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2021-10-04

126.都道府県等の区域整備計画案:どう評価されるのか?

都道府県等による区域整備計画は上限3つが認定されることが法定されている。
一方、事業者を選定し、区域整備計画申請を意図して、周到な準備をしている都道府県等は当面3つのみだ。
4つあれば競合状態になってしまい、どこかが落選することになるのだが、横浜市が断念し、3つしかない場合、競争は実質的に無くなってしまっている。
今更、第三の都道府県等が構想・企画し、事業者を公募にて選定し、区域整備計画を準備できることは時間的に不可能で、現時点で残っている都道府県等のみにチャンスが残っていると考えることが合理的だ。
また、都道府県等の提案を比較し、優劣を決めるということではなく、この場合、あくまでも絶対評価で、提案された区域整備計画案が法令の基準を満たしているか否か、提案がしっかりと実現できるか否かのみが審査・評価のポイントになる。
申請は2021年10月1日から2022年4月28日迄になるが、慌てて申請をする都道府県等いるわけがない。
慌てて準備し、申請するよりも、じっくり時間をかけ、選定した事業者と区域整備計画案の中身を詰めた方がより良い評価を得られるに違い無いからだ。
また、区域整備計画申請に際しては、都道府県公安委員会、立地市町村、都道府県等議会等との協議・合意を得る必要がある以上、これにもかなり時間が取られることが想定され、残った都道府県等は来年2-3月までにこれら手順を踏み、2021年4月の期限直前に区域整備計画を国土交通大臣に提出することが合理的な行動になる。

では、この三つの都道府県等は確実に区域整備計画を提出できるのであろうか?提案提出段階での事業者提案はあくまでもコンセプト案に近く、必ずしも実行可能な実施事業提案を提出しているわけではないと想定されている。
選定された事業者がパースの詳細や事業の内容を情報公開しないのは、恐らく将来変わる可能性があると判断しているからなのだろう。
詳細な収支計画や資金調達計画もこれから詰めるという程度と想定される。
よって、区域整備計画とはこの事業者提案を今後詳細化し、補強、ブラッシュアップされるものと考えた方がよい。
都道府県等と事業者との間で協働で作成するこの区域整備計画の内容につき、合意できない場合、事業者が資金調達計画も含め、しっかりとした実行性のある計画案を策定できない場合等、何等かの事情により都道府県等が区域整備計画案を期日までに国土交通大臣に申請できない場合には、その時点で当該自治体は脱落することになってしまう。
この可能性はゼロではない。
但し、投資リスクや案件実現リスクを担うのは都道府県等ではなく、民間事業者だ。
都道府県等の立場とは、提案を確実に実行できる履行保証を財務力のある信頼於ける主体(商業銀行ないしは事業者の親会社等)から取得できていれば、関連リスクを保証する主体のリスクとして転化できる。
勿論これは事業者を動機づける誘因でしかすぎず、内容をしっかり審査・評価することが本来の筋だ。
これが無い場合、市場分析、収入予想、事業性、実行性の評価等は極めて甘くなる。
しかも既に事業者選定評価委員会は解散しており、行政府のみでこれら評価をせざるを得なくなる。
勿論コンサルタントも関与するのだろうが、既に選定された事業者を評価する場合、果たしてコンサルタントは中立的かつ厳正なアドバイスができるか否か、ここにバイアスがかかるリスクがあるのではないかという点に関しては不明だ。
余程の事情が無い限り、顧客の意図に反し、事業者提案は実効性が無いと評価し、断言できるものではないからである。
この場合、都道府県等は計画が実現できるか否かの評価が甘い儘、国土交通省に区域整備計画を出すことになってしまう。
こうなると少なくとも申請以前に脱落する都道府県等が生じる可能性は極めて低いことになる。
もっとも、都道府県等は申請前に区域整備計画を議会に諮り、同意を得る必要があり、この段階でその情報は一部開示されるか、外部に漏れるかもしれない。
しっかりとした計画でない場合、この段階で問題になるか、後刻説明責任を問われるリスクはある。
 
もしかかる内容の区域整備計画が国土交通省に申請された場合、どうなるのであろうか?区域認定の審査に際し、足切り基準となるのは中核施設の政令要件のみで、全ての都道府県等はこの条件は既に外見的に満たしている(もっとも、本当に集客できるのか、市場性があるのか等は全く別の話になる。
しっかりとした提案となる必要十分条件ではないわけだ)。
評価基準の概要はあるが、項目毎の採点手法や採点の重みづけに関する情報は一切開示されていない。
評価項目中、案件の実行性、実効性、実現可能性を評価する項目は見当たらない。
企業の財務的健全性、信頼性等は評価するが、確実に資金調達がなされ、整備を達成し、しっかりとした運営が成されるのか否かは間接的にしか評価しないわけである。
この場合、外形的要件が満たされる限り、国の審査委員会は都道府県等の提案を欠格にすることはかなり難しくなることを示唆している。
全ての項目に点数をつけ、一定足切り基準を設ければ、極めて公平、公正かつ透明性がある考え方となるが、審査条項と審査の概要は一切開示しないという方針の様であり、こうなると欠格等存在せず、外見的要件を満たしていれば、認定してしまうことになるのかもしれない。
但し、全く情報公開もなく、全て官僚組織内でこれを仕切ることになれば、この裏で政治的思惑が判断を左右するというおかしな状況が起こりうる可能性もゼロではない。
行政手続法に基づき、より詳細な審査判断基準を予め開示し、都道府県等に対し明確に認定基準の詳細を明らかにすべきだ。
曖昧で透明性の無い基準は恣意的な裁量をもたらすリスクを孕んでいる。
立法府や行政府の裁量や忖度が区域認定に絡むべきではない。
IRは民設民営事業であり、その認定行為は公共工事の個所付けではない。
政治や行政府が裏で区域を決めてしまう等一切あってはならないのだ。

(美原 融)

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