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2022-08-01

168.スポーツブッキング ②カジノとの差?オンラインカジノとの差?

スポーツブッキングは欧州ではかなり昔から存在したが、米国では2018年以前は限られた州のみでしか認められていなかった。
その一つ、ネバダ州のスポーツブッキングとは陸上カジノ施設内部に一定区画(ラウンジ)を設け、そこに壁一面の複数のモニターでオッズやスポーツ試合を映し出し、対面ブースや機械でチケットを購入し、賭けに参加することが一般的でもあった。
要はあくまでもカジノ施設が提供する賭博種の一つという位置づけになる(施設内でやることよりOn-SiteあるいはRetail、また対面となるためIn-Playと呼称する)。
かかる施設は当然のことながら今でも存在するが、最近ではカジノ外のスポーツ施設やスタジアム内に類似施設を設け、試合を実際に目にしながらその試合の推移に賭けるラウンジが設けられている。
いずれも、特定固定施設の閉鎖的空間の中で提供される賭博種でもあり、スロットやテーブルゲームとは全く異なる賭博種として人気を博してきたのが実態である。
スポーツブッキングは単なる胴元とのゲームというよりも、スポーツ試合を楽しみながら、その推移や結果を賭博の対象にできるわけでスポーツファンには熱が入る遊びになる。
様々な展開の予想を胴元がオッズの選択肢として提供し、顧客がこれを見て賭けの判断をするのだが、昔はオッズメーキングの為に専門オッズメーカーなる人物が存在し、統計値やデータを駆使して、オッズを提供してきた。
但し、陸上設置型の施設におけるスポーツブッキングはそこに行かなければ何もできず、集客力はあるが、胴元にとっての利幅は左程大きくない為、カジノ施設における売り上げ貢献度は小さいことが実態だ。
賭け金額は左程大きくないと共に、胴元もリスクを縮減しながらオッズを提供するからである。
かつ固定的な陸上特定施設にて提供できる賭博サービスにはやはり来客数という限界がある。

カジノでの体験はリアルゲームであって顧客が機械や人間(デイ―ラー)と対峙する形で閉鎖的な施設内で行われる。
一方、ICTの発展やデジタル化は、この遊びの世界をも大きく変えることになった。
1990年代以降登場したオンラインカジノとは、インターネットやスマホを通じ、胴元がプログラム化されたソフトウエアにより不特定多数の顧客に同時的に複数のゲーム種を提供する仕組みである。
閉鎖的ではなく、極めてオーブンで24時間・365日、顧客のコンピュータ画面から何時でも賭博サイトへのアクセスが可能になる。
これがため、固定施設と比較すると、顧客賭け金額は飛躍的に向上する。
固定施設で人間が一部介在する賭け事から、施設無し、全てソフトウエアがシステム的に処理し提供する賭け事となるため、施設も固定費も極小に抑えることができ、当然利益率も高くなる。
顧客から見るとリアルがデジタルに変わり、アクセスや利便性がよくなっただけで類似的かもしれないが、制度や仕組み、規制の観点からは今までの賭博法制とは全く異なる考えやアプローチが必要になってしまう。
勿論我が国では現状オンラインカジノは認められていない。

スポーツブッキングの世界もICTの発展とデジタル化は根源的な変化をもたらしている。
膨大なデーターベースや統計値の分析は最早人間の経験と勘ではなく、デジタル化され、AIとアルゴリズムを駆使して最適解を見つけるシステムに代替されてきた。
スポーツ試合の最適オッズをシステムが提供し、市場の動き(顧客のオッズ購入行動)をもリアルタイムで把握し、これを反映できるようになってきている。
勿論オッズメーキングの専門家は調整・判断のため必要なのだが、昔のようにプロの専門家が鉛筆をなめるのではなく、数学の博士号を持った専門家がシステムを動かし、調整するように変わりつつある。
カジノ施設内部におけるスポーツブッキングも内部的にはこのように変化してきたということだ。
スポーツブッキング自体がオッズを決めるためにビックデータや数学モデルを利用することになり、デジタル化には向いているし、相性は良いのだ。
オンライン・モバイルによる賭博行為の発展は、スポーツブッキングを更に発展させることに繋がった。
統計値やデータのデジタル化は専門的な分業を加速化させる。
AIを駆使したデータ分析やオッズの提供のみならず、リアルな顧客の賭け金データを事業者から得て、顧客の疑わしい行動(不正や八百長)を摘発するモニタリングサービス等様々な業務を協力企業が分担して担う体制が市場で確立している。
顧客も固定的施設へわざわざ出かける必要もなく、手軽に、何時でも、何処でもスポーツ試合を楽しみながら試合に賭けることが可能だ。
今やオンライン・モバイルによるスポーツブッキングは特定施設内におけるスポーツブッキングの提供を遥かに凌駕し、スポーツブッキングの主流の手法になりつつある。
球場でリアルの試合を見ながら、その場で次の展開をスマホで賭けるという風に、実際の試合とスポーツブッキングを限りなく近づけさせることが、人気を高めるからなのだろう。
このオンライン・モバイルによるスポーツブッキングだが、サイトへのアクセスの手法や会員登録、アカウントの作成、決済や払い戻しの方法等は、(合法・違法を問わず)オンラインカジノと全く同様の手法が採用されている。
サイトからまず会員登録し、クレジットカード、銀行振り込み、電子マネー決済等により一定金額を払い込み、預託し、この中から賭け金を引き落とす形で遊ぶわけだ。
払い戻しはこのアカウントにクレジットされることになる。
こうなるとオンラインカジノに馴染のある顧客からすれば、スポーツブッキング等はオンライン賭博の一つの賭博種でしかないと思ってしまうかもしれない。
かつ合法であれ、違法であれ、ほぼ同じ手順を踏むわけで、これまた混乱に拍車をかけてしまう側面がある。
Totoの仕組みとほぼ同じ手順ならば、違法であるわけがないという錯覚を顧客に与えてしまうかもしれないからだ。

上記で見た通り、現代社会はリアルとオンライン・モバイルが共生しているのが現実だ。
勿論どちらかに収斂して、どちらかが無くなるということはまずありえないが、顧客にとり、リアルもオンライン・モバイルも差異を感じなくなっている時代が到来している。
スポーツブッキングのハードルの高さはオンライン・モバイルを前提としない限り、集客は期待できず、経済効果も限定されてしまうことにある。
但し、これは簡単な前提ではない。

(美原 融)

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