National Council on Gaming Legislation
コラム
  • HOME »
  • »
  • 184.スポーツブッキング ⑱事業者はどう儲ける? ViG

2022-11-21

184.スポーツブッキング ⑱事業者はどう儲ける? ViG

スポ―ツブッキングの事業者はどう金を儲けるのであろうか?顧客が賭ける毎に、薄いコミッションを賭け金から取っていると考えれば解りやすい。
これをViG(Vigorishの略、語源はイデッシュ語(ユダヤ語)で元をたどるとロシア語のWinningという説がある)ないしはJuice等と呼称しているが、カジノでいえばHouse Edgeと同じである。
オッズの設定の仕方にビルトインされている胴元の取り分なのだが、傍から見ると解り難い仕組みになっている。
これを理解する前に米国のマネーラインの標準オッズの考えを理解する必要がある。
胴元のオッズはどちらが勝つか、顧客が勝った場合払い戻し(顧客の勝ち金)はいくらかを提示する。
+の表示は負けそうなチーム(Underdog)を示し、例えば+150というのは$100をかけると、勝ち金は$150(払い戻しは計$250)となる。
-の表示は勝ちそうなチーム(Favorite)を示し、例えば-200とは、$100の勝ち金を得るためには$200を賭ける必要がある(勝てば払い戻しは$300)ことを示している。
通常Favoriteのオッズは(人気が高いと想定されるため)常に低い。
この様に、一定のラインを引きこの両側にFavorite/Underdogの二つのオッヅを並列的に異なる数値で提示するわけだ。

もしどちらのチームが勝つかわからず、確率的、統計学的に勝敗が50/50となる場合には、どちらかに$100賭ければ、$100儲かるということならば単純で分かりやすい。
ところが実際のオッズはそう単純にはならず、この場合には胴元は両チームともオッズはー110と設定することが多い。
即ち$110を賭けると、勝てば勝ち金は$100になることを意味する。
これではわかりにくいため、$100を賭けたとして計算しなおすと、この場合の勝ち金は$91.91になる。
$100に満たないわけで、要は差額の$9.09(即ち9%)はスポーツブッキング事業者の取り分になる。
同じオッズがラインの両側に設定されているため、どちらのチームが勝っても、負けた側の賭け金から勝者への勝ち分支払いと事業者取り分を賄えることになる。
どのチームが勝とうが負けようが関係なく、事業者は自らの取り分(コミッション)を確実に取れることになり、これが胴元のViGになる。
もっともこのViGが生きてくるのは、顧客にとり両サイドのオッズが魅力的で、両サイドにバランスよく、比例的に顧客の賭けがなされることが実現できるか否かに尽きる。
顧客の賭け金行動が片側に偏るということは胴元にとっては大きなリスクになってしまうことになり、この場合にはオッズを変え、顧客にとりより魅力的なオッズを修正して、提示し、顧客の賭け金行為を誘引し、バランスを図るよう努力することになる。

このViGは単純な数式で計算でき、手間をいとわなければ事業者の取り分はどの位かをチェックすることができる。
もっとも最近はネット上にViG Calculatorなる無料サイトも存在し、いとも簡単に複数の事業者のオッズを比較し、これら企業のコミッションレベルをチェックできる。
事業者によっても異なるが通常は賭け金と比較して5%~10%のレベル(あるいは競争環境下だと5%以下)にとどまることが通例のようである。
勿論オッズは一定であるわけではなく、時系列的、状況次第ではころころ変わる。
このコミッションのレベルはカジノの様々な賭博種と比較しても、左程高い数値ではない。
どちらのチームが勝つか、胴元の勝ち負けの判断が正しかったか等否かは全く、胴元の一定のコミッションは(たとえ低くとも)残るというストラクチャーを堅持することがスポーツブッキングのビジネスの基本となる。
胴元は大きなリスクを回避しながら安定的なビジネスを志向することができる。
この意味ではスポーツブッキングは勝ち負けは試合次第ということになり、ブラックジャックの様なTheoretical Win(理論的勝ち分)即ち数学的なAdvantageがあるわけではない。
よってスポーツブッキングのビジネスとは、伝統的なカジノのビジネスとはかなり異なる性格を持っていることになるといえる。

但し、これではカジノの他のゲームの様に大きな事業者としての儲けを期待することはできない。
この場合には、薄利ではあるが、Volume(賭け金総額)を大きくすることにより期待利益を最大化させるという企業戦略が志向される。
このためには客層、客数を増やすことが必要だ。
よってカジノ施設内に存在するスポーツブッキングラウンジとは広さも広く、機材の設置も余裕を持ち、人が集まりやすい空間にしている。
事実人気のある試合が始まるとかなりの集客を期待できるのだ。
但し、賭け事としては、固定的施設の中で限定的に提供するよりも、インターネットやモバイルを用い、広く、あらゆる顧客がアクセスしやすい環境を提供できることがビジネスとしては最適化できる。
勿論状況次第では顧客の賭けが一方にのみ大幅に偏りすぎたり、胴元のみが大損し、顧客のみが大勝ちしたりするということは理論的には起こりうる。
かかる事象が生じないように常に状況をモニターし、オッズを修正したり、様々なリスク管理手法を駆使して、ラインの両側の賭け金総額が類似的になるように図ったり、胴元としてのエキスポ―ジャーを縮減することが事業者の日常的リスク管理業務になる。

複数の事業者が市場に存在する場合、当然、オッズの数値は異なる。
競争環境次第では期待できるコミッションのレベルの考え方も異なるし、各事業者の抱えるエキスポージャーも異なるからだ。
市場ではオッズ比較サイトなるものも存在し、顧客も各事業者のオッズを簡単に比較できる環境が整っている。
高いコミッションをとる事業者は、顧客にとり勝ち金がそれだけ減ることを意味し、顧客から忌避されかねない。
この意味ではオッズは各事業者間で類似的にならざるを得ないという背景があるのだが、微妙に異なることも多いとうのが実態だ。

(美原 融)

Powered by WordPress & BizVektor Theme by Vektor,Inc. technology.
Top