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2021-01-27

59.カジノ場入退場管理の在り方②

カジノ場入退出管理の目的は、入場禁止対象者や不適切な主体を効果的にカジノ場の入り口で特定化し、この入場を排除することにある。
一部不適切者の排除はIR整備法上の民間事業者の義務でもあり、罰則がある以上、手を抜くことはできない。
もっとも手続きや手順があまりにも複雑になると、入退場に時間がかかり、顧客の利便性を著しく損ねることになりかねない。
かつ手順が複雑すぎると意外な盲点も生じてしまう可能性もある。
顧客から見た場合、入退場時の複雑な手続きは、時間もかかりそうで、それがあるだけで行きたくもないという抑止効果をもたらしかねない。
よって、事業者にとり、できる限りシームレスに、顧客が面倒くさいと思わないように、短時間のうちに本人確認や様々なチェックを行うことが必要になる。

現行制度の制約に配慮しながら、時間の短縮化を図る手法はある。
またいくつかの考え方を組み合わせることでこれをより効果的に実践することもできる。
勿論全て規制当局がかかる考え方を認めるか否かは不明である。
規制の在り方次第で、何を何処までできるかが変わってくる。

これら考え方には即ち下記等がある。

  1. 電子的なデーターベースとの照合:
    MNCは本人確認手法としては最強の手法でもあり、もし不適切な主体の個人情報をデーターベースとして把握できていれば、この情報を入場者の氏名と全数リアルタイムで照合することにより、一瞬で不適格者を特定できる。
    回数制限はカジノ管理委員会が保持するデーターベースに電子的に照会する。
    暴力団構成員、反社勢力、その他不適格者情報、本人・家族依存症排除対象者リスト等は、事業者が自ら集めたデーターベースと照合することが前提になりそうだ。
    もっとも事業者が自ら特定した不適格者や依存症関連排除対象者はデーターベースが明確で対象者を確実に捕捉し、排除できるが、暴力団構成員や反社勢力となると、原データ自体の正確性は必ずしも期待できず、果たして適切・適格な排除が完璧にできるか否かには一抹の不安が残る。
    システムとしてはしっかり構築できても、肝心のデーターベースがしっかりしていなければ不適切者排除がうまくいくとは限らない。
    公安・警察当局がこの点、どう民間事業者と連携・協力できるかがポイントなのだが、現状では一部大きな課題も残っているという整理になる。
  2. MNCと生体認証とのリンクによる手順の簡素化:
    第一回訪問時にはMNCによる本人確認が必要だが、このMNCの個人情報とリンクする生体認証の仕組みを入場時に実施し、以後の退出、二回目以降の入退場時には顔認証により本人確認し、事業者の顧客データーベースとリンクさせることにより、様々な手続きを簡素化できる。
    MNCも生体認証も偽造や不法使用はまず不可能に近い。
    生体認証は機能的にはMNCと同等の効果があり、これを利用することによりMNCを毎回持参する必要はなくなる。
    もっとも法文上の規定を簡単に、かつ柔軟に解釈できないという意見もあり、ハードルは高い。
  3. 手順(Sequence)を分散し、一部を入場する前に処理:
    全ての入場手続きを入退場管理ゲートで行わず、顧客が事前にできる限りの入場処理を行えるように手順を分散し、一部を前処理する。
    例えば電子的に所定のフォーマットにより、PCないしはスマホから事業者に対し必要な個人情報を提供し、回数制限チェックや入場料支払いを済ませ、入場時点ではMNCによる本人確認のみを行うこととすればよい。
    MNCによる本人確認以外の全ての手続きを事前に行うわけである。
    かかる顧客のための特別入場ゲートを設ければ、かなり手続きは簡素化し、人の流れも変わることより、混雑を避けることができる。
  4. MNCとリンクする顧客ロイヤリテイーカードの発行:
    上記2と類似的、あるいはダブルになるが、事業者がMNCにて本人確認後、インハウスで独自の写真付顧客ロイヤリテイーカードを初回入場時に作成する。
    顧客の賭け金毎にマイレージ様なポイント等をつけ、顧客に還元することを意図するカードになるが、MNCの情報とリンクすれば、二回目以降はこのカードのみで入退場を可能にすることも技術的に不可能ではない。
    勿論これと生体認証とを組み合わせることも可能であろう。
    MNCとリンクする本人確認を確実にできる何らかのツールがあれば、毎回類似的なややこしい入場管理を実質的に簡略化できるわけである。

上記に限らず、電子化、システム化したり、受付時点で全てを処理するのではなく、如何に手順を分散し、予めオンラインや携帯で処理したりすることにより、入場手続きに係る処理時間を短縮することができ、顧客の利便性を高めることができる。
もっとも一部手順は法律上の要件(例えば毎回入退場時点におけるMNCの提示等)となっており、単純にこれを変えることはできそうもない。
カジノ管理委員会がこれを柔軟に解釈し、実務的要請を認める権限があるのか否か、実際できるのかという問題は残ってしまう。
柔軟な対応をとることによっても制度本来の趣旨が損なわれるリスクは殆ど無い。
実務的要請を規制機関が理解し、運用上、柔軟なスタンスを取れるか否かによっても状況が異なってくることになる。

(美原 融)

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