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2021-02-01

60.カジノ場入退場管理の在り方③

不適切な主体がカジノに入場しなければ、カジノ場は健全・安全になり、不測の事態が生じるリスクも少なくなる。
このためには、不適切となる対象者に係る個人情報をデータとしてしっかり把握し、これを常にアップデートしている状態にあれば、入場時点での本人確認により、不適切者を特定し、排除することが可能になる。
生体認証を可能にする個人情報データがあれば、完璧な排除は可能だ。
本来、殆どの問題を解決できるのだが、入退場管理には対応に苦慮する悩ましい問題もいくつかあることが解かっている。

例えば、 

  • 暴力団構成員及びその共生者、反社勢力一般の排除:
    法的な入場禁止対象者は暴力団構成員のみになるがその氏名は公開情報として取得できるものではない。
    更なる問題は暴力団の周辺にいる共生者等だが、これに関しては完璧な情報データ等は存在しない。
    所謂反社勢力排除に関する国の政策の基本は平成19年6月19日犯罪対策閣僚会議申合せ「企業が反社会的勢力による被害を防止するための指針」とこれに基づいた各都道府県等の暴力団排除条例にある。
    要は、①契約や施設利用約款に反社条項(暴排条項)を入れ、②警察OBの組織である暴力追放運動推進センターや調査会社等から情報を集め、反社勢力のデータベースを自社で構築し、逐次更新。
    これを活用して、適切な反社勢力排除を自助努力で実践するということが求められている。
    かかる体制で十分かつ正確な情報を把握できるか否か、完璧に水際で暴力団構成員やその共生者を排除できるか否かは不明である。
    私企業の施設に暴力団構成員を法律上の入場禁止対象者とする法律上の規定自体が過去に例がないのだが、対象は賭博施設であって、通常の商業施設ではないのだ。
    本来完璧な情報や公安・警察当局との密接な情報提供や協力連携の仕組みが制度的に明確であることが好ましいのだが、これは担保されていない。
    時間をかけて反社データベースを作ったり、既存の関連諸団体の協力を得たりしたりすることで、どこまで実効性のある不適切者排除ができるかは必ずしも定かではない。
    尚都道府県等のRFPをみるといずれもこの問題に関しては都道府県公安委員会、県警本部 、市、国との連携協力がうたわれているのだが、国は関与せず、かつ、統一的な管理もせず、単に都道府県等と民間事業者に対処を委ねるのであろうか。
  • 家族(申請)排除対象者の排除:
    本人申請による依存症自己排除対象者の場合には、本人同意のもとに個人情報を得て、個人情報や生体認証により入場しようとする時点で排除することは可能だ。
    一方家族の申請による依存症排除対象者の場合、本人の同意なしに、個人情報を取得し、これを排除のためのツールとして用いる場合、問題が生じうる可能性がある。
    家族の同意のみでこれを実施するためには、如何なる根拠、判断基準で当該対象者の個人情報を取得し、効果的な排除ができるのかという問題に繋がってしまう。
  • 制度外の不適切者の排除:
    制度的に入場は禁止できないが、民間事業者や地方公共団体・地域社会から見て、果たして入場が適切といえるかという部類の不適切者も存在する。
    例えば生活保護者、禁治産者、個人としての破産者等になる。
    施設約款上かかる個人を不適切者として入場を排除することは勿論できるが、果たして好ましいか否か、個人の人権の問題があると共に、どう本人同意を得て個人情報を把握できるかという問題もある。
    適格な個人情報を把握できなければ、対象者を特定できず、効果的な排除はできない。
    勿論、何等かの問題を生じた個人の場合には、個人情報を把握し、以後私的排除リストに加えることはできるのだが、事前予防的な動き~入場排除~はできにくい。
    その他過去に場内で暴力沙汰を起こした者、秩序維持のため排除が好ましい者等事業者固有の判断で排除リストを増やす、あるいは他のカジノ事業者と連携し、好ましくない排除対象者をプール化し、データベースを供用することも可能だが、時間をかけた準備と体制が必要になってしまう。
  • 非居住者に対する入退場管理:
    居住者たる日本人は厳格な入退出管理の対象になるのだが、非居住者はパスポート等により本人確認の対象になるとはいえ、入場料支払いも不要、特段のチェックも不要な顧客であることが多い。
    居住者と同様に非居住者に関しても本人特定確定事項等その他の個人情報を取得し、厳格な報告の対象とするのだろうか。
    その必要性があるといえるのか、現状必ずしも明確ではない。
    尚、インバウンドの観光客に対し、かかる管理をする国は何処にもない。
  • 外国人(居住者並びに非居住者)入場管理:
    パスポートの目視なのみでは居住者たる外国人か非居住者たる外国人かを識別できない。
    本来入場料を払うべき主体が、払わなくともMNCではなくパスポートを提示すれば入場料無しではいれてしまうことになる。
    これは事業者も管理できないわけで、もしかかる事態が発覚しても事業者が何らかの責任・義務を担うことはおかしい。

等である。

いずれも、管理の対象となるのか、何をどう管理するのか等IR整備法には明確な記載のない事項でもある。
但し、実務上は無視できないわけで何らかの対応策が必要になることは明らかであろう。

(美原 融)

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