National Council on Gaming Legislation
コラム

2020-07-27

11.COVID-19への対応

感染症が社会に蔓延している場合、移動や交流、不特定多数の顧客の集合・集客等はリスクが高く、忌避すべき行為となってしまう。
この結果、これら業に従事する民間事業者は活動の縮小を余儀なくされることになる。
勿論感染のピークを過ぎれば段階的に活動が再開されることになるのだが、顧客・職員の安全、保護、社会的距離を確保する等の対策が必要になり、完璧に事態が収束するまでは企業も個人も慎重な行動を取らざるをえなくなる。
但し、これはあくまでも問題が収束するまでの過渡的な措置であって、一定期間後に治療薬やワクチンが開発され、これらが普及することになれば、恐怖心も心配もなくなり、恐らくまた元に戻ることになると想定されている。
コロナが終息したといえるまでは、かかる中途半端な対応が続くことになるのかもしれない。
移動や交流は人間社会の基本でもあり、いずれかはコロナ等忘れてしまう時がくるのであろうが、本当に全て忘れて元に戻るのか、これが何時になるのかはわからない。
但し、欧米等の事情を見ると既にロックダウン解除後の慎重な行動にも拘らず、一部では第二派の先駆けとも思える状態が生じている国もあり、今後どうなるかは予断を許さない。
現状ではまだ、元にもどすリスクは大きい。

かかる状況下で、三密の象徴的な施設群の塊であるIRの新たな企画・構想・実現を方針として声高に主張すると、何を考えているのだ、ほかに即刻実践すべき施策があろうという意見がでてきそうである。
とはいっても施設の実現は5~6年先のことでもあり、間違いなくその時点までにはコロナ禍は解決している。
今ではなく、将来を見据えてかかる開発・投資行為を今から準備しなければ間に合わないということなのだが、タイミングが悪いというのはかかる状態を意味するのだろう。
現状のコロナ政府施策に対する漠とした反発がある以上、IRに係る施策を推進することに対する感情的反発は通常よりも強くなってしまう。
常識的に考えれば、集客施設の営業すらおずおずと実施し始めているのが現状なのに、顧客を集客できるか解らない巨大な集客施設を作ってどうするのだという懸念や反発になる。
確かにコロナ禍は従来の生き方、働き方、遊び方の根本を変えることを迫ったわけだが、全てがそう単純に変わるわけではない。
もし、三密がダメということになれば、国際会議や展示会、大規模イベント、スポーツ観戦、コンサートや劇場等のビジネスやエンターテイメントは一切できないことになってしまう。
かかる状態が永続的に続くことなどはありえない。
現状は、危機からの脱出のための対応施策としてのリスク管理が集客施設には要求されており、これは一定の効果を納めている模様だ。
但し、この施策を一般化し、過剰にこれを考えるべきではない。
現状考えられているソーシャルデイスタンスの保持等のさまざまな対応策は今感染症が現存しているから必要なのであって、例えば1年後に治療薬やワクチンが開発され、普及するようになれば不要になる。
この異常事態への対応をニューノーマルとして、新たな施設整備の前提とすべきとする意見もあるが、これではおそらく過剰施設規模となってしまい、集客施設としての事業性が成立しない可能性が高くなる。
今ある危機に対処しながら運営するために必要となる施策と、状態が元にもどって将来の感染症リスクのために準備対策を怠らない施策とは明らかに異なる。

勿論将来に向けての感染症対策・予防策を考慮し、これに備えることも顧客や職員の安全性を確保する観点からは重要だ。
もっともおそらくこれは、これからできる当初の設備投資に伴う施設や機材等のレイアウトに大きな影響を与えるものではないはずである。
レイアウトに工夫を凝らし、機材等の距離感をあまり密にしないこと等は最低限必要かもしれないが、恒常的にソーシャルデイスタンス維持する要求が導入されると、投資規模や収支の在り方等全ての財務的な前提を変えざるをえなくなってしまう。
こうなるとカジノ施設のレイアウトやかのカジノ場の面積は全体の3%以内という政令で定められた前提も被現実的になりそうだ。
カジノの収益は設置されるテーブル、機械の数に比例する。
ソーシャルデイスタンスを考慮し、十分なスペースをとったレイアウトにした場合、テーブル・機械設置数は、全体の制約の中で、少なくせざるを得ず、コストは上がり、収益は減少することは確実だからである。
公衆衛生上のリスクに対する対応は、感染症法・特措法(新型インフルエンザ対策特別措置法)等、社会全体に共通する規範として、合理的かつ短期対処的な内容であるべきである。
これを理解しつつ施設整備を図り、将来再度感染症リスクが発生した場合には、個別施設毎に顧客と職員を保護するための適切な対応を図るというのが正しい対応だろう。

感染症に対する公衆衛生上の最大の防御は密を避けることで、集客施設のシャットダウン以外無い。
感染ピークを過ぎ、営業再開が認められるようになった場合には、個別施設毎に顧客と職員の安心、安全を守る自衛策が必要になる。
まず重要なのは施設への入場者数自体の制限(入場制限)であろう。
事業性が棄損することを覚悟し、運営行為を縮小しつつ、状況が落ち着いたら、段階的に元に戻すことが共通的な対応施策になるはずだ。
勿論、検温チェックや顧客・職員のマスクやフェースガード着用等の保護策や、接触を回避する様々な仕組みや工夫は必要だろう。
但し、これらはあくまでも暫時的な措置に留まるべきであって、恒常的な施策にはならない。
やはり一般顧客は、安心かつ安全な環境下で自由な来訪や旅行、利便性の高い宿泊施設や様々な施設機能が確保されなければ、恐らく集客施設には来ない。
MICEや劇場等のその他の施設も効果的な集客と営業をすることはまず難しい。
段階的に集客施設の運営を元に戻すにしても、当面の間、大きな収益欠損は免れず、不必要な費用縮減や事業継続を図るための新たな資金の導入を図りつつ、諸契約・免許上の権利、義務の短期的権利放棄、猶予、免除等を要求する交渉をすることで、時間を稼ぎ、市場の回復を待つ以外ない。
感染症のリスクの難しさは、あらゆる産業、あらゆる経済活動を委縮させ、企業の売り上げと収益を縮減させてしまうことにある。
企業にとっての対処策は、あることはあるが、解決策にはなりにくい。
時間を稼ぎ、事業の継続性を維持しながら、公衆衛生上の解決策(治療薬、ワクチン、社会的免疫性の確保等)を待つ以外、効果的な手法はない。

(美原 融)

Powered by WordPress & BizVektor Theme by Vektor,Inc. technology.
Top