National Council on Gaming Legislation
コラム

2021-07-19

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107.IR:10条問題 ③背景

10条問題を外国の報道機関、あるいは一部外資投資家は、あまりにも短いライセンス期間であり、巨額の投資をして、この期間内に投資を回収することは不可能という強い意見を表明した。
区域認定とカジノ免許という二つの行政処分の内容と性格を区別せずに単純にこれを混同し、免許(ライセンス)と呼称したことになるが、確かに外国人からすれば解かり難い制度であることは間違いない。
米国を始め諸外国ではカジノをどう認めるかの制度であって、カジノ・ライセンス外に事業行為の許可に絡みうる別の制度があることはまずない。
勿論諸外国でも、カジノ・ライセンス取得に係る様々な付帯条件がつき、免許取得そのもののハードルは高く設定されることがある。
日本の難しさは、上位概念として全く異なる区域認定制度があり、その下にカジノ免許、実施協定という三つの制度的枠組みが存在し、これらが密接に絡んでいることにある。

投資家や融資金融機関が問題としたのは、この制度的仕組みが、巨額の投融資を実行するに足る安定的な仕組みといえるか否か、この許認可の枠組みの中で確実に投融資コストの回収ができるのか否かという根源的な問いかけになる。
安定的、継続的な事業の実践を担うことは事業者にとっての基本でもあるが、制度的な仕組みにこれを覆しかねない不安定な要素がある場合、リスクが大きいと判断するわけである。
制度的事由は、事業者にとり管理できにくいリスク要素になり、リスク発生の蓋然性を減少する手段も限られることが通例だ。
この問題には一つではなく複数の側面がある。

  • ① 区域認定有効期間の短さ(当初10年、以後5年毎更新):
    カジノ免許を短いピッチで不断に検証していくことは理に適っている。
    一方区域認定に際し、IR区域の要件を定義し、有効期限を短く設定することが理に適うかということが問題になる。
    要件充足のモニターや是正措置等は別途規定がある以上、更新手続きを設けること自体が過剰な規制の仕組みになっている。
    認定取り消しは当然規定としてあるべきだが、更新は不要で、これが無くても全体の仕組みが大きく変わることはない。
  • ② 区域認定があり、初めてカジノ免許が存在できるという構図:
    区域認定は上位概念で、その失効はカジノ免許失効をもたらすことになる。
    カジノ免許の有効性も継続性も区域認定があって初めて意味を持つという関係にある(区域認定が崩れれば、免許は失効し、事業が成り立たない)。
    区域認定とカジノ免許が全く別個に存在していれば、問題は起こりえない。
    区域認定があり、初めてカジノ免許の存在と有効性が認められる仕組みは、区域認定という行政行為がある程度安定していなければ成立しにくい仕組みになるといえる。
  • ③ 区域認定更新に際しての地方議会同意取得要件:
    区域認定更新は、期限前に更新申請が必要だが、地方議会の議決を得ることが更新申請の要件になる。
    短いピッチで区域認定更新申請が要求されるが、その際、地域社会の合意形成が要件とされ、都度、関連する地方議会の議決を取得する必要がある。
    中長期的には地方議会の構成員は変動するため、将来もし反対派が議会の過半を占めるようになれば、更新申請同意を得られなくなる可能性が高い。
    否決された場合には、更新申請ができず、有効期限が切れれば、カジノ免許は失効してしまう。

上記の内、①、②は国に係る問題だが、③は地方議会の問題になる。
この内、どれか一つでも変えることができれば問題は解決する。
例えば、モニタリングと監視をしっかり実践することにより区域認定更新手続き自体を無くす、あるいは認定有効期間を長く設定する等の考え方がとれる。
あるいは区域認定とカジノ免許のリンケージを外し、事業者に瑕疵が無い場合、認定失効が即カジノ免許失効をもたらさないようにすることもできよう。
または区域認定当初の申請時には地方議会の同意取得は必要だが、更新に際しては同意取得は不要とする等だ。
勿論これでは現行法を変えざるを得なくなってしまう。

②は法律の根幹故、ハードルは高い。
一方①,③はその他の規定がしっかり機能している限り、固執すべき規定とも思えない。
かつ国の立場は、安定的・継続的・着実な事業の実施を期すことでもあり、違法行為や都道府県等の反対等余程の事情が無い限り、更新という行為を通じて、事業の継続に危殆を及ぼす行動をすることは通常考えられにくい。
確かに国は区域認定やカジノ免許の失効、剥奪に関する権限を保持しているとはいえ、単純な形でこれが発動されないようになっているというのが行政の仕組みでもあるのだ。
一方③に関しては、都道府県等の現場の事情が全体を崩すトリガーになりかねないことを意味し、かつ起こる蓋然性は①,②に比較し、遥かに高いと想定されている。
これは都道府県等地方議会が更新申請に際し、拒否権を保持している構図を意味し、例えば地方議会で与野党が議席で拮抗する状況にあり、次回の選挙の結果次第で、与野党の議席が逆転するとした場合、確かに起こりうるリスクかもしれない。
IR整備法国会審議に際し、これを明確に指摘し、「将来脅しをかけられる仕組みだな」という捨て台詞を発言した野党議員がいた位だ。

事の本質を我が国におけるIRを主催する地方公共団体のリスクと捉える場合、上記の10条問題だけではないリスクも存在する。
推進を担う都道府県等の首長が選挙で敗退し、反対派の首長となった場合、限りなく類似的な事象が生じるリスクはある。
認定申請の辞退や、住民反対運動を煽ったり、行政自身が嫌がらせを実行したりするなど、更新拒否等は首長の権限を駆使すればできないことはない(自治体との契約等は無視し、首長主導の法的なハラスメントにより、契約解除へと事業者を追い込んだPFI事例が過去に存在する)。
都道府県等も含め、地域社会の合意形成をどうやって実現し、これをどう維持できるかがIRの肝でもあるのだろう。
10条問題だけではなく、政治的リスクは日本にもある。
諸外国にあるのと同様に。

(美原 融)

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