National Council on Gaming Legislation
コラム
  • HOME »
  • »
  • 179.スポーツブッキング ⑬フォーマットの選択(4)

2022-10-17

179.スポーツブッキング ⑬フォーマットの選択(4)

如何なるフォーマットでスポーツブッキングの制度化を図るかということは、一国にとり大きな政策的判断になる。
様々な選択肢が複雑に絡んでくるのだが、対象となるスポーツ種は何か、誰が施行者で、主務官庁なのか、何を何処までどう認めるのか等の考察を一端横に置き、わが国において如何なるフォーマットが考えられるのか、問題は何処にあるのかという基本的な課題を考えてみたい。
二つの大きな選択肢がある。
既存の制度的枠組みをうまく活用し、この枠組みの中で考えるのか、あるいは既存の制度から離れて、全く新しい枠組みを創出するのかという選択肢になる。
様々な制約を一切無視して、フォーマットを考えると、我が国の場合、何が問題となるのか。

1) 既存の制度的枠組みを活用する:
既存の陸上賭博施設、例えば競馬場や競輪場、あるいはカジノを含むIR施設を潜在的施行者として認知し、彼らから申請行為があれば公民の差異は関係無く、スポーツブッキングの施行を当該施設においてのみ追加的に認めるという考え方になる。
固定の陸上施設に一区画(ラウンジ)を設け、ここで顧客にオッズを画面やコンピュータで掲示し、顧客の賭けを募るという対面固定施設型(Retail/In-Person)のフォーマットになる。
支払いは現金、賭けを証するチケット・バウチャーが交付され、これで勝った場合にはキャッシャーで払い戻しを受ける。
公営賭博の中で妥当性があるのはスポーツとしての展開の可能性が高いサッカーのみで、その他の公営賭博施設では、目前の試合とは関係のないスポーツ種に関する追加的なサービスでしかなくなる。
当該施設に来訪する顧客を増やし、売り上げを増やすという意味では施行者にメリットはあるが、公営賭博対象の競技と賭博の対象となるスポーツ試合との関係が薄い場合、単なるスポーツブッキングの固定的施設を増やすだけで、売り上げも大きなものにはなりにくい。
かつオッズ提供の仕組みを現状のオンライン販売方式に適用することはあまりにも非現実的だ。
尚、現在の競争ゲーム型サッカーくじは、パリミュチュエル賭博になり、既存の独立行政法人にはスポーツブッキングの施行者たりうる能力・経験は無く、専門的事業者に下請けせざるを得なくなる。
できないことはないが、既存の胴元は単なる導管体で、実際の胴元は下請け企業になるため、効果的な規制ができにくく、制度としては歪みが生じかねない。
既存の制度的枠組みから逸脱する項目が多すぎ、この枠組みで何かを実現することはかなり困難を極めるからである。
一方カジノ施設内での一賭博種の追加という考えは、米国の経験を見ても、不可能ではない。
但し、事業メリットは特定の主体に独占され、市場としての広がりもなく、かつ収益の配分等に関しても、特定自治体に配分が偏り、スポーツ界にメリットが無い形での施行では、うまく機能するはずがない。

2) 新たな制度的枠組みを志向する:
既存の賭博法制に基づく賭博行為とスポーツブッキングとは賭博行為の性格が異なることから既存の制度的枠組みに拘泥せず、全く異なる考え・手法・主体を前提とするアプローチになる。

(対面固定施設型フォーマットOn-Site/In-Personを前提とする)
スポーツスタジアムやアリーナ、ボールパーク、野球場等、対象となるスポーツが実際に行われる施設所有者とスポーツベッテイング事業者の連合体ないしはJVを施行者とし、当該物理的施設においてRetailのスポーツブッキング・ラウンジを認めるという考えになる。
賭博対象となるスポーツとリンクの強い施設・主体を施行者とすることになるが、勿論スポーツチーム自体が当該施設の所有者である場合には、施行者になれず、施設の一部をスポーツベッテイング事業者に貸し出すだけになるのだろう。
スポーツ団体・組織との合意形成・協力・連携が無ければ、スポーツブッキングの実施は難しく、スポーツ団体・組織・施設所有者等対象となるスポーツ関係者に何等かのメリットを直接配分できる仕組みであるともいえる。
ホームベースとするチームのスポーツ競技を目の前で見て、賭けられるわけで、こうなるとファンの熱量も高くなり、相応の売り上げを伸ばすことができるが、常時スポーツが開催されることがないRetail施設である限り、当然限界はある。

(オンライン・モバイルフォーマットOn-Line/Mobileを前提とする)
ICT技術の飛躍的発展は、インターネットを通じ、オンラインで多種多様のスポーツブッキングを顧客に24時間提供し、何時でも自宅から賭けられる環境を可能にした。
規制機関の認証を得て、免許を取得したスポーツベッテイング事業者がウエッブ世界にプラットフォームを設け、このサイトを通じ、オンラインにより、本人確認の上、顧客を登録し、彼らを対象にオッズを提供する仕組みになる。
免許制度の下で、競争環境を認めつつ、施行者数(プラットフォーム数)を限定することが通例だ。
一方、オンラインによる賭博行為の規制は我が国では経験の無い領域になり、免許主体の範囲やシステム・ソフトウエア等の認証の在り方や規制、不正・いかさまの防止、顧客保護の制度等従来の発想を超える制度の構築が必要になる。
少なくとも不正・いかさま防止・顧客保護は現在の日本のシステムでは問題外で新たな枠組みを設けることは必須の要件だろう。

上記2)の考えを1)にダブらせる考えも米国には存在する。
但し、既存の公営賭博施行者をスポーツブッキングに関与させることは、制度の整合性や利害関係者との調整がかなり難しくなってしまう側面あることは事実だ。
できないことは無いが、制度や規制が複雑になりすぎることは本来好ましくない。
既存の枠組みの中で賭博種を増やすだけなのか、あるいは新たな制度的枠組みを設けることにチャレンジしていくのかという基本的選択肢になる。
その際、如何なるフォーマットを選択し、誰にどういう形態で何を何処まで認めるのか等という課題が残ることになる。
市場をどう判断するか、政策的に何をどこまで認めてどう規制すべきか、ということなのだが、考え次第では中身は大きく変わることになる。

(美原 融)

Powered by WordPress & BizVektor Theme by Vektor,Inc. technology.
Top