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2022-10-03

177.スポーツブッキング ⑪フォーマットの選択(2)

制度構築に際し、如何なるフォーマットをどのように認めるかは、立法政策上の大きな選択肢になる。
欧州諸国では制度的に認められてきたOn-Site/In-Personのフォーマットによるスポーツブッキングの伝統があり、その後On-Line/Mobileのフォーマットが段階的に認められ、市場に登場し、これが主流になってきたという経緯になる。
後者が前者を凌駕するのではという考えは当初からあったが、既存の仕組みは壊れることはなく、二つのフォーマットが混在する状態が継続していることが欧州諸国では現実となっている。
勿論国により、事情は若干異なる場合もある。
 
これは米国でも同様で、簡単でないのは様々な既存の利害関係者が存在したことによる。
既存のカジノ施設や競馬場等の賭博施行者は、スポーツブッキングもラスベガスで実践されていたように、単純に特定施設のみに許容される賭博種の追加と考え、すぐにでもやりたいし、売り上げや来場客数を増やす好機と判断した。
かつ、競合を防ぐためには、自分達だけで施行を独占し、新たな主体にはやらせたくないと考えたが、これは当たり前の話になる。
一方、アリーナやスポーツ競技場を所有する施設者などは、スポーツブッキングは新たなビジネス展開の一つとして捉え、既存の賭博施設とは異なる枠組みでの新たな許諾を主張するという具合だ。
また欧州から米国に進出を企図するスポーツブッキング事業者や実際のシステムやソフト開発・運営に携わっているゲーム関連企業は、市場を発展させるためには当然より自由度の高いOn-Line/Mobileこそが認められるべきフォーマットという主張を展開する。
ここには既存の事業者と新たな事業者による市場の取り合いという側面もある。
もっとも制度のベースがOn-Site/In Personを前提にした場合には、顧客は特定地点に行かざるを得ないという制約があり、どうしても市場規模には限界が生じてしまう。
この点、On-LineやMobileを前提に、サイバー空間から顧客にスポーツブッキングを提供するフォーマットは、制約なしに、顧客層を一気に増やし、市場を拡大化できる要因になることは明らかだ。
オンライン化、モバイル化は顧客の支持も大きいが、反対の声も未だに根強い。
今まで供給制限的であった賭博行為の供給が一挙に拡大することにより生じる否定的な事象に対する反発があるからだろう。

2019年から本年に至る僅か数年間の間に、米国諸州ではスポーツブッキング許諾法が様々な州で成立し、施行されるに至っている。
但し、内容はバラバラで、上記フォーマットは州毎に異なり、整合性が無いという有様になっている。
個別の州の市場規模や既存施設や利権の存在等の固有の事情があったからだ。
結果的に米国では下記のフォーマットが混在する形になっている。
全ての前提は州内部の地点にいる顧客のみで、地理的に別の州に滞在する顧客は参加できないことが条件になる。

  1. 陸上施設で、対面(Retail/In-Person)のみの施設とし、既存のカジノ事業者(競馬場カジノ施設も含む)等に新たな免許を付与し、同施設内でのみスポーツブッキングを提供する(例:サウスダコダ州)。
  2. On- Line/Mobileフォーマットのみによるスポーツブッキングを事業者数を限定し、公募入札により選定し、免許を付与する。
    On-Site/In-Personのフォーマットは認めない(例:テネシー州等)。
  3. 既存のカジノ施設や競馬場におけるOn-Site/In-Personのフォーマットによるスポーツブッキングを認めると共に、同施設がオンラインスポーツブック事業者と連携し、On-Line/Mobileフォーマットによるスポーツブッキングを担うことも同時的に認める。
    あるいは既存のカジノ施設等の許諾事業者もOn-Site/In-Personのスポーツブッキングを施行できるが、これ以外に、On-Line/Mobileフォーマットのみでスポーツブッキングを提供する事業者を別途(数を限定して)認める(例:ニューヨーク州、イリノイ州等)。
  4. 上記とは全く別の連邦法(IGRA米国部族ゲーミング規制法)により認知されている部族カジノ施設に対し、州政府との契約再交渉により、部族居留地においてのみOn-Site/In-Personのフォーマットのみでスポーツブッキング提供を認める(例:ノースカロライナ州)。

スポーツブッキングは施行者にとり薄利で、Volumeで稼ぐビジネスとなることが基本となるため、固定施設、対面方式(On- Site/In-Person)だけであるならば集客効果はあるにせよ、利益への貢献は限られる。
明らかにOn Line/Mobileフォーマットの方がビジネスとしては合理的なのだが、様々な選択肢が州毎に乱立し、二つのフォーマットが共存しているということが実態になる。
カジノ場内部のスポーツブッキングラウンジは無くなることは無いのだろうが、若い世代の志向は明らかにOn-Line/Mobileのフォーマットへと傾きつつあり、中長期的には確実にOn-Line/Mobileフォーマットが主流になるのだろう。
因みにこれら二つのフォーマットを認める場合、異なる税率を設定することが多く、On-Site/In-Personsは税率は低いが、On-Line/Mobileは税率はかなり高い。
売り上げのレベルが根本的に異なるからである。
もっともOn-Line/Mobileが一般的になる前にできた制度では、これらを税率上、差別しない州がある(例:ネバダ州)と共に、二つのフォーマットを同じ事業者に認める以上、一律に高い税率を設定するという州もある。
どういうフォーマットを選定するか次第で制度や規制の在り方も変わってくる側面があるということになる。

(美原 融)

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