイングや広告、ホームチームにおけるスポーツブッキング・ラウンジの設置等、きめ細かく、収益ソースの多角化を実現しているのが米国のスポーツリーグの実態になる。
業界団体でもある米国ゲーミング協会(AGA)も、方針を転換し、制度的な強制や規制による義務化は不要、全て市場においてステークホルダー同志のビジネス契約として処理できるとしている。
いかにも米国的な市場の構築として固まりつつあるということだ。
但し、この考えはどの国でも適用できるような汎用的なアプローチとはいえない。
全てを商業的な利得で割り切ることに対する一部スポーツ界の反対がある国も存在するからである。

(美原 融)

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