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2022-07-11

165.オンラインカジノ:依存症対策?

オンラインカジノはアクセスに何等かの規制があるわけでもなく、現状、何時でも、何処でも、スマホやコンピューターを通じ誰もが簡単にアクセスできる仕組みを基本としている。
ここには陸上カジノに存在する入場料支払いも無ければ、入場回数制限も、細かい規制等何もない。
考えてみれば恐ろしい話であって、公営賭博やパチンコ、陸上カジノ施設等に共通して適用される国や地方公共団体、関連施行者による依存症防止対策や規範の枠外で、何らの規制の対象にもならない賭博行為のセグメントがサイバー空間に存在しているということになる。
賭け金単価に上限を設けたり、累積ベット(賭け)金額を規制したりするサイトも一部にはあるが、消費する金額に一切規制が無いサイトが過半だ。
勿論原資は現金であって、ネットカジノでは与信行為等なく、まず資金を預託することが必要で、金が無ければ一切遊べないという仕組みを前提とする。
よって遊ぶ原資は、銀行口座からのネットバンキングによる直接送金、クレジットカードやデビットカードによる引落し、あるいは銀行口座から電子マネー支払い代行取引業者への送金等が無ければ何事も始まらない。
銀行口座に資金がなくなればその時点でアウトになる。
この意味では、自分が所持している資金の範囲内(クレジットカード決済の場合には限度支払い額)でしか遊べないことになり、所持する現金以上の賭け事はできず一定の限界値は存在する。
周りに誰もいないネット環境では自己の判断と使える現金の上限しか行動を抑えることのできるものはない。
勿論依存症患者の常として、第三者から資金を借りたりすることはあるのかもしれない。

一部ネット賭博事業者は、申告による自己排除規定を設けたり、賭け金上限規定等を設けて表面上自己規律や自己規範を設けたりして、必要な対応をしている旨公表しているのだが、効果のほどは解らない。
やってる感を醸し出しているだけかもしれないし、何をどこまで真面目に実践しているのかを検証することはできにくい。
軽課税国等制度や規制が緩い国の企業である場合、責任ある主体か否かも、企業の実態も不明なことが多い。
複数言語で賭博プログラムを提供する彼らにとり、顧客は様々な国、地域に跨り、個別の国や顧客の事情等殆ど関係無いのだ。
あるいは非営利NGO組織が事業者の健全性や責任ある賭博を第三者の観点から認証する仕組みも存在するが、この非営利組織は業界団体が組成したもので、どこまで信用できるのか解らない。
これら事業者に対し、賭博依存症の懸念があるとして何等かの規制や自粛を迫ること、協力を求めることはほぼ意味のない行為になる。
一方、制度や規制が整った先進国で事業者としての廉潔性も担保され、免許を得てサイバー世界で賭博行為を提供する事業者もいる。
かかる事業者は制度上もしっかりとした依存症対策対応措置を取ることが要請されており、それなりの対応をやっている模様だ。
但し、かかるまともな事業者は自主規制として、Geolocationチェックにより賭博行為が禁止されている国の顧客からはサイトにアクセスできないようにすることが多い。
自国では合法でも違法としている他国の国民にサービスを提供することは、企業としての責任・倫理を問われるからである。

この様にオンライン賭博が依存症対応施策にもたらす問題は、①責任ある事業者か否かを利用者は確認できず、賭博提供行為自体がグレーな存在である以上、依存症対策等何らやっていないことが多いこと、②事業者が外国に所在している場合、何等かの規制・監督・管理をすることも難しく、課税もされずに放置されていること、③我が国ではギャンブル等依存症等対策基本法に基づき、公営賭博、パチンコ、カジノ等を対象とし、国、都道府県等が実施のための方針を定め、公民の個別施行関連事業者も様々な対応策の実践に参加しているが、オンライン賭博と関連外国事業者は、全くこの範疇外になり、対応手法がないこと、④システムがサービスを提供している為、常時人間が顧客行動をモニターし、顧客の依存傾向をチェックしているわけではないこと、⑤市場の規模も、国民の関与の在り方や国民に対する危害も実態のデーターが無く解らないが、依存症に陥っている相当数の国民がありうると共に、結果的に国民はリスクに晒されていること等にある。
よって、通常の対応措置・手法では埒があかない。
国民に対し、アクセスしないように啓蒙すると共に、何らかの形でサイトをブロックし、アクセスできないようにするというのは一つの手法だ。

もっとも本来オンライン賭博の特徴は個別の顧客毎に賭け事の履歴を正確にデーターとして残せることにある。
よってトレーサビリテイーは極めて正確だ。
この特徴を利用し、AIにより顧客の異常行動ないしは依存症の症状(例えば長時間・継続的な賭け金行動、かなりの高額の賭け金行動、失敗を取り戻そうとする継続的な行動等)を自動的に捕捉し、特定化することができれば、潜在的リスクのある顧客を特定化でき、個別の顧客の行動に介入し、注意を喚起することができる。
オンライン賭博が制度的に違法、あるいはグレーである場合、事業者はかかることをするはずがないが、逆に制度的にこれを認知し、免許制の下で我が国にサーバー設置義務を課し、管理・監督・指導ができる場合には、AIを活用し、異常賭け金行為者をコンピューターが特定し、注意を促す等未然に潜在的依存症者を排除することを義務づけることが可能になる。
極めて逆説的だが、野放しにして、放置するよりも、厳格な規制を設け事業者と国民を安全な枠の中に囲い込む方が問題解決に資するということになる。
勿論この場合、国民が危険な領域のサイトにアクセスせず、健全な認められたサイトのみを信用し、利用するということが前提になってしまう。
これは国民個人の選択になる。

(美原 融)

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