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2021-04-28

85.カジノ管理委員会規則案:⑤バウチャー払い戻し機(規則第7条九項)

バウチャー払い戻し機とはVoucher payment machineとも呼ばれるが、電子式機械ゲームで遊ぶとき、支払いは現金(コイン、紙幣等)をスロットに挿入する。
払い戻し(Pay out)は現金ではなく、ボタンを押すと払い戻しバウチャーと呼ばれる金額とバーコードが印刷されたバウチャースリップがでてくる。
このバウチャーはケージにもっていけば現金交換できる。
一方カジノ場内には顧客の利便性を図る目的でバウチャー払い戻し機なる機械が存在し、この機械にバウチャーを挿入するとここでも現金化できる。
あるいは、一端時間が経過した後に異なった電子機機械ゲームにこのバウチャーを挿入すると、現金扱いされ、バウチャー記載の金額まで遊ぶことができる。
昔のスロットマシーンは機械式で、コインをためておくホッパーが内部に存在し、当たりの場合はここから現金コインがどどっとでてくる極めて刺激的、かつ騒音のする機械でもあった。
この様相はパチンコホールの喧騒と類似的である。
勿論ホッパーが空になる大当たりの場合には、上部ランプが点滅し、係員が駆け付け、その場で現金払いないしは小切手をきってくれる。
これらの仕組み今では存在せず、バウチャー発行、バウチャーを経由した払い戻しが基本となってしまった。
米国では支払いは現金ないしはクレジットカード等となるが、払い戻し(Pay Out)に現金を用いないのは、機械自体を簡素化し、システム化できること、現金(コイン)の人的なハンドリングをできる限り少なくすることにより、いかさま、不正等を防止できること、コインが落ちる騒音を避けることができること等のメリットが事業者側にあるからである。
現金を扱うトランザクションは少なければ少ない程、いかさま、不正等は起こりにくくなる。
更にバウチャーはチップと異なり、使用期限が印字されており、一定期間を経ると効果がなくなり、単なる紙切れになってしまう。
これも事業者にとっては都合がいい。
カジノ行為やカジノ関連行為がシステム化、電子化されることは、限りなく人間とのインターフェースを少なくする効果がある。
カジノ行為の健全性、安全性を担保する意味では必然の流れなのだろう。

カジノ管理委員会規則案第7条九項は、電磁的カジノ関連機器等の一つとしてこのバウチャー払戻機を定義し、バウチャーと引き換えに行う現金の交付に使用するとその用途を定義している。
電子ゲームシステム、電子テーブルゲームシステム、デイーラー捜査式電子テーブルゲームシステム及びクライアントサーバーゲームシステムに使用することのできる証票となっており、システム化された電子式ゲームにおいて払戻証票として交付されるバウチャーを現金化するための機器ということになる。
末端の遊ぶ機械やテーブルが電子化されると、テーブルにおいても物理的チップを用いず、払い戻しを要求した場合、かかるバウチャーが交付され、別途機械に挿入し、現金をもらいうけるということなのだ。
但し、これはテーブルや電子式ゲーム機とバウチャー払戻機の間で用いる単なる中継ぎの証票にすぎず、常識的には大きな金額のものとはならない。
その機能はチップと同様であることに留意すべきである。
IR整備法第104条は顧客によるカジノ場外へのチップ持ち出しを禁止し、カジノ管理委員会規則案第103条は顧客による持ち出しの監視をカジノ事業者の義務としているが、バウチャーとして現金交換可能な証票を持ち出すことには触れていない。
このバウチャーは紙であり、ポケットや財布に入れてしまえば、詳細な身体検査をしない限り、まず露見せずにいとも簡単に持ち出すことができる。
当然のことながら、カジノ場内外で第三者に対し、譲渡可能な証票になり、堂々とマネーロンダリングできるツールを提供するようなものになりかねない。
勿論ゲームで遊ぶ際に、ロイヤリテイーカードの提示を求めることができれば、このバウチャーを記名式として、特定個人と紐付けることができる。
但し、これでも意味がないのは、カードの作成と保持は必ずしも義務とはならないし、当然例外もでてきてしまう。
かつ、バウチャー交換機でいちいち本人確認等しないし、できるような仕組みになっていないはずだからである。
諸外国でかかるバウチャーやバウチャー払戻機を過敏に捉え、あまり規制の対象としていないのは、あくまでも対象が少額であること、本来の目的は顧客の利便性を向上させる仕組みであることにある。
かかる少額でマネーロンダリングを試みる者はいるわけがないと判断しているのかもしれない。
同様に顧客による少額チップの持ち出しを規制している国等は存在しない。

一方我が国の規則案別表第九、3項は顧客が挿入するバウチャーの累計額が30万円以上となる場合、機械が受け入れをやめることを規定する。
何のことはない。
これは①バウチャーの交付は本人確認の上、累計を記録せざるを得ないこと、②上限に達した場合、機械がバウチャーを受付けないようにすることを要求している。
逆に言えば少額の場合は問題視しないということでもあろうし、譲渡・持ち出しの禁止規定もなければ、規則もない?ということか。
バウチャーによる払い戻しを認めるということは、カジノ事業者と顧客を巡る金銭関連のトランザクションを新たに追加することを意味する。
この場合、どう考えてもその管理・運用に関し、新たな規則と内部ルールが必要になってしまう。
また機械やシステムもバウチャー交付事に本人確認せざるを得ないとすれば、機械だけじゃだめでシステムとして構築せざるを得ず、やたらめったら複雑になりそうだ(この場合、日本人の場合技術的には可能だが、外国人客の場合には、不可能に近い)。
尚、バウチャーを新たに!持ち出し禁止にしたところで法の執行はまずできないし、意味がない。
少額チップやバウチャーの持ち出し等は本来規制の対象にしないことが諸外国の慣例でもあり、できない以上、すべきではないのだ。
バウチャー30万円迄規制する意図はなさそうということが規則案で示された以上、チップも30万円まで持ち出しは運用上お咎め無しとしてはどうか。
これなら論理的整合性はあり、納得できる。

(美原 融)

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