National Council on Gaming Legislation
コラム

2021-07-19

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108.IR:10条問題 ④シクエンス1)

今や10条問題と日本語でいっただけで、外国の投資家もその日本語の意味を理解するに至っている。
日本的な制度の将来に亘る不安定さ、不確実性を示唆する象徴的な問題としてとらえているわけで、会社をかけて巨額の投融資を実行し、投資コストも回収できない段階で案件そのものを潰してしまうような政治的衝動を可能にする条項が制度の中に入っている。
果たしてかかる制度的環境下で、長期の事業を前提とした巨額投融資等できるのかという懸念、主張になる。
解決策はないことはないのだが、確かに制度の中にコントロールでき にくい大きな不安定要素(Uncertainty)が存在するという指摘は適切であろう。
都道府県等の議会による更新申請同意拒否を10条問題の本質として捉え、これがどう生じるのかを考えてみよう。
どういうタイミングで、如何にかかる事象が生じるかによってその対応や帰結も変わってくるからである。

常識的に考えた場合、ある日突然立法府や行政府が意見を変えることなどありえない。
選挙が行われるかなり前の時点から、地域住民を交えた議論が生じているはずで、IRカジノ是非が選挙上の争点になり、民意の結果として賛成派が負ける状態になるかもしれないということだ。
この前提としては少なくとも選挙公示前に問題が露見し、市民の注目を浴び、選挙の争点となってていることが必要だろう。
かつ、例え選挙で反対派の首長が当選したり、選挙の結果として反対派議員が多数派を構成したりしても、区域認定の更新時期(当初の認定から10年後、以後5年おき)にならない限り、政治的にはおそらく何もできない。
実施協定により事業者を律する規範は存在し、行政府事情により一方的に実施協定を破棄するわけにもいかないし、区域認定を都道府県等が返上する場合には、それなりの合意形成手順と主務官庁に対する申請も必要になるからだ。
地方議会としても、IRのPerformanceを評価し、意見することはできても、既存の国による行政処分の枠組み(区域認定)に対し、何かできるわけでもない。
ということは、問題が認知され、その問題が、最終的に更新申請拒否に至るまでにはかなりの手順とリードタイムを必要とするということになる。
この期間に対応の在り方を考えたり、協議を開始したりする等して、リスクを縮減し、解決の方向性を考え、冷静に対処方法を熟慮することが可能になる。

実際にどの様な展開で問題が生じるのかを考えてみることにより、より現実的に上記問題の本質を把握できる。

  1. 問題が表になる事象、あるいはそのトリガーとなる事象とは、①住民による反対運動が激化し、民意がIR反対に傾いていること、②選挙を睨んで議会に対するIR廃止請願や賛成派市長リコールの動きが生じ、これが活性化していること、③あるいはこれら動きが住民の過半数の賛同を得るような状況にまで発展していること等であろう。
    ここに至る理由とは、①事業者による違法行為、あるいはカジノ場における何等かの問題行為を引き金とし、地域住民の治安が脅かされるような状況が生じ、これが反対運動に繋がる場合、②事業者には何らの瑕疵もないが、カジノやIRに係る一般的な風潮がカジノ・IRに否定的な方向に傾き、これが何等かの政治運動にリンクし、選挙の焦点になる場合等がある。
    いずれも問題に対する適切な治癒・修復ができず、IRやカジノへの住民の信頼・信用が崩壊する事象になる。
    単純にかかる事象が生じるとは、ちょっと考えられにくいが、かかる事象に至るまで様々な予兆もありうるはずで、時間をかけてかかる事象になると想定される。
  2. Rは5~6千億円から1兆円規模の投融資となる開発行為になる。
    直接間接を含め5千人~1万人の雇用、地域の中小企業等地域社会からのかなりの額の物品/サービスの購入、国・都道府県等に対する納付金入場料等の財政上の貢献等がスムーズに行われている場合、これを崩せる政治的・社会的背景が存在していることが、上記iが実現する前提になる。
    IRが期待通りの成果を発揮できず、売り上げも財政的貢献も想定に反し極めて貧弱な場合には、反対運動が生じるリスクは高まる。
    そうでない場合、即ち政治的・社会的に廃止することが逆に地域経済に否定的な影響をもたらしかねず、非現実的である場合、地方議会も行政府も、単純に区域認定更新行為を拒否する行動を取れるものではない。
  3. 実際の運営段階においては、法定協議会が組成され、利害関係者が一同に会し、IRが抱える諸問題や今後の在り方、地域社会との共生や貢献等につき、定期的に意見交換をする場が設けられる。
    行政や議会、地域社会において、何等かの否定的な動きが散見される場合、この場で議論なり、対応策が考慮されることになる。
    都道府県等による事業者の年度事業計画達成評価や、国土交通省に対する報告の中においても当然問題の提起や、解決のための方策等が記載される。
    都道府県等によっては、政治的な理由により区域認定辞退等が不可避となる場合には、別途第三者評価委員会等を設け、その是非を諮問するという手順を決めた所もある。
    かかる場合、問題が大きくなる前に、何等かの前向きな対応が合意できる可能性はゼロではあるまい。

まともなロジックが効くがどうかわからないのが政治の世界でもある。
強い世論やマスコミの感情的な論調が政治を動かす場合、単純なロジックのみでは政治を説得できない場合もありうる。
最終的には地域住民の選択となるのだが、やはりIRが地域社会にしっかりと根付き、雇用、購入、納税等様々な側面で地域社会に貢献しているかが問われることになる。
この信認や信頼を得られていないとすれば、政治的にIRの立ち位置は脆弱になることを理解すべきであろう。

(美原 融)

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