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2021-06-23

101.IR:都道府県等による事業計画評価 ①実行性、実現可能性

都道府県等が提案公募(RFP)により民間事業者から提案を募るIRとは、都道府県等にとり財政支出を伴わない事業提案の競争的公募とでも言える内容になる。
勿論自由な提案ともいえず、国が定めたIR整備法・関連政令・基本方針等に準拠する必要があると共に、都道府県等が定める実施方針・RFP(募集要項)・条件規定書等にも準拠することが求められる。
この場合の事業提案とは要件内容とレベルがかなり大枠で固まっており、全てが自由な提案にはならない点に特色がある。

対象となるIR事業とは、都道府県等が特定の広さの地域・地点を対象として指定し、ここに一定の機能、役割、規模、期待されるコンテンツを具備した施設群を民の資金、民のリスクで開発し、実現・運営するものになる。
民間事業者は、必要な資金を調達し、施設の設計・建設を行い、職員を雇用、教育訓練し、当該施設を運営し、多様な目的をもった大量の顧客(観光客、ビジネス客)を集客し、多様なサービスを提供する。
理論的には民間事業者が自由に土地を取得し、都道府県等に提案することもありうるが、現実的にはこれはありえない。
都市内部/近郊で利便性の良い土地を数十ヘクタール以上確保する開発行為は単純に民間のみでは実現できにくいからである。
これは都道府県等が何処に、何を作りたいのかを構想・企画し、用地を確保し、ここに民間主体が資金とリスクを担いIR施設を実現するという考え方がもっとも合理的な構図になる事を意味する。

かかる仕組みの複雑さは、単純に良い施設を設計、建設し、魅力あるハコさえ作れば、事足りるというわけではないことにある。
施設さえ作れば顧客は自動的に集まるということにはならない。
潜在的市場顧客を把握し、しっかりとした需要予測の下に、売り上げ・利益目標をたて、費用を予測し、事業性を見極めることが前提だ。
事業性はその地域・地点によっても異なるし、交通手段の在り方やアクセスの利便性によっても大きく異なってくる。
確実に顧客を集客できるか、巨額の投融資に見合う売り上げを確実に実現することができるか、投融資コストをしっかり回収できるか等が民間事業として考慮すべき肝になる。
もっともIRの場合には、単純な観光施設とはいえないキラーコンテンツがある。
いうまでもなく、カジノの存在であり、他の産業と比較し、極めて高い事業性を想定しやすいという背景がある。
この場合、カジノがもたらす収益さえあれば、他の中核事業は赤字基調でもなんとかなるという誤解を生み、冷徹な評価・判断が消えうせ、事業性に関し、楽観的なバイアスがかかる可能性が高い。
もっとも、一国の制度・規制の実態や、市場環境次第では、大きく事業性は異なるのだが、比較判断できる情報が無い場合には、どうしても他国における楽観的な数値が前提になる傾向がある。
事業者側が甘い想定をする場合、これを招聘する都道府県等にしてみれば、リスク・費用は全て民間事業者が取る以上、事業計画はその内容、規模も、魅力的であるにこしたことはないし、施設自体の規模、内容もチャレンジングな内容であってもおかしくはない。
結局事業性の判断は基本的には民間事業者であり、都道府県等があまり意見し、関与する余地はないということになる。
こうなると都道府県等の評価はどうしても甘くなってしまう。
施設の設計の奇抜さ、ユニークさや一見した面白さ、事業者提案の積極度や意欲等が積極的な評価の対象になりやすい。
この場合の最大のリスクとは、果たして提案通りに施設が整備され、運営されるのか、IR自体が本当に実現できるのかという点に尽きる。
巨額の資金を調達できる能力や資質・様々な事業リスクを管理し、リスクの発生を抑止できる能力、顧客を呼び込む斬新なコンテンツを常に提供し、実際に顧客を集客し、消費を促す仕組みを継続的に提供できる経験・能力・資質等がないと如何なる提案も実現することは難しくなる。

もっとも実行可能性・実現性等を評価判断基準にすることは極度に難しい。
客観的な判断基準になりにくいからである。
事実、これまで公表された都道府県等の評価判断基準(案)は、実行可能性・実現性を明確な判断基準項目としていない。
但し、これに繋がりうる項目はある。
例えば

  • 資金計画、資金調達の確実性:
    7~8千億円に達しうる巨額の投資事業を全額出資金で賄うことができる民間企業は存在しない。
    相当の資本金支出(30%~50%)を前提としながらも、残額は金融機関等からの借り入れが前提になる。
    当該企業は巨額の出資金を本当に拠出できるのか否か、その証拠は?また融資金融機関は融資の確約を事業者に提示し、これが提案書に添付されているか否か等がポイントであろうが、応札段階では融資金融機関はせいぜい条件付きの意向表明・タームシート程度しか提示できず、資金調達の確約はここにはない。
  • 提案者の資力・財政力・能力・実績:
    類似的な規模の投資事業を実施し、運営している実績・経験等の有無、当該企業の資力・財政力等も一つの指標になる。
    もし失敗した場合、本業が傾きかねない規模の投資事業である場合、余程の財政的余裕があったり、資金調達能力があったりする企業でなければ、まず事業をうまく遂行できるわけがない。

等になる。

但し、極めて曖昧な評価項目でもあり、評価点も高いとはいえない。
かなり魅力的な施設提案・事業提案であっても、もしそれを実現できる資金や能力が無い場合、提案の評価点は大きく削減すべきだ。
もし大きな減点がなされない評価の仕組みであるとすれば、魅力的な提案も絵にかいた餅にすぎなくなる。
これを高得点で評価し、採択したとすれば、実現できない提案を採択することになりかねない。
国もかかる提案を正確に評価できるかどうかには懸念が残る。
甘い認定評価が政治的になされる可能性はゼロではないからである。

(美原 融)

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