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2021-03-17

73.カジノ行為:② ポーカートーナメントは認められるのか?

トーナメントとは、競技会を主催し、この枠組みの中で、参加者による競争により勝ち抜き形式により順位を決定し、ただ一人の勝者を選ぶという仕組みで、スポーツやゲーム等で行われている。
勝者がどんどん勝ち進んでいくわけだ。
やっても面白いが、見ても楽しいという両方の側面があると商業的には、一種の人集めの興行として構成できる。
最近若者のブームであるEスポーツ等もトーナメント形式をとっている。
ゲームに関しても、多様な賭博ゲーム種に関し、規制当局の個別の認可を得て、様々なトーナメントが開催されているのが諸外国の実態だ。
内、もっとも人気があるのはポーカートーナメントであり、今現在世界で最もホットなカジノゲームの一つといえるかもしれない。
様々な地域、施設毎に規模の大小はあれ、盛んに開催されているが、もっとも有名なのは毎年ラスベガスで行われるWSOP(ワールドシリーズオフポーカー)だろう。
約2ケ月間に亘り、世界中から何と5万人以上のプレーヤーが集結し、全米にTV中継されるのだから生半可ではない。
これだけの人間を長期に亘り集客する経済効果は、ホテル、飲食、様々なエンターテイメントを含めると、巨額になる。
こうなると単純カジノのイベントを遥かに超える。

このWSOPだが、制限なしのルールだと参加費(参加費というよりも当初支払う賭け金あるいは参加料)が1万㌦とべらぼうに高い。
一方、優勝すれば賞金は何と250万㌦程度に膨れ上がる。
この参加料に対し、規制当局が一定率で課税し、これを差し引き、開催費用と事業者収益を控除し、残りをプール化したものが勝者にとっての賞金になるわけだ。
参加者が多ければ多い程、勝者が手にする賞金はうなぎのぼりに膨れ上がるという仕組みである。
よって、賭け事としてはカジノの中でとはちょっと異なり、胴元とプレーヤーとの賭けではなく、プレーヤー同志での賭け事になる。
その本質はパリミュチュエル賭博と呼ばれる競馬や競輪の賭け事と類似的になるわけで規制の在り方も他のカジノゲームとは大きく異なり、開催とその条件に関しては、都度規制当局の認可を必要とすることが通例でもある。
通常のテーブルにおけるポーカーの場合は、顧客同志の賭け事にすぎず、胴元は勝者から一定率のコミッションを取り、これがGGRの一部を構成し、課税対象になるという仕組みになる。
よって胴元は固定のショバ代をとっているだけで収益上のメリットは限りなく小さい。
これをトーナメント化すると、参加料単価をかなりつり上げられると共に、多くの参加者を長期に亘り滞在させることが可能となり、集客と消費のシナジーが大きく、カジノ施設にとっても十分魅力的な興行になる。

さて、このポーカートーナメントは日本のIRカジノで実現できるのかということは、IR推進会議でも議論の対象となった。
ポーカーは顧客同志が賭けあうということは不正や不法行為の温床になりかねないから原則禁止という案が事務局から提示されたからである。
結局これは、規制の対象ではあるが、公正、安全に実践され、人気のあるポーカートーナメントを禁止するわけにもいくまいということになった。
報告書は、カジノ行為の範囲(種類及び方法)につき、「事業者がその公正な実施を確保することができる行為 ・カジノ施設内でのみ実施される行為 ・偶然の勝負に関し参加者が賭けを行う賭博に該当する行為に限定するとともに、その具体的な種類及び方法は、カジノ事業の健全な運営に対する国民の信頼や理解を確保する観点から、カジノ管理委員会が社会通念上妥当と認めたものを定めることとすべき」とされた。
IR整備法はこれを踏まえ、第2条7項において「カジノ行為とは・・カジノ事業者と顧客との間又は顧客相互間で・・偶然の事情により金銭の得喪を争う行為・・社会通念上相当と認められるものとしてその種類及び方法をカジノ管理委員会規則で定めるものをいう」としている。
よって制度的には、認められうる枠組みは一応成立している。
もっとも単純でないのは、どうこれを具体的に措置できるのかという実務的な課題が存在し、これが議論されたわけではないことにある。

では、どんな問題があるのか?

  • 胴元対顧客ではない、顧客同志のゲームのルールと規制の在り方、賞金の在り方、納付金の在り方等をどう決めるかは、例外的な興行となるため、方針をカジノ管理委員会の規則で定めつつ、個別の開催毎に認可を要求される可能性が高い。
    カジノ管理委員会が認めさえすればなんでも可能になると単純に考えている識者もいるのだが、これはとんでもない誤解になる。
    なんでもありはない。
    特殊なゲームとなるため、開催毎に申請・認可の対象になるはずだ。
  • 主催者は一定の参加料を顧客から徴収するが、これは賭け金ではないがこれを賭け金とみなし、法定の納付金を徴収する。
    残額から主催者経費・利益を差し引き、この残りが勝者にとっての勝ち金になるが、法律上の定義を逸脱しかねない側面があるため、この点をどう整理し、何を何処まで規制の対象にするかは実務上の課題になる。
  • 主催者はカジノ免許を受けたカジノ事業者以外はありえない。
    第三者がこれを担うことは不可能で、誰もができるわけではない事を理解する必要がある。
    既に市場には金を賭けない、商品もないポーカートーナメントを主催する民間団体が存在するのだが、残念ながら彼らを賭博事業者として認知する可能性はないし、委託行為もありえない(この業は誰もが自由に参加できる業ではないからである)。

ポーカートーナメントは認知される制度的な枠組みは存在するが、どう詳細を規定できるかはこれからの議論になる。
尚、米国では面白いことに麻雀・トーナメントも存在する。
仕組みは上記と同じ、顧客同志の勝ち抜き戦となるのだが、わが国では麻雀は深く社会に取り入れられ、かつ、一時の遊興としては賭け麻雀も存在している社会的環境にあり、麻雀賭博を堂々と認知することにはハードルが高い。
賭け麻雀は合法という社会的な誤解と混乱をひきおこしかねないからである。

(美原 融)

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