National Council on Gaming Legislation
コラム

2020-08-03

14.国会議員とIR疑惑?

500.Comが秋元議員に賄賂や工作をしたといわれているのは2017年9月から2018年2月迄の期間と言われている。
IR推進法の可決は2016年12月で、2017年4月から推進本部・推進会議が立ち上がり、整備法の骨格の検討が始まった。
秋元議員は推進法・整備法の成立時点では衆議院内閣委員会委員長や国土交通庁副大臣等の要職にあったことは事実である。
500.Com社は正式にはカジノ事業者とはいえないが、日本へのカジノ進出に目をつけ、情報提供や整備区域総数の増加を請託する目的をもって、秋元議員に近づいたというのがマスコミ情報になる。
民間事業者が代議士に接触し、情報を取ったり、陳情したりすることはおかしなことでもないし、違法行為でもない。
諸外国でも同様なことは実践されている。
勿論何らかの事情で第三者たる日本企業のエージェント経由、金銭を受領し、これを政治資金規正法上記載しなかったり、何らかの請託に絡んで金銭授受があったりしたとすればこれは違法行為となる。
これは日本でも国外でも同様であろう。
それにしても2017年の時点では、沖縄県知事は既にIR誘致を明確に断念し、行政も民間団体も動いていないのに沖縄でセミナーを開催したり、北海道の中でも誘致活動としては他の地域に劣後する市町村を後押したりするなど同社の行動はどう考えても、的がはずれているし、賢くない。
当初から数か所のみと判断されていた区域数を政治の力で何とでも変えられると思っていたのか。
あるいは政治的コネがあれば原則何処にでもできるはずと思っていた行動ということであろうか。
これでは請託としてはピントがずれている。

区域数を3ケ所とすることは、超党派議連の方針として当初から決定されていたが、IR推進法では法文自体に区域数を限定する文章はない。
一方2016年12月13日の推進法参議院付帯決議により、区域数は「厳格に少数に絞る」、「区域設置数の上限を法定する」ことが明記された。
これは当初から超党派議連議員の頭にあった数をイメージしながらも、詳細の区域数決定を将来の政治的判断に委ねたことになる。
推進会議取り纏めもこの趣旨を追随し、区域数には触れられていない。
結局IR整備法の最終的な政府・与党の折衝において、区域整備数上限は、当初から考慮されていた3つに落ちつき、かつ区域数の見直しは、効果を検証した上で行うべきとするニュアンスを込めて、最初の免許交付後7年目に制度の見直し規定が明文化されたという事情になる。
よって区域数を増やすという制度改定に繋がる議論は今から10年待たないとできない。

一方、上記コンテクストの中で、果たして秋元議員に職務権限があったのかに関しては、は大きな疑問が残る。
2017年7月末に推進会議の取り纏めがなされ、制度的枠組みの方向性が示されたが、この時点以降、立法府の構成員や省庁の幹部が何等かの形で関与し、影響力を行使できる側面は極めて限定される状況だったからである。
整備法案の策定は推進法に基づき、内閣官房が調整を担い実行し、立法府との調整が必要な項目に関しては、与党(自民公明)の了解を得る手順が取られた。
政治が関与しうる項目は限定され、区域数に関しては当初から3つ程度ということが議論の前提となり、ここに政治的判断が入る余地はなかったことが事実であるといえる。
主務官庁の大臣や副大臣、あるいは与党議連の幹部の意思でこの数を恣意的に増やすということはまず不可能という状況であったと考えてもよい。
かつ主務大臣や副大臣は、この意思決定プロセスには関与していないし、関与できる法的権限もないのが現実であった。
また、制度的仕組みとしても、公共工事のように政治家が箇所付けという形で、単純に区域選定に関し、影響力行使ができないような仕組みになっている。

この意味では、請託の根拠は事実関係と共に極めて曖昧である。
もっとも秋元議員に対する起訴内容並びに疑惑は、2017年9月講演料名目で200万円を受領、2017年12月中国深圳への旅行費用等168万円の負担要求、2017年9月議員会館で現金300万円を受領、2018年2月加森観光経由北海道への旅行費用76万円の負担等総額約760万円を受領したというものだ。
事実とすれば、国会議員としてはかなり脇が甘い。
これでは単純に政治献金と考えることはできず、何等かの裏の意図があったと疑われるのも無理はない。
真偽のほどは法廷の場で明らかになるのであろうが、この事案がマスコミと国民の間にIRに対する強い不信感を醸成したという大きなマイナス効果をもたらしたことは疑いない。

興味深いことに本年7月になり、上記秋元議員の中国訪問に同行した白須賀議員も500.Comから旅費の相手側負担、現金100万円の受領を認めたが、職務権限も無く、本人も事実を認め、反省しているとの理由から収賄容疑の立件はみおくられたとの報道がなされた。
事実行為としては秋元議員と同じで、異なるのは金額の多寡と反省しているか否か(?)だけであろう。
かつ事案としては半年前の情報と同じで、ニュースの価値等は殆ど無い。
興味深いのは、現金封筒を受け取った場所(トイレ)や手法(封筒)、その金でお土産用の数十万円の高級バックを買い、カジノで遊び、残りは持ち帰った等どう考えても本人及び関係者以外知りえない情報があることだ。
おそらく誰かが捜査情報の一部をマスコミに意図的にリークしたのであろう。
IRに対する国民の不信・不安を煽る狙いなのか、IR疑惑を再燃させ、政府による基本方針策定を遅らせることを企図したものなのか。
一体誰がかかる行為を画策したのであろうか。

(美原 融)

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