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2021-05-12

89.カジノ管理委員会規則案:⑨対顧客係争処理

チップやさいころ、カード等人間がハンドリングする行為は手さばきの在り方や手順のミス、顧客の取違い、ポジションの思い違い、計算違い等通常ありえないと思っていても、ミスが生じてしまうことがある。
短期養成のデイーラーは隣にスーパーバイザーがいても、緊張のあまり手さばきが鈍い、遅いというのがすぐばれる。
配当の計算間違いでもしたら、途端に顧客から大クレームがでてきて大騒ぎ等ということも間々ある。
慣れてる顧客は、悪意はないにしても意図的にかかるデイーラーのミスを誘うような行為をするから質が悪い。
煽られると人は焦る。
間違いもしやすくなる。
そうなると係争も頻発する。
係争とは詰まるところどちらが勝ったか(Win)、負けたか(Loss)、デイーラーやカジノ側の手順は適正、かつ公正であったかに関することが殆どになる。
勝った、いや負けたという類の話だ。
人(デイーラー)とのやりとりの中で賭け事が行われる場合、事が賭け事である以上、どうしても熱くなることがある。
かかる場合、些細なことが理由でデイーラーと顧客の間で係争が生じやすい。
こうなるとゲームはまず中断する。
解決できない場合は、ピットボスやフロアパーソンがでてくることになるが、事実確認のために監視室のカメラで録画されたゲームの進行を確認して判断するということも間々ある。
但し、一端係争がおきると、あー言えばこう言う、こう言えばあー言うという具合に収拾がつかなくなることも多いのだ。
小銭であればたいした問題にはならんのだろうが、大きな賭けの場合や、負けこんでいるときのここ一番の勝負等となると顧客も意地になるのだろう。

 ネバダ州ではカジノにおけるカジノ事業者・顧客間係争は明確に規則としてルール化され(NRS463.363(1))ており、カジノ側と顧客の間で係争が解決できない場合で、対象が$500以上になる場合には直ちに規制当局(GCB)に通告、$500以下の場合には顧客に対し、規制機関による仲介を要請する権利が顧客にあることを通告する義務がある。
規制当局内では法執行局(Enforcement division)が関与し、最長30日間調査し、結果を通告。
どちらかの当事者が不服の場合、20日以内にGCBに上訴となるのだが、こうなると通常の非法廷裁判手続きに近い。
シンガポールでも同様なルールが規則として存在する(カジノ管理法第111条)。
手順は類似的で、係争が当事者間で解決できない場合、規制機関(CRA)の査察官に一定の書式により調査を依頼。
調査の結果として判断が下されるが、不服の場合には規制機関内の顧客係争委員会(Patron Dispute Committee)に上訴でき、その決定にも不服の場合、更に規制機関(CRA)へ上訴でき、これが最終判断になる。
係争とはルールに従いどちらが勝ったか負けたか、しっかりとしたルールの遵守がなされていたか否か、関係者にとり公正・公平な判断かを調査し、判断することになり、極めて特殊な係争だ。
事実認定もゲームのルールや慣行等が絡むため、規制当局が関与し、公平な判断をするということが諸外国の慣行であるともいえる。

一方我が国のIR整備法では、苦情の処理に関する記録の作成・保持、苦情の適切かつ迅速な処理を図るために必要な措置を講じることを事業者の義務(第百十一条、1項)とし、このために従業員の教育訓練の実施、行為準則の作成、当該業務の統括管理者・監査人の選定等(同条第2項)を要求している。
この詳細細則は、規則案第百十三条に規定されているが、苦情の原因を究明すること、カジノ業務又はカジノ行為区画内関連業務に関し、改善が必要な場合所要の措置を講じること、苦情受付の窓口を設置すること(同1項)等を規定している。
何のことはない。
ここでいっている苦情とは、カジノ業者の一般的な業務やカジノ行為区画内の様々な業務に係るサービスのレベルとか過不足に係る一般的な苦情であって、顧客と胴元とのゲーミング係争(Patron Gaming Dispute)ではないということだ。
IR整備法の中にはカジノ行為そのものに係る顧客との係争を誰が、どう処理すべきかという規定はない。
本来規則上は第三款のカジノ行為業務の一つの細則として、顧客と勝ち負けの判断につき係争が生じた場合の細則を設けるべきなのだが、法第百一条の規定は曖昧で何が対象となりうるか定かではない。
そもそもIR整備法に明示的な形で顧客との係争等の条文がない以上、規則案で触れる必要もないということなのだろう。
勿論この裏にはややこしいことは民間事業者の責任、事の本質は民(事業者)―民間(顧客)の問題である以上、規制機関が判断の是非や責任を問われかねない問題に介入すべきではないということなのかもしれない。

諸外国の慣例とはかなり異なるこのアプローチが市場に受け入れられるか否か、またこの仕組みが機能しうるかどうかは解らない。
但し、あらゆる国のカジノ施設において顧客とのゲーム係争(Patron Gaming Dispute)は極めて日常的に起きてしまう。
カジノ事業者レベルでこの現場の顧客との問題をうまく解決できるか否かは必ずしもその能力や経験だけの問題ではない。
現場レベルで解決できればベストだろうが、係争の対象となる金額が高額であったり、対象者がVIP顧客だったりすると、問題がこじれることがある。
訴訟に至れば時間と金もかかる。
かつ我が国の裁判官にカジノのルールや慣行を熟知する専門性があるとも思えない。
かかる係争は放置せず、できる限り現場に近い所で最終解決を目指すことが本来あるべき基本なのだが・・・

(美原 融)

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