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2022-12-26

189.スポーツブッキング ㉓スポーツデータと権利(2)

スポーツ試合で相手チームにどう勝つかという戦略や戦術はチームや選手にとっては極めて重要だ。
過去の記録やデータから相手チーム、選手、監督、コーチ等の強み、弱みや行動パターンを分析すると共に、自分のチームの強さ、弱さを把握しおくことは、試合を有利に運ぶことに繋がる。
スポーツに関するチームや選手の様々な情報を収集し、これらを分析・加工し、戦術・戦術に活用することが、勝敗を左右することが分かってきたからだ。
これはプロであろうがアマチュアであろうが同じである。
ITCやインターネットの発展と共に、画像データの収集や様々なデータ等の収集とIAを活用した高度な分析が容易になったという環境の変化もデータの活用を促した。
スポーツデータの収集と分析は欧米を中心に今や大きな産業にまで発展しつつあり、これらデータを活用した分析とその応用をスポーツアナリテイック(Sport Analytic)と呼称している。

チームや監督、コーチ、選手にとり具体的なデータ活用の目的とは、①詳細画像データの分析により、チームや選手個人の強み・弱みを把握し、効率良くチームと選手のPerformanceを向上させること、②試合に係る映像とデータベース(Stats Data)を集積し、分析の精度を向上させること、③自分のチームや相手チームのPerformanceを分析し、データを下にした判断により、リスクを小さくしながら、相手より優位に立てる戦術を立てることに資すること等にある。
データの収集・分析・配布は何と試合の進行中も行われ、バックヤードで対戦相手の戦術を把握したり、高度な戦術面での判断、リアルタイムでのチームサポート、試合後の評価等にも用いられたりしている。
データの活用は試合のためだけではなく、他の活用方法もある。
J-リーグの一部チーム等でも使用しているが、面白いのは、プロ・アマの選手のスカウトに世界中の選手の膨大なデータ・過去の履歴・個人のPerformance、プレーの映像等を日々チェックし、有望選手のスカウトに利用していることだ。
今やプロのスカウトチームは、アナログではなく、自分のチームに必要な経験・能力等を定義し、世界中の有望な選手のPerformanceを常時モニターしながら、スカウト可能な有望選手を探せるということを実際やっている。
スポーツデータは様々なデータが集積されればされるほど、これらデータを分析することにより、様々な付加価値を生み出しているということになる。

これらデータを活用する主体はスポーツ団体・組織・選手だけではない。
スポーツの経緯や結果を賭けの対象とするスポーツブッキング事業者、更には、データを自ら解釈し、スポーツを楽しみ、スポーツブッキングに参加する一般顧客もこれらスポーツを活用し、試合の予想に利用したりしている。
市場におけるニーズの高まりと発展は、様々なスポーツ団体や組織と契約し、画像データやライブストリームデータを取得し、これらの画像データやゲームの推移・結果を全てテータ―化し、分析・加工し、顧客に提要するデータアナリテイックの専門会社やあらゆる過去・現在の履歴やデータを集積し、これらを分析した情報を提供するスポーツデータ供給会社(Sports Data Provider)を誕生させている。
これら企業の中には、スポーツチームに対し、試合前後、試合中に拘わらず、ゲームの進行に係る戦術の決断を支援するデータを提供したりする企業もいる。
面白いのはこれらスポーツアナリテイックの専門会社やデータ供給会社が提供するスポーツデータ・統計データとその分析は、スポーツブッキングのオッズメーキングにそのまま利用できることにある。
データを収集・分析し、スポーツブッキング事業者に対し、オッズの提供までしているスポーツデータ供給会社やスポーツアナリテイック会社もいる。
AIやアルゴリズムを駆使すれば、信用できるオッズの設定は完璧ではないが、確実にできる。
あるいはスポーツブッキング事業者と連携し、対象となる試合のライブストリーミング映像やリアルタイムでの試合の分析・今後の展開の予想等をスマホで提示し、顧客に様々な情報やデータを提供し、顧客の賭け金行動を促すことを専門にしているスポーツアナリテイック会社も存在する。
ライブを楽しみながら、個別選手の過去のPerformanceや実績等の分析データをスマホで提供することで、次の展開の可能性を表示するわけで、こうなると顧客にもう一回賭けさせるという行動を促すことができる。

興味深いのはスポーツ団体・組織とデータ分析会社・供給会社(Data Provider)、スポーツブック関連事業者間の商業的関係にある。
データの所有権・使用権は明らかにスポーツ団体・組織・選手にある(通常は団体が権利の窓口になる)わけで、公式なデータの供与・使用に対し団体・組織は対価を受け取ると共に、分析・加工したデータを自らも活用できる。
一方データ分析会社・供給会社はこれらデータや加工した情報をスポーツブック関連事業者や様々な関連主体に付加価値をつけて販売し、費用を回収するわけだ。
データ分析会社の中には、顧客とのインターフェースソフトを開発し、スポーツブック関連事業者や一般顧客に提供する専門会社も生まれている。
一方巨大化しつつあるスポーツブック事業者は、上記の動きとは全く別に全国的・地域的スポーツ団体組織と個別のパートナーシップを組成し、スポーツブッキングの価値を高めようとする動きも顕在化しつつある。
スポーツデータの権利は市場において認知されており、その収集・分析・加工は新たな付加価値をもたらす一大産業に発展しつつあるということになる。

(美原 融)

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