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2021-05-03

86.カジノ管理委員会規則案:⑥入退場管理の在り方(規則案第51条)

カジノ場の入退場管理とは、入場者の本人確認をし、欠格者でないことを確認すること、好ましくない主体を入場時点で特定し、排除すること、対象者が入場回数制限にひっかかっていないことをカジノ管理委員会に電子的に問合せ、確認を取り付けること、入場料を徴収し、時間管理をすること、退場時も同様に本人確認、時間制限管理をすること、関連する情報記録を取ること等結構複雑な手順を伴う(規則案51条~55条)。
顧客が保持し、入場に際し持参し、提示するマイナンバーカード(MNC)に格納されたJPKIを利用することになるのだが、カジノ管理委員会規則案を見ても解かり難い事限りない。
論理として理解しても、実務としてどこまで可能なのか、何ができるのか、実務的にどういう手順となるかが良く理解できないのだ。
規則と関連法をよく読むと、恐らく下記手順になると想定される(もっともシステム屋ではないため、間違いがあるかもしれないことはご容赦願いたい)。

  • ✓ 本人確認(規則51条2項):
    顧客は入場に際し、マイナンバーカードを携行する必要があり、入場時点でこれを提示し、PIN番号を入力し、署名用電子証明書を電子的に送付する。
    事業者はこの電子送付を受け、この有効性を電子的に認証局(J-LIS)に送付、確認要請し、本人特定事項の確認を受ける。
  • ✓ 暴力団員情報等との情報との照合(規則51条3項):
    カジノ事業者自身が収集・整理した暴力団員情報等のNegative Listに上記入対象者が該当するか否かを電子的にチェックする。
    データーベースの収集・作成もシステムも全てこれは事業者が自らの責任で整備することが求められるようだ。
    よってこの部分につきカジノ管理委員会とのインターフェースは無い。
  • ✓ 回数確認(規則51条3項、52条):
    上記手順に基づきカジノ事業者が署名用電子証明書を受けている場合、カジノ事業者は入場等回数制限対象者となるか否かを確認するために、入退場時点毎に今度はマイナンバーカードに記録された利用者証明用電子証明書の送信を受ける必要がある(実質的には上記と連続的な行為となるが、このために顧客は上記とは別のPIN番号を入力する必要がある)。
    かつこの証明書が有効であることを認証局(J-LIS)に確認要請をし、有効性を確認することが求められている。
    もっとも回数制限はカジノ管理委員会のシステムで管理しているため事業者はこれをカジノ管理委員会に電子的に送付し、委員会が入場回数を検証し、結果を電子的にカジノ事業者に送付するのだろう(回数管理はカジノ管理委員会の所掌故、事業者がカジノ管理委員会に送信し、同委員会が認証局に有効性確認をする方法もあるやに思えるが、この関係性は明らかではない)。
  • ✓ 退出:
    入場時点と同様に、マイナンバーカードに記録された利用者証明用電子証明書をカジノ管理委員会に送付することで退場を確認する。
    これら入退場記録は作成の日から3年間保持することが義務付けられている(52条8項)。

なんともはや複雑の限りだが、本人確認と回数確認という二つの手順を瞬時に実行することになり、このためにマイナンバーカードを利用し、署名用電子証明書と利用者証明用電子証明書という二つの証明書を用い、その有効性を確認した上で、本人を特定、回数も確認するということになる。
更に複雑になるのは、本人確認と共に、当該顧客が入場禁止対象者となるか否か(暴力団構成員・入場を規制されている主体等カジノ事業者が固有に保持する禁止対象者データと一致するか否か)をカジノ事業者自らが検証せざるを得ないこと、カジノ事業者自身も個別の顧客の個人情報(入退場履歴、ゲーム履歴、コンプ供与履歴等)を記録しおくことが必要かつ有用なのだが、マイナンバーカードにこれら情報を格納するわけにもいかず、顧客との間に何等かの別のインターフェース(例えば初回入場時点で顧客ロイヤリテイーカードを作成してもらい、これを利用する等)が必要になってしまう。
何処かの段階でこれが入るのだろう。
勿論施設訪問前に個人情報を得て作成しておくことがその後の手続きをかなり簡略化できる。

一方、カジノ事業者はJPKIの利用者署名検証者として、予め総務大臣に申請し、その認可を受けておくことが得策になる模様だ。
令和2年に改正されたJPKI法(電子署名等に係る地方公共団体情報システム機構の認証業務に関する法律)第38条の2、同法施行規則第64条の4によると、一定の要件を満たす場合、事務手続きが簡素化できる余地があるからだ。
予め総務大臣の認可を取得することにより、利用者証明用電子証明書の送信に関しては、PIN入力を省略し目視又は顔認証による確認に代替できる可能性があるからだ。
即ち当初は必要だが、毎回マイナンバーカードを提示する必要が無いことを示唆する。
もっとも時間のギャップがある場合、証明書の有効性を都度どう確認できるのかという問題が生じるかもしれない。
既に他産業では検討されているが、上記法改正は、例えば自宅から予めスマホで署名用電子証明書と写真を送付し、本人確認手続きを済ませておけば(さすがに初回入場時点ではその有効性確認は必要とされるかもしれないが)以後、顔認証と顧客ロイヤルテイ―カードの提示のみで退出、再入場、次回入場等が可能になることをも示唆している。
勿論規則案ではここまでは記載していないのだが、IR整備法の枠外で、JPKI法の枠組みで許容できる仕組みであるならば、当然IR整備法においても採用可能な仕組みとなりうるかもしれない。
何をどう、どこまでやるのかに関しては制度・規制上の要請と実務上の要請の両方をシステム的に解決する必要がある。
民の創意工夫を発揮すれば、技術的にできないことはない。
カジノ管理委員会が反対しなければという前提になるが・・

(美原 融)

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