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2020-12-11

50.IR・カジノ顧客の内国人・外国人比率

複合的な機能を保持する集客施設を考え、実現する場合、どの位の数の顧客を集客できるのか、如何なる顧客層(老若男女、日本人ないしは外国人)を集客するのかはIRの運営を担う民間事業者の戦略次第であろう。
施設の規模や施設が提供する様々な機能に伴い、如何なる顧客層を如何に集客できるかを考えることになる。
我が国で想定されているIRとはMICE、ホテル、カジノ、劇場、飲食・物品販売施設等を包括する複合施設になり、国内外の多様な顧客層を潜在的に集客できる施設になる。
ビジネスや観光等で我が国を訪問するインバウンド外国人旅客を相当程度包摂することができる施設となる事は間違いないだろう。
IR推進法、IR整備法の立法過程で、このIRがインバウンド観光客を飛躍的に伸ばす戦略的目玉施設となるとか、来訪外国人来訪旅客を主たる顧客とするという必ずしも正確とはいえないイメージで一部の識者によりIRが語られたことがある。
インバウンド旅客を増やす一要素になることは疑いがないのだが、外国人を主要顧客として大規模集客施設を設けることができると考えること自体、若干ピントがずれているといえる。

実際の集客施設とその機能、サービスの在り方を冷静に考えれば、これら集客施設群は基本的には日本人顧客を主体とする施設群となり、かつ相当数のインバウンド顧客をも包摂できる施設となりうると考えることが本来理に適っている。
一方IR=カジノ施設と判断しているIR反対派の識者は、脈略もなく、IR=カジノ施設=インバウンド顧客主体の施設と考えた節がある。
IRとは我が国主要都市・観光都市に設置される複合観光施設を想定している。
MICEやその他の集客施設、カジノ等も7~8割は日本人顧客であり、数割程度がインバウンドになりうるとするのが、常識的的な見立てになる。
なぜか反対派の識者は、「IRもカジノも顧客の過半は日本人ではないか、結局日本人のためカジノ施設ではないのか」というちょっとピンとの外れた意見を主張するようになった。
IRもカジノも主要顧客は外国人ということで、国民の目をごまかそうとしている。
もし日本人顧客が8割ならば、やはりインバウンドではなく、最初から日本人のためのカジノ施設ではないのかという主張なのであろう。

倒錯した議論が生じたのは、最初の前提を読み間違えたからで、IRを構成する施設群のイメージをはっきりつかみきれず、如何なる顧客を惹きつける施設となるかをあまり理解しなかったためであろうと思われる。
最初から論点がずれていたのだ。
外国人が専らの利用となる施設を設ける等とは誰も主張していなかった。
インバウンドが成長の鍵、如何にインバウンドにとり魅力のある施設を設けるかがIRの目的と殊更一部論客が主張したことがねじれ現象が更に複雑化した背景であろう。
反対派は、IRのその他の施設を全て無視し、何とカジノ施設のみに注目し、主たる顧客は外国人ではなく、やはり日本人、インバウンド誘致等は虚構にすぎず、日本国民から富を収奪するための施設ではないかという議論を起こしたわけである。
もしIRの顧客の過半がカジノ目当てで、かつ全体収入の重要部をカジノのみが支えるということが、事業の前提であるとしたならば、誰が顧客なのか、誰のための施設なのかという論理はありうるが、現実的とも思えない。
これも倒錯した議論なのだが、外国人が専らの顧客である場合、顧客による依存症も、悪の介在も日本人には関係ないという主張を賛成派がすると思っていたのであろうか。

顧客の消費性向からすれば、確かに外国人を囲い込むことのほうが効率は良い。
ホテル宿泊、飲食、MICEイベント等への参画等様々な活動に参加する可能性、消費の相乗効果は極めて高くなるからである。
一方日本人顧客は、一定の目的意識があってIRを訪問することが基本となるが、数としては外国人を遥かにしのぐことが現実で、この消費の蓄積もかなり大きなものになる。
IRとは基本的には複合的な集客施設であり、MICEやエンターテイメント、ホテル、劇場、カジノその他の集客施設いずれも、内外の顧客を無差別的に集客する。
MICEは万単位の顧客を前提にするし、ホテル施設も客室が数千ある場合、万単位の顧客が宿泊してもおかしくはない。
劇場やその他のアメニテイ施設やイベント等も数千から万単位の集客を可能にすることは間違いない。
カジノも相当の顧客を誘因するかもしれないが、入場して遊べる人の数は基本的には座る席が上限になる。
かつ一日中遊ぶ人はいないわけで、1時間から数時間で退出し、顧客は回転すると判断され、時間帯・曜日によっても、客の入込は異なる。
瞬間的には5千人も入れないし、常に満席であることはまずない。
この意味では、顧客の数という観点からいうと、カジノよりもカジノ以外の集客施設の方が圧倒的に多い。
かつ、ビジネスであれ観光であれ、あるいは施設のサービスを楽しむ市民であれ、IRを訪問する顧客数という意味では、その過半数はどう考えても日本人以外、ありうるわけがない。

勿論、これは想定上の議論であって、実際は、公的主体が実施方針の中でIRの中核施設に関し如何なる施設群、サービス、機能を要件として期待するか、これに答えて応札する民間事業者が如何なる施設群、サービス、機能を組み合わせた提案にするか、総投資規模に見合うリターンを確保するためには、如何なる集約戦略やマーケッテイング戦略を取り、如何なる顧客層をどう集客できるか次第でも集客数や消費の効果も大きく異なってきてしまう。
例えばMICE戦略に成功すれば、万単位、数十万単位の来訪客を実現することは不可能ではない。
内外のIncentive Tourをうまく組織化できれば、施設内で、支出単価や消費効果の高い顧客を集客できる。
カジノも内外のVIPと呼ばれる優良顧客を効果的に集客できる仕組みとなる場合には、顧客数は少ないが企業収益には大きな貢献をすることができる。
この意味では、消費の相乗効果とはインバウンドが多ければ生まれるというものではない。

(美原 融)

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