2021-01-25
58.カジノ場入退場管理の在り方①
IR整備法は、カジノ場内への入退場に関し、厳格な手続きや遵守規定を定めている。
初めての顧客がカジノ場に入場しようとする場合、この手続きに結構時間を取られ、余程うまく仕組みを考えないと確実に入り口で混乱するのではないかという意見がある。
不適切な主体がカジノ場に入らないためのセーフガードなのだが、顧客が煩わしいと思ってしまうと顧客の離反を招きかねない側面がある。
尚、施設的には、カジノ場への入り口には、恐らく入退場管理ブースと入退場ゲートを物理的に分けて設置することになりそうだ。
人の流れをできる限り分散することが混雑と混乱を避ける得策となるからでもある。
ここでいう管理ブースとはMNCによる本人確認、入場不適切者ではないことの確認、入場料支払い等の手続きをする場所になり、ここで入場料の支払いをすますと、本人確認とリンクしたQRコード付領収書が発行され、これをもって入退場ゲートへと進むことになる。
入退場ゲートでは入場時点での時刻が刻印される。
ブースとゲートを分けることにより、入場料を支払っても即刻入場しない人の利便性を向上できる。
かつ、非居住者や24時間以内の再入場者等は手続きを簡素化することができ、直接入場ゲートへと進めるため、入り口地点において人の流れをスムースに分けることができることになる。
さて、カジノ場への入場は具体的にどういう手順となるのか、民間事業者は何を考慮しなければならないかを考えてみよう。
まず顧客は、マイナンバーカード(MNC)の所持・持参が必要になる。
①カードを入退場ゲートの受付に提示し、個人認証を胎動するためには差し出された端末にカードを差し込み複数のピン番号を入力する必要がある。
ここでピン番号を忘れた場合はアウトになる。
間違えたインプットを数回押してしまうと、カード自体が使えなくなり、かつその場で修復できないため、入場どころではなくなってしまう。
②事業者はこのゲートにおいて、まずカードの写真と本人が一致していることを目視で確認する。
③システムが個人情報を確認し、本人が法定年齢以上であることを確認する。
法定年齢以下の場合、この場で入場拒否になる。
④オンラインでカジノ管理委員会に氏名情報を伝達し、当該顧客が回数制限に引っかかっていないことを照会する(全数照会)。
⑤カジノ管理委員会のシステムは氏名情報を把握し、既存のデーター・ベースと比較、過去の入場回数をチェックする。
また新たな顧客入場情報である場合は氏名情報と回数をデータとして記録する。
⑥オンライン、リアルタイムで回数制限対象となるか否かの回答をカジノ管理委員会のシステムが事業者に通達する(どの様な回答となるかは未だ不明である。
一定期間中何回目の来場であるかをカジノ管理委員会のシステムが通告することが本来好ましい。
複数回一定期間内に来場した顧客が上限に達する場合、入場に際し、何らかの警告アラートを与えることができるからである。
この場合、不用意に24時間以上カジノ場に滞在すると違法行為になってしまう)。
⑦制限対象になった回数をオバーするとの通知がカジノ管理委員会からきた場合には本人に伝え、入場を拒否する。
⑧同時並行的に事業者が保持する反社リスト、入場不適切者リスト、依存症関連自己排除・家族排除プログラムリストの対象者であるか否かをシステム的にチェックし、入場可能かどうかを検証する(反社勢力・暴力団個人情報等の原データは公安・警察当局が保持しており、本来ならばカジノ管理委員会経由、公安警察当局のデーター・ベースにオンラインで照会すれば事足りる。
但し、制度上は、反社チェックは単純に事業者の義務とされ、如何なる協力が得られるのかは定かではない。
公安・警察当局が非協力的である場合、事業者が何らかの方法でデータ蓄積せざるを得ない)。
⑨何等かの理由で入場拒否対象者として確認された場合には入場拒否となる。
⑩当該顧客の入場適格性を全てクリアーした後に、入場料の支払いを求める。
この場合の支払いは、カジノ行為とは何ら関係がないため、現金、クレジットカード、デビットカード、電子決済なんでも可能なはずだ。
⑪入場料受領と共に領収書が発行される。
おそらくこの領収書は個人情報と紐づけられたQRコードの入ったもので、入場時間を入場ゲートで刻印、入場を確認し、記録することになる。
⑫この領収書兼入場カードは24時間の間は有効、この時間内であれば、この入場カードを用い何回でも入退場が可能になる。
⑬24時間を過ぎた場合、別の1日としてカウントされ、このカードでは退出できなくなる。
退出時に再度1日分の入場料を支払うことになるが、2回目の入場カウントになることの連絡がシステム的にカジノ管理委員会になされる必要がある。
⑭入場カードは24時間を過ぎると、失効し、再度これを用いることはできない。
何ともはや、とてつもなく煩わしい手順となる事は間違いない。
制度上の規制と実務上の要請が組み合わさると、どうしても複雑な手順・構図になってしまう。
勿論上記ステップの中には、システム的対応により瞬時に処理できる手順もあれば、他の代替手段を用いることにより時間や手順を短縮化できる余地があるものもある。
かつ初回はかなり手順と時間が必要だが、例えば初回訪問時にMNCと生体認証をリンクさせれば、二回目以降来場した際は生体認証で本人確認が可能になる。
手順等を大幅に簡素化できる余地があるわけだ。
勿論これはカジノ管理委員会の許可事項になり、法律上は「毎回」MNCによる本人確認というたてつけなのだが、MNCとリンクした生体認証はまず偽造することも、変えることもできず、MNCを提示することと限りなく同等になると判断することが常識だろう。
この柔軟性をカジノ管理委員会が認めるか否かがポイントになるのだろう。
顧客に取り、如何にシームレスに、待たずに、入退場できるか否かは集客施設にとりかなり重要な要素になる。
時間がかかれば確実に顧客の反発を招きかねないからである。
(美原 融)