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2020-07-20

10.IR区域認定は1ラウンド?2ラウンド?

IR整備法第九条11項七は、区域整備計画を提出する都道府県等の中から国土交通大臣が三つを上限として認定することを定めている。
三つというのは上限であって、三つ選ばなければならないという制度規定ではない。
法令に則った、しっかりとした区域整備計画が都道府県等により提案されなければ一つのみの認定ということもありうる。
一方、IR整備法の制定過程で、どう区域を認定するかが、政府と与党議員の間の議論の対象ともなった。
手を挙げる都道府県等の数が解からず、尚かつ個別都道府県等の準備状況・意図もわからなかった実体を踏まえ、状況次第でこの区域認定を1ラウンドでやるか、あるいは2ラウンドでやるという了解が与党と内閣官房との最終合意事項となった。
当初認定する区域が一つないしは二つだけであったとするならば、結果的に二つ、ないしは一つ枠が残ることになる。
この場合には、政府が再度第2ラウンド目の区域整備計画申請を募ることはありうる。
第一ラウンドで手を挙げる自治体が当初から明らかに二つ以下の場合で、第一ラウンドには間に合わないが、時間をかけて準備したいという都道府県等が存在する場合にも、最初から2ラウンドを前提とし、区域を認定するということは理論的・政策的にはありうる。

但し、1ラウンドでやるか2ラウンドでやるかに関しては与党と政府との政治的な了解事項でもあり、何等かの書面が残っているわけでもなければ、法律や政令等でかかる内容が規定されているわけではない。
また二回に分けてやらなければならない法的義務は政府には一切ないし、内閣官房もこの点、何等かのコミットを与党にしたわけでもない。
あくまでも必要な場合の了解という事実のみが残っている。
尚、基本方針(案)は、区域整備計画の申請期間として2021年1月4日から2021年7月30日迄の間と規定している。
この期間内に申請を出しさえすれば、申請のタイミングに応じ、二回に分けて国が選定すると解釈できないこともない。
但し、これでは二回に分ける時間的スパンが短すぎ、全く非現実的になる。
またもし、何の公平かつ明確な理由が無い儘に二回に分ける場合、各々の回でいくつ認定するかという問題が生じてしまう(さもなければ1回目で三つ認定されると、そもそも二回目は必要なくなる)。
この考え次第では、競争が歪みかねない(誰が第一回目のラウンドに参加するか、二回目の想定面子は誰になるか次第で、認定を受けられる確率が大きく変わるからである)。
First Come First Servedという原則で実施する場合、先に申請する都道府県等と後で申請する都道府県等との間に認定・選定の公平性を確保することは極度に難しくなる。
よってこの基本方針(案)の期間設定はあくまでも区域認定は1ラウンドで実施することを暗黙の前提としている。
このタイミングで基本方針を設定するならば、区域認定が二回に分けてなされることは絶対にありえない。
公平性の原則にもとるし、これでは国土交通省として説明責任は果たせなくなるからである。

但し、この政治的な合意は、都道府県等の準備進捗状況や個別自治体の状況や意向と輻輳し、様々な憶測を市場にもたらすことになった。
例えば下記の如き可能性が混乱の対象となった。

  • 2021年秋に想定される国の審査・評価を経て、区域認定される都道府県は1つないしは2つのみとなり、上限3つの枠が余る可能性:

要件を満たさず、認定を受けられない都道府県等が生じることを意味する。
もし、枠が余ることになれば、当初の区域認定申請時にはタイミングが合わず申請を断念したが、その後状況の変化によりIRを志向したいとする都道府県等が新たな認定のラウンドを要請することはありうる。
これを拒む理由は政府にはない以上、政策的に第二ラウンドは実現しうる。
尚、この場合、第一ラウンドで失格になった都道府県等が、敗者復活戦としてこの第二ラウンドに参加できるのか否かという議論がある。
法理としては不可能ではないが、現実的にはありえない。
地域の計画との整合性や特定民間事業者と精緻に検討した区域整備計画案が失格とされた場合、前提自体を根本的に変えなければ、再度新たな提案をする余地はないし、その時間もないというのが現実と想定されるからである。

  • 政治的圧力、個別の都道府県等の固有の事情から、二回のラウンドに分けて実施することを政治的に判断する可能性:

例えば市場としては極めて有望な都道府県等が自治体固有の事情により、認定申請のタイミングをずらしたいとして、政治的圧力を政府にかけ、二回のラウンドに分けて実施する場合等になる。
但し、かかる政治判断が横行するとすれば、他の自治体にとり公平な手続きとはならない。
前述した通り、自治体間の競争が歪む可能性があるからである。
確実に認定を受けられそうな大都市と異なり、地方の観光都市にとり、一回目、あるいは二回目どちらに参加することが競争上優位になるかの判断次第では、競争の様相が異なってくることになる。

常識的に判断した場合、区域認定手順を二つに分けて実施することはまず考えられにくい。
現段階(2020年7月)で明確に意思を示してはいないが、潜在的な意欲を間接的、非公式に表明している東京都がIRの推進意思を表明するか否か、表明するとすれば何時になるかがわからないために、第二ラウンドがありうるかもしれないという疑心暗鬼が生じていると判断すべきであろう。

(美原 融)

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